2008年11月25日

「自然農への道」

"自然農法"と"自然農"とは区別されているのですね。
"自然農"の場合は、方法論と言うよりは、生き方そのもの、という捉え方のようです。
実のところ、とっかかりの部分では、観念的なのでは?とちょっと引いていました。

けれど本書を読むと、実際に職業としての農業、自然農を選択された方々の体験が綴られていて、実践の現実がわかり、触発もされました。
有機農業に限界を感じたり、何か違うと思って自然農へ転向される方が多いのも面白いなぁと。

「耕さず、肥料、農薬を用いず、草や虫を敵としない」
というのが、自然農の基本姿勢なのだそうです。
たとえば大株の雑草がある場合でも、根は土中に残したまま、地上部だけを刈り取って地面に敷く。野菜の種(または苗)は、残った株の間に蒔く。すると、数年もするとその雑草は生えなくなり、作物と共生関係を保てる草が生えるようになってくる。

そうやって、土が耕されること無く保たれると、1年でもびっくりするほどミミズが増え、数年も経つとふかふかになってくるのだそうです。雑草があると、養分は草に取られて、土は固くて、と思いがちですが、自然の摂理は全く違ったのですね。とても興味深かったです。

自然農を実践されている方々が、試行錯誤しつつ自然と向き合い、答えを見つけていく過程で、自分の生き方を思い、大きな自然の力や生きる道のようなものを見てしまうのは、当然と言えば当然のようにも感じました。
環境破壊、食糧難や発展途上国の飢餓が問題視される中、大規模農業の方向性には疑問を感じるので、自然農や自然農法という考え方には非常に共感を覚えます。

自然農への道自然農への道
川口 由一

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2008年11月24日

「森の野鳥を楽しむ101のヒント」

野鳥に関する雑学101項目、という本です。
1項目見開き2ページで読みやすく、野鳥初心者の私には、知らないことばかりで、とても勉強になりました。
鳥の研究者をはじめ、多くの関連の方が執筆されていて、色んな角度からの情報が詰まっているのです。

例えば、卵ばかりが印象にあるウズラは、野生ではまず見られない幻の鳥になっている、とか、タカ類の巣の近くで小鳥が繁殖しているなど、えっ!と思うことがたくさん。

ひとつひとつの項目は、2ページで終わるだけに深く追求したものではないのですが、それだけに素人にはわかりやすい。
特別「野鳥」に興味がなくても、面白く読めると思います。
最後の101項目目は、「さらに勉強したい方のために」というタイトルで、参考図書がたくさん載ってます。

この本、財団法人「日本林業技術協会」編、となっています。
裏表紙を見ると、100の不思議、101のヒント、というタイトルで色んな本が出ているのがわかりました。
林業技術協会ですから、森や虫、土、里山、きのこなどなど。
本書と同じノリなら、他も読んで見たいです。

森の野鳥を楽しむ一〇一のヒント森の野鳥を楽しむ一〇一のヒント
日本林業技術協会

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タグ:野鳥

2008年11月15日

「天と地の守り人」

はぁ、とうとう終わってしまった。
上橋菜穂子の守り人シリーズ、全巻読み終わりました。
もう続きがないのかと思うと、すごく淋しい。

全編、ほんとに面白かった。
この物語自体もすごく好きですが、他の作品でも感じたように、著者の感性のようなものが非常に好きなのだと思います。

チャグムの祖国である新ヨゴ皇国は、神の血筋である帝を奉るところから、やはり過日の日本を想像してしまうけれど、その奇妙さも神聖さも余すことなく描かれているように思いました。
強国タルシュはローマを彷彿とさせるし、各国入り乱れての戦は、戦国時代の小説を読んでいるような面白さ。それぞれに、大義や欲や思惑があり、そしてそのひとつひとつに人の営みがあり、そこへナユグという異界も絡んでくる、壮大な物語でした。
これが、最初はシリーズものになる予定で書かれたものではなかったなんて、ほんとにびっくりです。

表現方法には、音楽や絵など色々あるけれど、チャグムやバルサに著者が背負わせたものが、その心から滲み出すところを読むと、言葉で表現できることの強さを感じました。バルサの強さの秘密もまた、細かな配慮で描かれています。
映画やアニメになってもすごく面白いだろうし、こういった部分をセリフにするという手もあるけれど、でも限度があると思う。子供たちにはぜひ、彼らの心の声を直に読んで感じて欲しい、人の営みとその先にあるものを考えて欲しい、などと思わずにいられませんでした。

「天と地は、こうして、ただありつづけ、うごきつづける。きっと、天ノ神のご意思とは、そういうものなのだろう。」
終章に近いあたりで、チャグムがつぶやく言葉です。
この小説の、この大きさが良いです。

天と地の守り人〈第1部〉 (偕成社ワンダーランド)天と地の守り人〈第1部〉 (偕成社ワンダーランド)
上橋 菜穂子

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2008年11月10日

「健康と食べ物 あっと驚く常識のウソ」

うーん・・・、と二通りの意味で唸ってしまう本でした。
ひとつは、タイトルどおり、常識がウソだったと思える部分、もうひとつは、本書が呈している疑問に対して、それはちょっとどうかな?と。

確かに、あっと驚く常識のウソがいっぱいです。
でも半分ぐらいは、どこかで聞いたことがありました。多分、本書が出版されてから時間が経っているからだと思います。
それでも、けっこう驚くことも多かった。ちょっと読んでみるには面白い本だと思います。

ただし、ひとつひとつについて、じっくり検証しているというよりは、あれこれシニカルにあげつらって、真摯に健康を考えるというよりは、騙されないようにしようね、みたいなノリです。
単なる雑学的な項目も多いし、反論ということもなくただ取り上げているだけという項目もあるし、その疑問は短絡的すぎるのでは?というのもけっこうあります。

びっくりなのは、その道の専門家が、実験したりデータを集めて発表したことが、こんなに片手落ちなのかということです。もちろん本書を読んでそう思っただけで、実際にどうだったのかはわかりませんが。
以前にも、論文捏造に関する本を読んでびっくりしたことがあったけど、世間に受けが良いとか、企業が喜ぶとかいう理由でなく、良い研究がきちんと世の中に出るようになって欲しい。と、偉そうですが思いました。

健康と食べ物 あっと驚く常識のウソ健康と食べ物 あっと驚く常識のウソ
畔上 司

草思社 2004-01-22
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「いのちの輝き」 − フルフォード博士が語る自然治癒力

絶賛されている方が多いので、読んでみました。
確かに、とても暖かい、良い本でした。
一流のヒーラーが書いたものには、その人の愛が漂っているのかと思えるくらい、ほっとし、安らいだ気持ちになれました。

日本は、東洋医学も西洋医学も普通に生活の中にあるから、それはラッキーなんだ、という話を聞いたことがあります。
現代では、西洋医学に全く頼らない生活は考えられないけれど、"全体"を診る東洋的な方法をベースとして知っていることは、なんてありがたいんだろうと、本書を読んだらなお思いました。

"全体"というのは、身体の全てのパーツの連関にとどまらず、宇宙的なつながりも含めての全体なのですね。
生命力というエネルギーが自分ひとりのものでなく、宇宙の全てと係わりあっている。というようなことが、言葉で書かれてはいても、心に直接届くような感覚でした。

自分を大切にすることが、生きとし生けるもの全てを大切にすることに繋がっていると言う理念は、ほんとに暖かくてやさしい。
健康とは、単に肉体的なことではないとわかってはいても、せいぜい精神面の健康しか思い浮かびませんでした。けれど、自分では気付かないところで、生き方そのものが現れていたのですね。

欲望に負ける患者の例がいくつか出てきますが、ああ、これは私だと何度も思ってしまいました。例えば、身体を労わることよりも、食欲という欲望を優先していたり、というようなことです。そんなに欲深いつもりではなくても、こんなに踊らされているじゃないかと。

現実的な生活の中では、霊性や命のエネルギーなど意識することはあまりないし、それこそ欲望やストレスに押し流されるように生きているような気がします。
本書を読んだことで、新しい視点をもらって、少し違った生活ができるような気がします。"自分を大切にする"、ということが、あちこちで言われていても、私には今までよくわからなかった。でも今回は、なんだかストンと胸におちました。

いのちの輝き―フルフォード博士が語る自然治癒力いのちの輝き―フルフォード博士が語る自然治癒力
Robert C. Fulford Gene Stone 上野 圭一

翔泳社 1997-02
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2008年11月09日

男も知っておきたい骨盤の話

大きめの文字と余白、図入りで厚さ1cmほどの新書だから、という訳でもないけど、ちょっと物足りない感じでした。
具体的に、運動や体操を紹介しているわけではなく、身体の不思議を読み解くことが主題なので仕方ないのかな。

"骨盤ダイエット"など売れてるし、女性には骨盤に興味のある人が多いだろうけど、男性はきっと他人事だと思っている。そういう人たちへ向けて、そうじゃないんだよ、男だって知っていて損はない、こんなに影響があるんだから!という本です。
(女性が読んでも意味が無いというわけではありません。身体の仕組みはほとんど同じなので)

そう思って読むと、新しい発見がたくさんあって、読みやすい本だと思います。
特に、肩甲骨と骨盤の連動については面白かった。
人が二本足で歩くようになる前は、肩甲骨は骨盤と同じ働きをしていた、というのは目からウロコでした。
「へそまがり」は、へその位置がほんとうにずれている、というのもびっくりです。

「身体をきちんとしたい」と思ってる人には一助になると思います。とにかく、インナーマッスルを鍛えなくちゃ!というのが、私の第一の感想です。

男も知っておきたい骨盤の話 (幻冬舎新書)男も知っておきたい骨盤の話 (幻冬舎新書)
寺門 琢己

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2008年11月06日

「肥前の諸街道」 − 街道をゆく 11

久々の司馬遼太郎でした。
今更ですけど、この人は文章がうまいなぁと。

歴史というのは、俯瞰してみると、ただでさえややこしいと思うのですが、それをさらっと、背景の事情やちょっとしたエピソードを交えつつ、あっさり読者にわからせてしまう。
本人はよく「鳥瞰」という言葉を使われていますが、あっちの事情、こっちの事情、その裏にある体質、体質の元はどんなところにあるのか、などなど、こんな短い文章でわかりやすく書かれているなんて、考えてみたら凄すぎます。

もちろん、そこには著者の主観も入るわけですが、その主観や憶測が面白い。もともと、歴史上の出来事や人はわからないことだらけなわけなので、そこを著者の感じる"時代の気分"で補ってもらって、読んでいる私はなんてラッキーなんだろう、などと思うのでした。要するに私は、司馬遼太郎が好きだということなんですが。

「肥前の諸街道」は、福岡県の西端から唐津、平戸、長崎と、海に面し、古来から海外とのかかわりの深い地域の旅です。
福岡から唐津へ向かう202号は、海沿いを走る景観の素晴らしい道路ですが、蒙古の船が何千も並んでいたなんてとても思い描けません。

そこから平戸、佐世保、長崎と辿って、ポルトガルがやってきた当時の面影を探します。ポルトガルが最初にやってきたことはわかっていても、現代のポルトガルのイメージと、当時の強かったポルトガルとはどうしても一致しない。残念ながら、当時のポルトガルの痕跡は、関が原の20年後にはすっかり取り壊され、長崎からは消滅してしまったそうです。
本書は、そのあたりまでの歴史の痕跡を探しつつ巡ったもので、後年の出島に閉じ込められたオランダや海援隊などには触れられていません。

いつもの須田画伯とのやりとりは、やっぱり微笑ましい。
この人の可愛らしさは尋常ではないです。その愛くるしい須田画伯の描写が好きで、いつも楽しみです。
この器用ではない二人の旅人が、時に地元の人に困惑したりしているさまがまた面白い。興味のない地域のものでも、須田画伯がどうしているか知りたくて、読みたくなります。

街道をゆく (11) (朝日文庫)街道をゆく (11) (朝日文庫)
司馬 遼太郎

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「癌が消えた」 − 驚くべき自己治癒力

一見、怪しい本のようですが、いたってまじめな本です。
医学に見放され、あとは死ぬだけという状態のガン患者が、いつのまにか回復して幸せな生活を送っている。そういう事例がたくさん出てきます。
そのひとつひとつを追い、治療方法や症状にはじまり、患者の生活、信条、性格など共通点はないか、ガンが消える方法が見つからないかと、可能性を探った本なのです。

代替医療という言葉も耳慣れてきましたが、怪しいものが多かったり、極端に宗教的だったりすると、またか、と暗い気持ちになってしまう。けれど、本書のように科学的に解明しようと、データを集めて研究している人たちがいる。

本書によると、医者をやっていると、一人ぐらいは"驚異的回復"をする患者に出会うそうです。これは奇跡などという希少さではないですよね?
もっと研究が進んで、少しでも解明されることを切に祈ります。
ガンは、私の身近でも猛威を振るいましたが、ガンさえなければ、という患者の状態を見るのは辛いものでした。
余命を宣告されたら、どう生き延びるかよりも、どう死ぬかを考えると思います。それは、来るべき死の時への備えだけれども、身体は最大の危機である死にたいして、びっくりするような治癒力を発揮することがあるのだとわかりました。
これはやはり、大きな希望だと思います。

癌が消えた―驚くべき自己治癒力 (新潮文庫)癌が消えた―驚くべき自己治癒力 (新潮文庫)
Caryle Hirshberg Marc Ian Barasch 安次嶺 佳子

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2008年11月03日

「ダック・コール」

いつだったか、ふと書店で手にとった「ダック・コール」。
なんて印象的なんだろうと唸るほどだったのに、その後、本を失くし、著者の名前も本のタイトルも、ずっと思い出せずにいました。
もう一回読みたいなぁと、何度思ったことか。

念願かなって、図書館で見つけました。
ついでに、「セント・メリーのリボン」も借りて、大満足の読書でした。

著者自身も言っている通り、たしかにハード・ボイルドなのですが、そんな言葉でくくってしまうのはもったいないような・・・。"ハード・ボイルド"という言葉が独り歩きしていて、ある種のイメージが先行してしまうような気がするのです。
突き詰めれば、どう生きるかであって、その生き方の背景にある原風景のようなもの、他者にたいする尊敬、などなどが、静かな語り口で綴られています。
この静けさがなんとも良いです。

外国や外国人を舞台にしていても、まったく違和感がないのもびっくりです。
ひとつひとつの作品の完成度が高いからでしょうか?
著者の描く矜持の前には、国や生き物の種別など超えてしまった部分があるのかも知れない、などと思いました。

著者の略歴を見てみると、なんと昭和一桁生まれ。
せいぜい団塊の世代の方かと思っていました。
戦争を体験し、戦後に思春期を送り、大人になってからは高度経済成長まっただなかだったのですね。時と共に、価値観が大きくうねって変るような中で生きてきた人だからこその、この背筋の伸びるような文章の連なりなのでしょうか?
静かで、淡々としていて、だけど堅苦しくも冷たくもなくて、何かこう、魅力的なのです。

ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)
稲見 一良

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セント・メリーのリボン (光文社文庫)セント・メリーのリボン (光文社文庫)
稲見 一良

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