2009年01月30日

「ゲド戦記」

ファンタジー、なかなか面白い、とやっとこの年になって開眼です。
そこで、ル・グインの「ゲド戦記」、外伝も含めて、まとめて全巻読んでみました。

日本語タイトルの"戦記"に惑わされて、戦いが主に描かれているのかと思っていたら、そうではないのですね。
アースシー世界という場所を通して、人の成長や生と死、自然と文明、フェミニズム、人種差別などなど、大きな問題が語られているのですね〜。

こんな風に、物語の中にうまく取り込まれていたら、自分の内面から、世界の情勢、自然の原理まで、思わず知らず目を向けることになる。子ども時代に読んで、もしピンと来なかったり、暗いな〜と思ったとしても、きっと意識のどこかに残って、後々の思索の素になっていくのでしょうね。
「影との戦い」から、それぞれに語られている内容は、現実の世界への示唆に富んでいて、どきりとさせられる箇所がいくつもありました。

登場人物は、ヒーローではあっても、ヒーロー的な大活劇を演じるのではなく、弱さや慢心に翻弄されつつ旅をして、世界の原理や生きる姿勢を学んでゆく。戦って殺して、というありがちな展開を排除して、でも面白い物語が語られていて、すっかりアースシーの住人になってしまいました。

話そのものは、移り変わっていく感じですが、著者の思想が反映された結果なのだと思うと、それはそれで面白く感じました。
印象的だったのは、自然の捉え方や死生観に、東洋的なものが無理なく出てくるところです。
ゲドや竜たちのことも気になるけれど、著者がどんな人なのか、気になってきました。

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2009年01月19日

「空へ」&「デス・ゾーン8848M」

1996年のエヴェレスト遭難を扱った本を、2冊続けて読みました。
自身も当事者であったノンフィクションライター、ジョン・クラカワー著の「空へ」と、クワカワーの著作の中で批判を浴びることになったロシア人ガイド、アナトリ・ブクレーエフの視点で綴られた「デス・ゾーン8848M」です。

最近では、誰でも登れるの?などと思ってしまいそうなエヴェレストですが、人の生きていける環境ではない高所が、どんなところなのかを初めて知りました。
人体への影響の過酷さにはびっくりです。そんなところでも、ガイドやシェルパに連れられれば、経験の浅い人でも登れるという商業登山にも、改めてびっくりです。

そして、そういう商業登山隊が遭難事故を起こしたのですね。
登山家であることと、登山のためのガイドであることは違うだろうし、商業登山を成功させるビジネスマンであることもまた、違う資質が必要だろうと思います。

育った国や育ち方が違えば、ものの考え方も違う。
登山ビジネスを成功させたいと願うなら、また違った視点も出てくる。
小さな食い違い、判断の違い、個人の思惑などなど、それらが渾然一体となって、悲惨な事故に繋がったのでしょうけれど、何ともやりきれない。

「空へ」の方は、この遭難事故の全貌を、なるべく詳らかにしようという著者の気持ちが伝わってきました。
登山を知っているライターが、たまたまこのような遭難の当事者になるというのも、恐ろしい偶然だと思いますが、プロであるだけに、情報の扱い方に対する真摯さや筆力を感じました。おかげで、登山そのものだけでなく、シェルパや商業登山の背景なども知ることができました。

一方、ブクレーエフとライターの共著である「デス・ゾーン」は、ブクレーエフの手記に近い印象です。とは言え、クラカワーの著作ではわからないことも出てくるし、一人の登山家の哲学や人となりが滲み出ていると感じました。
事故の翌年、インドネシア隊を連れてエヴェレストへ戻り、前年の犠牲者の遺品を回収したり、ささやかに埋葬するくだりは涙が出ました。

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