2008年09月21日

「冬そして夜」

S.J.ローザンの、リディア・チン&ビル・スミスシリーズ最新作です。
実は、著者もシリーズのことも全く知らなかったんですが、二作目の「ピアノソナタ」を手にとったら、そこから全作を一気に読み倒してしまいました。

何と言っても、主人公の一人であるビルが良いです。そして、リディアの属するNYのチャイナタウンの、活気や風習、人々の考え方などがとても面白い。最初は、著者は中国系かと思ったりしましたけど、そんなこともないのですね。よく描かれていてびっくりです。

リディアとビルが、一作ごとに交互に活躍するこのシリーズ、今回はビルの番です。ビル番の作品は、重厚かつ繊細なテイストですが、本書はシリーズ中でも読み応えがありました。

ワレンズタウンという、高校のアメフト部を誇りとする小さな街が舞台です。
アメフト人気は、アメリカ人以外にはわかりにくいほどの沸騰振りだと思うのですが、その異常な人気が街の体質を歪め、子供たちにのしかかる・・・。要するに、アメフト選手や関係者は犯罪さえも許され、それ以外の体育会系でない生徒は、息を殺して身を潜めているような状態なのです。
まさかと思うような街の在り方ですが、コロンバイン高校の銃乱射事件も、そういった体育会系生徒によるいじめが本質にあるのだと、あとがきに出ていて、ぎょっとしました。

そういうアメフトの街と、そこに住む、長く音信不通だったビルの妹家族、ビルの悲惨な生い立ち、それらが相まって、切実さが読ませました。事件そのものは解決しても、ワレンズタウンが抱える問題、家族の問題は、そう簡単に解決できるものではない。それをそのまま放り出しているかのような結末は、かえって現実的です。

冬そして夜 (創元推理文庫 M ロ 3-8)冬そして夜 (創元推理文庫 M ロ 3-8)
直良 和美

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