2010年01月25日

「古今東西 − 陶磁器の修理うけおいます」

金継ぎの本を選んでいて、ふと手に取った本書、拾い物でした。
実際に骨董が趣味で、どうしても金継ぎを習いたいと切磋琢磨し、とうとう生業にしてしまった著者の、骨董との出会いから開業までが、軽妙な語り口で綴られています。

骨董や金継ぎに興味がなくても面白く読めると思います。
私のような、全くこの世界のことは無知だけれども、少し事情を知りたい、という者の入り口としては、なかなかバッチリな本でした。
面白おかしく語られるエピソードを読み進むうち、金継ぎの世界がどんな風なのか、すんなりと入ってくるのです。
また、西洋と日本との、陶磁器に対する感覚の違い、そこから来る修理方法の違い、ちょっとした豆知識など、雑学的興味も満たされます。
パワフルな著者の、金継ぎへの熱い思いを感じつつ、楽しく有意義な読書となりました。

古今東西―陶磁器の修理うけおいます古今東西―陶磁器の修理うけおいます
金子 しずか

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タグ:甲斐美都里
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「ノーフォールト」

現役医師が書いた医療サスペンスということですが、医療の現場で起きている問題を扱ったリアリティあふれる小説でした。

正直なところ、小説としての出来はさすがに△かな?とも思うのですが、それでもページをめくる手が止まりませんでした。登場人物やストーリーそのものよりも、著者が訴えようとしている、日本の医療の現状が生々しく迫ってきて、息苦しいほどなのです。
医療用語もたくさん出てきますが、わかりやすくてテンポも良いので、そういう面では非常によく書かれていると思いました。

医師が不足したり、必要な病院が閉鎖になってしまう現状は、これは国の政策の責任だろうと思うし、そんな中で過酷な労働条件を強いられている医療関係者はほんとに気の毒だと思います。

同時に、医療過誤のニュースなど見ると、ほんとのところはどうなんだろう?という疑問も湧く。
本書のタイトル「ノーフォールト」、何のことやらわからずにいましたが、ミスではないのだ、力を尽くしたがだめだったのだ、ということなのですね。
患者としては、たまたま下手な医者にかかってしまった、なんてことになったら、泣くに泣けない。しかし優秀な医師であったとしても、"どこからが過失なのか"の判断は、非常に難しいと思われる。
著者が書かれているように、「無過失補償制度」は何としても必要だと感じました。
そういう現状を知ることができた、という意味でも、本書を読む価値は120%ありました。

ノーフォールトノーフォールト

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タグ:岡井崇

2010年01月24日

「竜馬がゆく」

大河ドラマを見ているうちに、つい読みたくなって再読。
最初に読んだのは20才前後でした。当時はただただ面白くて、熱に酔い時代に酔いましたが、今回は、龍馬の"不思議さ"が一番印象に残りました。

生れ落ちたのが、上士と下士の差が激しい土佐だった、生家はコテコテの武家でなく元は商家だった、勝海舟に出会った、などなど、いろんな要素はあるにしても、こんなに常識の枠の外を行くような人が出来上がるものだろうか?
いややはり、もって生まれた何か特別なものなのだとしか思えない。でも、そう考えるのは簡単すぎて、何だか勿体ないとでも言うか・・・。

何かテーマを決めて100人に企画を考えさせると、80人は似たようなものを出すそうです。では残り20人の中に、龍馬のような人がいるか?というと、まずいないと思われるのです。

文庫のあとがきに著者が書いておられる、龍馬が手帳に書き残したという言葉が興味深いです。
"薄情、不人情の道を忘れるな"、とか、"人がみな善を行うなら自分は悪をなせ"、など、懸命に悪人であろうとしている。
なんだか若者らしくもあるけれど、生来やさしく可愛らしい人だったのだろうと想像せずにおれません。

この物語は、大雑把に言えば青春物ですが、その熱と爽やかさ、時代の迫力を抜きにしても非常に刺激的でした。視点や発想について、感情と行動について、ガラにもなく考えてしまいます。

竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)

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タグ:司馬遼太郎
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2010年01月16日

「スカーペッタ」

"検屍官シリーズ"最新刊、やっぱり買ってしまいました。
前巻やその前の巻ほどは悪くなかったような。
それでも、シリーズ前半のような面白さは感じられなくて残念でした。
翻訳が変わっているのはなぜだろう?
今回の訳者も好きですが、前の訳者に特に不満はなかったし、好きでもあったので微妙に残念。

今回のケイ・スカーペッタは、なんだか今までと違う人物のような印象が残りました。少し前から妙におとなしめになっているけれど、今回もあまり存在感がないのです。全作同様、スカーペッタ自身が"戦う"シーンがないからでしょうか。
著者の得意とする(と私は勝手に思っている)人と人との、欲や愛憎の絡んだ打々発止の展開もあまりなく、もちろんそこにスカーペッタは登場せず、このシリーズらしさは「登場人物が同じだから」、ぐらいしか感じられませんでした。
彼らがまたよりをもどして(?)一緒に事件にあたるところは、大いに安心もし、ファンとしては嬉しいのだけれど。

スカーペッタ〈上〉 (講談社文庫)スカーペッタ〈上〉 (講談社文庫)
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2010年01月08日

「リンゴが教えてくれたこと」

木村秋則さんの本を、やっとやっと読みました。
まずは「奇跡のリンゴ」、そして「リンゴが教えてくれたこと」の2冊です。

テレビでよくやっているので、木村さんが何をなし、どういう人であるのかはだいたいわかっていました。
「奇跡の〜」の表紙にもなっている"笑顔"を見ると、なんとも暖かい気持ちになれますが、きっとお会いするとその魅力に引き込まれてしまうのでしょうね。
「奇跡のリンゴ」の方は、書いた側の木村さんに対するそういう思いもあふれているのです。

今でこそ無農薬や自然栽培も理解されるようになってきましたが、あのバブル時代に極貧の生活をしつつ、よく諦めずに続けられたものだと、知っていても驚きでした。
その無謀ともとれる挑戦を、家族が許してくれたこともすごい。木村さんだけでなく、この家族のみんなが、胆力のあるというか、とんでもなくすごい人たちなのではないかと思いました。
そうさせる力が元々木村さんにあったんだろうけれど、自己主張の裏にあるのは我欲、という人が多い中、これは感動的です。

「リンゴが教えてくれたこと」の方には、リンゴだけでなく、稲や野菜を育てたり、虫たちを観察してわかったことなどが詳しく書かれています。そのひとつひとつが、とっても面白い。
きゅうりの蔓が指に巻き付くかどうか、などというくだりは、もうやってみたくてたまらなくなりました。

こんなに研究してて、学者も知らないようなことに気付いていて、それを惜しげもなく教えてくれる。そして木村さん自身は、もっとずっと遠いところを見ている。これは影響されます。
自然であることと、自然栽培をすることは違うし、農業が職業として成り立たなければ意味がないわけですが、今後、少しずつ変わっていくであろう日本の農業がどんな風になるのか、興味深々になってきました。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

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