2008年10月09日

「沈黙の虫たち」

天使が震える夜明け」を読んで、すっかりファンになった、P.J.トレイシーの2作目です。
1作目とは雰囲気が違って、ミネアポリス警察署の面々が主人公。

相変わらず人物の描き方がうまくて、刑事たちのやりとりにはニヤニヤ笑いが止まりませんでした。軽口をたたきあい、上司の服装をからかい、悲惨な事件の会議中でも、笑い出しそうになるのを必死でこらえる。
部長刑事が、事件について、つい深刻な言葉を吐く場面では、「彼は現場を離れて久しいから」と、現場の陰惨さを知る者たちの日常が表現されています。そういう心配りのようなものが全編にあって、登場人物の誰もが、好ましく感じられるのです。

個人的に気に入ったのは、若者のしゃべり方(質問ではないのに、語尾が上がって疑問形のような口調になる)をうまく使っているところ。
これは訳でも、いちいち?マークがついていて笑ってしまいました。

事件は、模範的な市民であり、静かに余生をおくっている老人が、次々と殺害されることで始まります。被害者の繋がりを探るうち、彼らが強制収容所の生き残りだとわかる。
この本は、"私刑"の是非を問うという重い問題を扱っているのですが、その問題と、配置された人々との関連がとってもバランスよく作られているのです。だからこそ、強制収容所の生還者なのだと。
本書の現代は、「Live Bait」。(生き餌)
日本語タイトルは、なかなか素敵だし好みだけど、原題はビシッと内容を表しているのですね。

正直なところ、1作目に比べるとやや期待はずれだと思ったのも事実ですが、このミネアポリス警察署のノリもまた捨てがたいのも事実。次作に期待です。

沈黙の虫たち (集英社文庫 ト 9-1 ミネアポリス警察署殺人課シリーズ)沈黙の虫たち (集英社文庫 ト 9-1 ミネアポリス警察署殺人課シリーズ)
中谷 ハルナ

集英社 2007-11
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