2007年09月23日

「でっちあげ」 − 福岡「殺人教師」事件の真相

こういう事件があったことは覚えていましたが、詳細はこの本で知りました。
テレビで報道されていた当時、いまどき外国人を差別するような発言を、おおっぴらにする人がいるのか?と不思議に思ったのを覚えています。

この事件が加熱されていったのは、やはりメディアの責任が大きい。
子供への虐待や不謹慎な教師に対する社会の熱が高まっていたという背景があったにしろ、記者って、そんなにウラもとらずにホイホイ記事にしてしまうのか?とびっくりしました。
記事は「商品」でもあるでしょうけれど、質をもっと問われても良い気がします。

それに、教師の立場や、教育委員会の方向、親の行動、どれもおかしい。
私は子供もいないし教育現場のことはわかりませんが、子供を持つのが怖いと言う気持ちは、ここ10数年、かわりません。

でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相
でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相福田 ますみ

おすすめ平均
stars未詳
starsADDのお子さんとその保護者は直ちに浅川夫妻を訴えるべきである
stars報道が正しいとはかぎりません
starsメディア被害が、何故繰り返されるのか?
stars発達障害

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2007年09月22日

「たった一人の30年戦争」

終戦を信じず、30年もルバング島にひそんで生還した、小野田元少尉の自伝です。

最初にガツンと来たのは、「緊張感」でした。
本書のはじめの方で、小野田さんを"発見"した鈴木青年との遭遇シーンが語られています。
あっさりと書かれている事実のひとつひとつに、底知れない緊張感が感じられて、気付いたら涙が出ていました。
何かひとつ、服装であれ態度であれ、違っていたら、鈴木さんは殺されていた。
鈴木さんがソックスにサンダル履きだったことを神に祈りたいような気持ちです。

浮かび上がってくるのは、戦後30年を経た日本人と、"まだ戦争中である"小野田さんとの感覚の落差です。
終戦直後の虚脱状態や、昨日まで白だと言われたていたことが今日から黒に変るような、精神的な混乱、軍国主義アレルギーを内包しつつ、経済的な復興へ突っ走った日本があって、そんな国から来た青年と遭遇し、小野田さんは「正体を計りかねる」。

30年は長い。
切羽詰って前線は混乱し、玉砕を繰り返していた太平洋戦争当時の感覚、それが小野田さんが真実として知っている現実だったのだろうと思います。

そこをもとに、山中に潜んでいても感じられる時代の変化、時折手に入る少しの情報、などを分析し組み立てられた、米国の傀儡政権に牛耳られていると思われる祖国の状況。
何度も本書の中で語られる、敗戦を信じなかった理由は非常に興味深かった。

もうひとつ非常に面白かったのは、ジャングル生活の中で小野田さんが"発見"した"人間学"。
食べたものと体の調子の連関から、自分と3人の仲間を、草食系、肉食系に分類したり、牛肉をお腹一杯食べると、歩くと息がつまり頭がボーっとして木にも登れない、など興味がつきません。

小野田さんには、幸せな時間をなるべく多く過ごしていただきたいと、こころから思います。
そして、祖国のために命を懸け、散っていった人々が現代の日本を見たら、どう思うのだろうなと、ベタだけと考えずにおれません。

たった一人の30年戦争
たった一人の30年戦争小野田 寛郎

おすすめ平均
stars与えられた仕事に命を
stars壮絶!
stars不撓不屈の人
stars自分に子供ができたら、、、
stars真の日本人小野田さん。

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posted by 八朔 | Comment(0) | TrackBack(1) | 自伝・評伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月21日

「病める狐」

久々にミネット・ウォルターズを読みました。
すると未読の作品が気になって、3作品続けて読んでしまいました。
ミネット・ウォルターズ、くせになるなぁ。
ミステリ中毒症としては、欠かせない作家です。

病める狐 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 9-7)
病める狐 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 9-7)成川 裕子

おすすめ平均
stars女性がメインではないような。
stars安定した読み応えなれど

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冒頭、狐狩りをめぐる論争が出てきます。
賛成派、反対派それぞれに言い分はあるけれど、それを記事にするのは"アン・カトレル"。第一作で登場したあの人ですよね。ちょっとにやり、としてしまいました。

好みから言えば、フォックスの歴史をもう少し書いて欲しかったかな。英国の田舎の旧家とその過去が謎の核心なんですが、そのまわりにうごめく村人や流れ者が絡んで、ぐいぐい引き込まれました。

昏(くら)い部屋 (創元推理文庫)
昏(くら)い部屋 (創元推理文庫)成川 裕子

おすすめ平均
stars実験的で、きわめて現代的な傑作
stars真実は・・・どこに?

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目覚めたら病室にいて、事故にあったと知らされる。そして、事故前後の記憶がない・・・。
と、こんなこんなありがちに思える設定にしておきながら、こんなに面白いなんて。昏睡から目覚めたヒロインが感じる恐怖が、なんとも緊張感をたかめます。
頭の良い、嘘もつける、しかし心を開くのが苦手な彼女が何を思い出すのか、ほんとに忘れているのか、この辺の筆さばきはさすがだと思います。

鉄の枷 (創元推理文庫)
鉄の枷 (創元推理文庫)Minette Walters 成川 裕子

おすすめ平均
stars新古典とでもいうべきウォルターズ・ワールド
starsミステリーの枠を超えた素晴らしさ
stars結局マチルダはどこにもいない
stars特異な舞台設定
stars英国風の重厚と軽妙に彩られた家庭小説の傑作

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CWAゴールドダガー賞受賞作。
これは非常に印象深い作品でした。
イギリスらしい抑圧の時代の影とシェイクスピア。重厚さはあるものの重苦しさはなく、ページをめくる手を止められないミステリでした。
被害者の老婦人から遺産をたくされるセアラと、その夫である画家のジャックとの関係も読ませます。人は人の中の何を見ているのか、事件とも絡み合ってとても効果的に書かれています。

著者は女性の生き方を描く人ですが、そのうちミステリじゃないものも出てくるんだろうか?と思わずにいられません。
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