2008年09月30日

「リスボンの小さな死」

1999年の、英国推理作家協会賞受賞作です。

たまたま、「タンゴステップ」、「獣たちの庭園」、そして本書と、ナチスを扱ったミステリを続けて読むことになりました。暗く、暴力と策謀が渦巻く時代から、何を立ち上がらせ、表現するかは作家によるけど、まさに三者三様でした。

本書は、1941年、第二次世界大戦時にナチスによってポルトガルへ送り込まれ、タングステンの買い付けに奔走する有能な事業家の運命と、1990年代の、暖かく美しいリスボンで起きた少女の殺人を、半世紀の時間を行きつ戻りつしながら結びつける、ミステリと言うよりは歴史小説といった味わいの作品でした。

ある時代に解き放たれてしまった狂気と、そこから生じる憎しみが連鎖して、一見平和に見える現代のリスボンに噴出する。けれど、それはまぶしい陽光で見えなかっただけの、リスボンの影の部分であるという感触が、なんとも背筋を寒くさせます。

著者の作品を読んだのは、「セビーリャの冷たい目」に続いて2作目ですが、正直なところ、面白かったのかどうか自分でもよくわかりません。けれど、印象的だったことでは群を抜いていて、映画を観たような感じで覚えているのです。

ポルトガルという、70年代まで独裁政権を持ち続けていた国、ヨーロッパだけれども、アフリカやブラジルの香りもする国に、行ってみたくなります。

リスボンの小さな死〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)リスボンの小さな死〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
Robert Wilson 田村 義進

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