2009年02月22日

「天国の扉」

「償いの椅子」もそうだったけど、けっこう込み入った話で、けれども先へと進ませる牽引力のある、ある種の魅力があるんです。
この感じが好きな人にはクセになる作家なんだと思います。
けれども、もう一歩!って感じがあって、個人的には非常に惜しい、というところです。

武術の旧家に育った青年が主人公です。
この設定はとっても新鮮で、「斬る」という言葉を現代劇で発することができる人たちが登場します。立ち回りもあるし、武術の心得的なことも出てきて、そのあたりのウズウズ感も満足させてくれます。

その主人公と彼の家族、親族、主人公のガールフレンドだった女性の家との因縁、死刑廃止運動などが絡み、守るべきもの、愛するものとの絆や葛藤が描かれています。

ただ、刀が出てくるのだから当然と言えば当然なのでしょうが、血生ぐさい展開になるし、話自体、けっこう悲惨です。
ミステリとしては、早めに黒幕がわかってしまうので、読みどころは主人公の生き様ということになります。
その生き様は、潔いのかも知れないけれど、剣の達人ならばそうなのかも知れないけれど、警察へ行った方が良かったんでは・・・?と思ってしまいました。
もちろん、それじゃ話にならない訳だけど。
要するに私は、主人公が刀を振り回して、相手が死んでも仕方ない、という状態になるのが、ちょっと残念だったのでした。

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沢木 冬吾

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タグ:沢木冬吾

2009年02月10日

「ウルフ・サーガ」

狼たちの物語ですが、描かれているのは人と自然との関わり方でした。
この話には人間は出てきませんが、人間の営みが自然界へ与えた影響を、違う視点から見ているようで、背筋が寒くなりました。

自然界のバランスを、"掟"として登場させ、その"掟"にしたがって生きる狼たちと、"掟"を捨てて新しい世界を作ろうと、強大な力で他の狼たちを支配する、黒く巨大な1匹の狼。
多くの狼は力の前に平伏し、自然界の法則を無視した新しい世界へ否応なく引きずり込まれます。
けれど、力に屈服しながらも、もしかしたら、新しい世界は良い世界かも知れないという期待も、少し持っている。権力に媚を売るものもいる。流れに呑まれるものもいる。

均衡の崩れた世界で、狼たちが行き詰る姿は目を覆いたくなる情景です。
けれど、このお話は希望を持って終わります。
人がこれからどう自然と関わっていくのか、否応なしに考えさせられます。

純粋に動物を描いているわけではないのに、狼たちがとても魅力的でした。
安易に擬人化されているのではなく、狼らしく描かれていて、映像が浮かぶようでした。
一緒にじゃれあったり、眠ったりしたいと何度思ったことか。
著者はきっと、すごく狼が好きなのだと思います。
そうでなければ、単なる人間世界の投影として登場するに過ぎない、記号のような存在になってしまったのではないでしょうか。
この狼たちの魅力が、本書の大きな特徴であり力だと感じました。

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2009年02月08日

「ドラゴンライダー」

『ドラゴンライダー』です。「エラゴン」と「エルデスト」を読んで、完結してないと知った!
うーん、早く続きが読みたい。
続く「ブリジンガー」は、邦訳も英語版のペーパーバックもまだ出てないみたいですね。
ハードカバー買うのはためらわれるな〜。いえ、面白いんですが、重いし高いし・・・。

この本、著者が17歳とまだ若い上に処女作、というので、実は二の足を踏んでいました。
文芸賞っぽい作品なら、若者の感性が強みになるかも知れないけど、エンターテインメントで、ファンタジーで、となると、浅いんじゃないかとやや不安だったのです。

いやいや失礼しました。楽しく読書できました。
深い作品とはいえないかも知れませんが、逆に言えば、大人が子供向けに書いたものによくある、お説教臭さがない。そして、この長さなのに、だれることなくぐいぐい読ませる筆力は立派だと思います。そのあたりは、ハリー・ポッターを凌駕しているように感じました。

エルフやドワーフ、魔法使いなどお馴染みの種族が登場しますが、この世界の住人たちの解釈も、なかなか面白かった。
エルフは論理的で、ドワーフは信仰に重きをおく。このあたりは、科学と宗教の対立を思い出しますが、主人公のエラゴンはその中間に位置していて、自然の摂理の中で自分たちが生かされていることを感じ取っています。
魔法を使うことを通して、自然界に存在する動物や植物のエネルギーに接し、命を実感していく過程は、とてもうまく書かれていると思いました。

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