2008年01月24日

「進化しすぎた脳」

いや〜、これは面白かった!
サブタイトルに「中高生と語る大脳生理学の最前線」とあるとおり、学生を対象に講義した内容が本になったものです。

こんなに深い内容を、平明な言葉を用いて、わかりやすく、しかも相手を飽きさせることなく語ることができるなんて、著者のその方面での能力も素晴らしい。

一番印象的だったのは、脳は身体に支配されている面がある、ということ。
身体が変ると脳も変る・・・。
脳にとって、身体は環境とじかに接しているものだから、そこからの入力によって、脳もフレキシブルに変化しているんですね。
著者は自分の「予感」として、将来技術や研究が進んで、心をもつAIができたとしても、その心は人間の理解できないものになるんじゃないか、と言っていたのがインパクトありました。

意識と無意識、そして心、意志など、哲学的な問題も関わってきて、とても刺激的な一冊でした。
これはおすすめです!

進化しすぎた脳 (ブル-バックス)
進化しすぎた脳 (ブル-バックス)池谷 裕二

おすすめ平均
starsライヴ感がありつつ読みやすい。
stars読んでおかなければならない本がある。
stars“伝えたい・判らせたい”という思いと情熱が伝わる本
stars驚きの連続!!
starsそうか、ヒトはもともと正確に覚えない脳になってる!

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タグ:池谷裕二
posted by 八朔 | Comment(0) | TrackBack(0) | 身体・健康など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月20日

「LABYRINTH」

これ、Amazonでは厳しい書評が多いんですけど、私はけっこう楽しめました。
何が面白かったかと言うと、12世紀のアルビジョア十字軍に関する話がベースになっているところ。
そこに、聖杯伝説を絡めて小説に仕上げてあるのです。

ローマ時代、キリスト教は政治を取り込んで爆発的に大きくなるけど、一神教の性ゆえか、同じキリスト教でも解釈の違う宗派を異端として迫害してきた歴史がありますよね。
もちろん、歴史の方を詳しく知りたい場合は、ちゃんとした本をあたるべきでしょうけど、地理的な状況やアルビジョア十字軍の簡単な成り立ちのようなことはわかりますし、小説だけに臨場感があります。

本書の中で語られている、"聖杯"の存在意義に、私は共感できました。それがこの本の核で、そこを目指して話がすすんでいくので、ネタばらしはしませんけど(^^;)。
ただし、ミステリのネタとしてどう感じるかは、それぞれかな、とも思います。
南フランスの歴史に興味がなくて、純粋にミステリーを読みたいと思っている場合には、この本は不向きかもしれません。

ところで、本書の英語は特に難しくはありませんでした。
ただ、舞台が南フランスなので、地名、人名は読みにくい。
それに、南フランスはオクシタン文化圏であることから、オック語が少し出てきます。と言ってもストーリーには影響なく、場の雰囲気をかもし出していて、良い感じです。

LabyrinthLabyrinth
Kate Mosse

Berkley Pub Group 2007-02-06
売り上げランキング : 16240
おすすめ平均

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タグ:洋書

「チーム・バチスタの栄光」

このミス大賞で、黄色い表紙・・・というのが、どうもハズしそうで、長いこと食わず嫌いしていました。
けれどすごい人気なので、やっぱり気になって読んでみたら、なるほど〜!

こういう話だったんですね。今までに読んだどのミステリとも違う新しい感じで、最期まで先が読めませんでした。
「手術室で起きた殺人」を説得力を持って展開できるのは、現役医師ならではなんでしょう。その上、登場人物は面白いし、語り口はうまいし、こういうの出てきたら、大賞に選ばざるを得ないんじゃない?と。

病院の内部事情が現実的で、そこにはけっこう深刻な問題をはらんでいると思うのですが、この小説は明るいです。この軽さのようなものが、万人受けする理由のひとつでしょうか。"まとも"で重い問題を含みつつも軽く明るい、というような。

それにしても、白鳥のような変った人、どうやったら想定できるんでしょう??
この人の登場で一気に話が展開していくのですが、それにしてもこの強烈なキャラクターが、最期にはなんとなく好きになってくるんだもんね。映画では阿部ちゃんがやるようですけど、文章だと顔が見えるわけじゃないですから、好きになるのに時間がかかります(笑)。

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)
チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)海堂 尊

おすすめ平均
stars恐るべし大学病院の裏事情
stars「受身型」ワトソンと「攻撃型」ホームズによる推理小説
stars白鳥さん
starsデビュー作とは思えない圧倒的な筆力
stars文庫本はなぜ上下?

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2008年01月06日

「The Overlook」

マイクル・コナリーの書評をアマゾンで見ていると、原書も英語が平明だと言う記述が多いので、読んでみました。
確かに!
ハリー・ポッター以外でも読めるものがあった(笑)。

まだ原書で読んだのはこの1冊だけですが、話の面白さにも引きずられて、あっという間の読書でした。緻密な調査や証拠が必須の警察小説で、しかも主人公は複雑な心をもてあましているような人物。それが平明な英語で書かれているとはなんだか意外。
きっと、英語が母国語でないたくさんの人たちが楽めるものが、アメリカでは必要なのでしょうね。

「The Overlook」は、ボッシュの「Homiside Special Squad」での最初の事件として幕を開けます。
殺人事件の被害者が、医療用の放射性物質に関わっていたことから、テロリストの関与が疑われ、FBIとの大掛かりな捜査体制が組まれます。
もちろん、ボッシュはFBIとも上層部ともうまくやってます(笑)。

新しいパートナーは、今後の活躍が見たいと思わせる、なかなか気になる存在でした。
面白かったのは、コネでポストを手に入れた無能な警察幹部の描かれ方。ちょっと勘違いしたタフさの表現に笑えました。

The Overlook (Harry Bosch)
The Overlook (Harry Bosch)Michael Connelly

おすすめ平均
stars批評しながら読むとまた違った意味で楽しめる
stars話の展開が単純
starsSolid and Satisfying Bosch

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「ラスト・コヨーテ」

最近ハマった、「ハリー・ボッシュ」シリーズです。
何がどう面白いと言うより、とりあえずハリーがすごくいい。
もちろん、内容も面白いから何作も続けて読んでしまったわけですが、この主人公には、なんだかちょっと惚れました♪

ハリーの何がそんなに良いのか?
たぶん、時折見せる子供のような素直さでしょうか。
この頑固で手の焼けるおやじに対して、素直さもないかも知れませんが、ま、女が男に惚れるのはそういう部分なのでしょうね(笑)。けれど、これだけのヒットシリーズですから、私だけでなく、世界の老若男女が好むということですよね。

本書は、ハリーの人格形成の一部分となる、母親殺害事件に踏み込んでいくという内容。
幼い頃に母親が殺害されたというと、ついジェイムス・エルロイを思い出してしまいます。(彼の場合は現実の話ですが)
エルロイも好きな作家の一人ですが、彼の作品のような独特の雰囲気は、マイクル・コナリーの著作にはありません。
けれども、エンターテインメントの設定としての主人公の過去はとてもうまく扱われていて、ボッシュが際立っています。
そしてクセになるんですよ。

ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)
ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)Michael Connelly 古沢 嘉通

おすすめ平均
stars湘南ダディは読みました。
starsA good one
stars33年前の“母親殺し”に挑むボッシュの行き着く先は・・・
stars確かにカウンセリングかも
stars初めてMichael Connelly 読みました

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「悪人」

読みすすみつつ、特に、"止められない"と感じてもいなかったのに、気がついたら最期まで読みきっていて、徹夜になっていました。
殺人事件の謎、というよりは、人の謎に引き込まれた感じです。

テレビや雑誌が扇情的に取り上げる、いくつもの凄惨な事件の関係者の、扇情的でない素顔が書かれているといった感じでしょうか。
と言っても、生い立ちや生活を深く追求して掘り下げているのではなく、あくまで淡々と、必要な情報のみが書かれているのです。それでも、そこから人間が立ち現れてきて、ついその人やその背景を探ってしまうような感覚でした。

どこからどうみても小説なのですが、なんだかとてもリアルで、事件ノンフィクションを読んだ後の読後感に似ています。

舞台は福岡市内と、そこから峠を越え、佐賀、長崎。
武田鉄也が使うような、メジャーで明るい"博多弁"とは微妙に違う土地の言葉、全体に漂う田舎独特のうら寂しさが、とても印象的でした。
どこと言って特徴のない中途半端な田舎の、閉塞感が特によく出ていて、日本の小説だなぁと感じました。
吉田修一、もう少し読んでみたくなりました。

悪人
悪人吉田 修一

おすすめ平均
stars良かった
stars悪人はそばにいる。
starsそんなつもりではなかった。とです。
starsすごすぎました
stars評判通りの1冊でした

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タグ:吉田修一
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