2009年11月20日

「ミレニアム」

スウェーデンのミステリだと言うだけで、ちょっと食指が動く今日この頃です。
ミレニアム3部作、一気に読みました。
好みから行けば、ヘニング・マンケルの方が好きだけど、読み始めたら止まらない面白さでした。誰もがそう思ってるでしょうが、著者がお亡くなりになったとは非常に残念。

主人公はジャーナリストですが、彼はある意味狂言回し的役割。
特にミレニアム2、3に描かれているのは、女性調査員リスベットと、彼女にまつわる謎です。特異な風貌、複雑な生い立ちと複雑な人間性、そして超人的な頭脳を持っているという設定で、知らず知らず彼女のことが気になってきます。
ミステリとしては、ミレニアム1が一番面白かったかな。けれど、登場人物の魅力にも引きずられ、内容もきな臭くなっていくので、2と3も止まりませんでした。

興味深いのは、スウェーデンでの女性の、被差別者、被害者としてのデータが、各章の扉の裏に書かれているところ。そのデータ自体面白いのですが、そういう事情をベースにおいて書かれたミステリなのかと思うと、新鮮でもありました。
"リスベットが出来上がるまで"、とでも言うか、彼女の生い立ちから来る人格や物の見方は、被害者以外の何者でもなく、その彼女に超人的な頭脳を持たせた設定は、心憎いような気がします。
とは言え、内容は全く堅苦しくなく、社会的なことなど考えず楽しめるエンタテインメントです。

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上
ヘレンハルメ美穂

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「花のれん」

「運命の人」が話題なので、つい山崎豊子が読みたくなりました。
著者のもうひとつの顔とでも言うべき、大阪船場を扱った物語です。

呉服屋へ嫁いで来たものの、夫は商売に身が入らず遊んで借金ばかり。内職までして支えるけれど、どうにも立ち行かなくなってしまう。
自分は商売に向かないからと全てを投げ出そうとする夫に、どうせなら夢中になっている寄席や芸事を仕事にしてはどうかと持ちかける。
非常に驚きました。
昔の「妻」は大変だ、とても真似できないと思いつつ読んでいたのですが、夫に愛想を尽かすどころか、その人の得意な分野を勧める粘り腰。私だったらきっと、さっさと見捨てて離婚してしまう。

女性起業家は今では多いけれど、日露戦争が終わった頃の、何事もなければ"普通の妻"で、それに満足していたであろう人が、実はこんなに気力や能力を秘めていた、というのがまた印象的でした。
寄席を始めたことをきっかけに、主人公はどんどん目覚めてゆきます。商売の仕方、発想、根性、圧倒されました。

個人的に本書のイチオシは、現代の小説ではなかなか嗅ぐことのできない香りが、濃厚に満ちているところ。時代の空気感や、大阪の商人、芸人の世界など、舞台背景が明治や昭和初期であっても、こういうのは、他ではあまり味わえません。

花のれん (新潮文庫)花のれん (新潮文庫)

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タグ:山崎豊子
posted by 八朔 | Comment(0) | TrackBack(0) | その他の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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