2010年03月23日

「獣の奏者」− (3)探求編・(4)完結編

続巻が出ていたとは知りませんでした。
この世界を知ってしまったからには、これは読まずにおれません。

確かに、その後エリンたちはどうしているんだろう?と気になっていたけれど、話としては2巻までで見事に完結していたのですよね。
そういう意味では、この後発の(3)と(4)は微妙な感じがあります。
まぁ、好みから行けば、断然前半2冊の方が好きだったかな。
それでもこの世界の住人としては、充分に楽しませていただきました。

母になったエリンと家族の愛、兵器として用いられる野生動物と、軍事的抑止力の在り方、また国の在り方など、テーマは深いところに突き刺さっています。
テーマの深さを思うと、続篇2巻で終わらせるより、もっと少しずつの発表でいいから、じっくり書き込んで欲しかった。

大人でも楽しめる内容だけど、これは括りで言えば児童文学なのですよね。だとすれば、子供たちが読んで考えるには、非常に有意義だろうなぁなどと思いました。
「国」と言うものは、なんだか捉えにくいように思うし、その国と国とが争う理由や争い方などを、客観的に視て考えるという経験ができるのは、非常に良いことではないかと。
自分自身を振り返ると、なんだかボーっと過ごしてたなぁと思わざるを得ませんが・・・。

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タグ:上橋菜穂子

2010年03月14日

「ハチはなぜ大量死したのか」

ミツバチの、大量死(大量失踪)の謎を追うノンフィクションです。
が、謎解きにとどまらない面白さでした。
行き着く先が非常に興味深いのです。

まず、養蜂家がハチの大量失踪に気付くところで幕が上がります。
その後、日ごろ私たちが、どんなにミツバチにお世話になってるかを知り、ミツバチの生態を知り、人に利用されるようになったハチたちの様子、利用する商業養蜂の様子など、順を追って知ることになります。
そして、ありとあらゆる"犯人"が出てくるものの、決定的な証拠は挙がらない。

けれど、ミステリ小説ではありませんから、オチは要らないのです。謎を追うことから、人間の営みを振り返り、掘り起こして辿り着くのは、今の世の中のイビツさ。
バランスや多様性は、環境問題を考える上で大切な要素だと思いますが、私たちが便利に効率よく生きるために、今までなしてきたこと・・・、それを思うと、ちょっと背筋が寒くなる。そんな内容の本なのです。

ミツバチ、私は蜂蜜とかプロポリスとか、そういう生産物しか連想しなかったのですが、受粉という大きな仕事があったのですね。そして、勤勉なミツバチがいなければ立ち行かない農業のあり方が、現代農業の姿でもあるのですね。
正直なところ、受粉作業をハチに頼っている生産形態があること自体、私には驚きでした。人工授粉してるんだろうぐらいに思ってた。
ハチでなければならない理由があるからハチなのですが、自然の摂理に逆らった方法を、自然界で生きる物に頼っている。そこに生じたゆがみは、一見問題ないように見えていても、実は根が深いのだと、本書を読み進みつつ、じわじわと感じることになりました。

環境問題を経済という視点で見ると、対症療法的な解決策では片付かない、根深い問題が見えてきます。
大規模農業の問題については、丸元淑生さん著の「何を食べるべきか」にも出てきますが、ハチに限らず、世界全体で起こっていることは、経済効率を優先させるために無視してきた、または気付かなかったあれやこれやが、臨界点に達しているということなんでしょうか?

原題は「Fruitless Fall」。「実りなき秋」ですが、これはきっと、わざとカーソンの「沈黙の春」を意識してつけられたのでしょうね。

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