2009年09月21日

「『左利き』は天才? 利き手をめぐる脳と進化の謎」

なぜ左利きと右利きがいるのか?というのは、気になる人が多いんじゃないかと思いますが、本書を読んでも答えはわかりません。
要するに、まだ解明されていない、ということのようです。
サブタイトルに、"脳と進化の謎"とあるので、脳科学的な解答を期待してしまいますが、正直なところ、そういうワクワク感の味わえる本ではありませんでした。

本書は、左利きである著者があちこち旅をし、利き手をめぐる謎を追う、という内容です。
目次を見ると、「左利きの歴史」、「脳の仕組みと利き手」、「左利きは遺伝するのか?」等々、非常に興味深い章立てになっているのですが、エッセイ風なので、旅程などまで出てきて、ちょっと散漫な印象です。

それでも、右利きか左利きか、というよりは、極端な片手利きか両手使いに分ける方が適切だ、と言う解釈が出てきて、そこは新鮮でした。私は自分が右利きなのか左利きなのかよくわからないので、なんだかすっきりしました。

一番興味深かったのは、西洋での左利きの扱われ方です。
日本やインドでは、文化的に左利きは良くないものとされているのは知っていましたが、西洋でも忌み嫌われていたとは知りませんでした。
その辺の雑学的な部分は楽しめました。
知らなかった左利きに関する薀蓄を読むぐらいの気持ちだったら、それなりに楽しめるかも知れません。

「左利き」は天才?―利き手をめぐる脳と進化の謎「左利き」は天才?―利き手をめぐる脳と進化の謎
David Wolman

日本経済新聞社 2006-07
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2009年09月20日

「ダウンタウン・シスター」

ずーっと食わず嫌いしていたシリーズでした。
なぜか?
文庫の装丁とタイトルが、全く好みでなかったからです。
軽そうな印象の表紙、そして、レディ・ハートブレイクだの、サマータイム云々だの、絶対読みたくないと思うようなタイトル・・・。

その方が売れるのかも知れないけれど、表紙とタイトルの雰囲気を好む女性と、このシリーズの内容を好む女性とは、全くタイプが違うと思うんですが・・・。
まぁ、私個人の好みの問題かも知れないので、なんとも言えませんけども。

それはさておき、面白かったです。
シリーズ全作、いつの間にか読破していました。この濃いキャラクターのV.I.が、なんだかどんどん好きになるのです。
けっこう硬派な内容と、そこまで言うか?(そして、するか?)という主人公、脇役の面々、すっかりこの世界の住人になってしまいました。

ミステリの面白みのひとつとして、背景となる時代の風潮や社会問題をいかにうまく取り込んでいるか、という部分が私は気になるのですが、そういう意味でも満足できます。
次回作が待ち遠しいシリーズが、またひとつ増えました。

ダウンタウン・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)ダウンタウン・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)
山本 やよい

早川書房 1989-09
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「タヌキのひとり」

何度も読んでしまいました。
まず、飛び込んでくるたくさんの写真から目が離せなくなります。
甘える鹿、自慢げなタヌキ、風格漂うキツネ等々、常に動物と接しているからこそのショットがたくさんで、動物好きには写真だけでも大満足です。
ここに紹介されているのは、著者の活動のほんの一部で、また日常でもあるわけですが、日ごろ野生動物と接することのほとんどない私には、へー!や、は〜♪の連続でした。

そしてシンプルに綴られた日常の中から、野生動物と人間との共存の問題点、保護した動物を野生へ返すことの難しさなどが滲み出してきます。すごく可愛い、というのと、野生動物にまつわる苦しい状況を作り出した側に自分がいるというのとの、板ばさみのなんともいえない気分になりました。

著者は獣医で、野生動物の保護や治療に無償で取り組んでいる一方、「キタキツネ物語」の企画、動物監督をはじめ様々な動物番組の監督、著作をされているようです。
映画は観たことがありますが、企画者がどのような人なのか全然知りませんでした。
本書の文章もシンプルで良かったけれど、もっとしっかり書かれた著作もぜひ読んでみたい。この押し付けがましさの全く無い、淡々とした文章の奥にあるものを、もっと読みたい、と思うのです。

タヌキのひとり―森の獣医さんの診療所便り (とんぼの本)タヌキのひとり―森の獣医さんの診療所便り (とんぼの本)

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タグ:動物

2009年09月14日

「ローマ亡き後の地中海世界」

「ローマ人の物語」は、老後の楽しみにとっておこう、と思っていたけれど、文庫が出たらやっぱり読んでしまった。
それで淋しい思いをしていたところでした。

本書は、古代ローマ滅亡後の、キリスト教世界へ進出してきたイスラム教徒との攻防を巡る話です。
中世とひと口に言っても長いですが、やはり十字軍や異端審問、南米への殖民と布教などが思い浮かんで、暗い恐ろしい印象があります。
しかしそのキリスト教徒たちも、イスラムの海賊にこんなにも苦しめられていたのかと驚きました。時代がどんどん移り変わっていく中、1800年代になってやっと、"禁止法"が実施されるのですから、とんでもなく長い!

この長い海賊との戦いを綴ってあるため、関係する各国の事情までは詳しく語られていません。イタリアはともかく、フランスやスペイン、イスラム側についても、もう一人か二人、塩野七生がいて、それぞれに書いてくれたなら、どんなに面白いだろうと思わずにいられません。

塩野七生はどうもクセになります。
いつもながら、読みやすさ、面白さ、そして著者独自の視点が新鮮です。

ローマ亡き後の地中海世界(上)ローマ亡き後の地中海世界(上)

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「農業・起業のしくみ」

"農業"や"農家"がいったいどうやって成り立っているのか全く知らないことに、ふと気づきました。
直売所には日ごろお世話になっているし、大好きだけれど、いったいこのシステムはどうなってるんだろう?というのがきっかけです。

本書は、農業に転職しようとする人のために「農業をビジネスとして捉える」という視点から書かれた、おおまかな手引書と言ったものです。
とりあえず、どうやったら農家になれて、土地や田畑が手に入れられて、作物を売ることが出来て、生計が立って・・・、ということがわかります。
そのほか、農業法人に就職する方法、相談窓口一覧などもあり、現実的で実用的な本でした。

農業を仕事として選びたいけれども全く門外漢、という人には非常に有効な本だと思います。まずこの本を読むことで、その世界の入り口に立てると思います。
ひとつひとつの項目についてはさらりと説明されているだけなので、ここから自分に必要なことをひとつひとつ調べ、一歩を踏み出すことになるのでしょうが、良い一歩になるんではないかと。

別の視点でいえば、農業のしくみはざっとわかるけれども、転職を希望しているわけではない場合、読み物として面白いというタイプの本ではありません。
もちろん、書かれた目的が違うので当たり前なのですが、そういう向きには図書館でめくってみるだけでも充分かも知れません。
分厚い本ではないので、ざっと読むだけなら図書館で読んでしまえるかも。で、なんとなく世界を覘けると思います。

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2009年09月05日

「スリーピング・ドール」

ディーバーの、ライムものにちらり出てきた女性尋問官、キャサリン・ダンスを主人公にした新作です。
尋問の相手を観察し、その所作や発言からウソを見抜き、分析し、捜査に役立てる、という「キネクシス」を駆使し、犯人を追い詰めます。

これはもう、著者の力量があるからこそ、これだけの作品に仕上がっている、という感じを受けました。
面白いんです。
けれど一方、この能力を主力にして事件を解決する、または小説を作り上げるのはちょっと無理があるんじゃないかと思わずにいられませんでした。
"キネクシス"による分析をもとに、犯人の行動を読むという方法は科学的なのでしょうけど、そんなにわかるものだろうか?というほど、主人公は犯人の行動を予測してしまうのです。
その辺はちょっと気になりましたが、全体的には、キネクシスの分析シーンも含めて面白く読了しました。

女性主人公の内面や生活が活き活きと描かれていて、ディーバーの筆の確かさもまた感じました。
要するに、この人は上手いのね、というのが(今更ですが)一番の感想でした。

スリーピング・ドールスリーピング・ドール
池田 真紀子

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