2007年04月29日

「シーラという子」

この手の問題は興味があるのに、なぜか食わず嫌いしていたこのシリーズ。
読んで良かったです。"生"の姿が書かれていました。

「シーラという子」の続篇にあたる、「タイガーと呼ばれた子」も続けて読みましたが、さらに興味深かった。
この2冊の間には、時間にしても15年の隔たりがあるのですが、「タイガー〜」が書かれたことは、とても意義があると思いました。
「シーラ〜」だけでも、確かに面白い。けれど、そこで終わらない現実を明らかにしてくれたことで、もっと深い部分を知ることができた。

私は当初、そうでないならいいが、と思いつつも、「タイガー〜」の内容はもっと悲惨なのではないかと想像していました。6年間の中のほんの数ヶ月間が、虐待された少女の人生にどのくらい影響をあたえるのか、多少懐疑的でもあったからです。

けれど、著者もシーラも、立ち向かっていくのですね。
虐待から逃れることはできても、傷つき破壊された内面の問題は一生ついてまわるはず。それでもなんとか自分に価値を見出そうとしている。

著者が、特に「シーラ〜」の中でたびたび書いている「子供たちは勇敢だ」という表現がとても印象的でした。
自分のせいではない障害を抱えながら、恐怖や混沌に立ち向かう姿は、野生動物と同じように美しい。

こういう現場を取材して書かれたものや、専門家が学術的に著した本も面白いものがたくさんあると思いますが、本書はそれを凌駕する力があると感じました。
平明な文章の奥に、著者の経験と勘に裏打ちされた、本質を見抜く目があるからだと思います。

<トリイ・へイデン文庫>シーラという子--虐待されたある少女の物語 (ハヤカワ文庫 HB)
<トリイ・へイデン文庫>シーラという子--虐待されたある少女の物語 (ハヤカワ文庫 HB)入江 真佐子

おすすめ平均
stars小説のよう
stars障害児教育って
starsこんな先生がいれば・・・
stars生きるという事を教えてくれます!!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

<トリイ・へイデン文庫>タイガーと呼ばれた子--愛に飢えたある少女の物語 (ハヤカワ文庫 HB)
<トリイ・へイデン文庫>タイガーと呼ばれた子--愛に飢えたある少女の物語 (ハヤカワ文庫 HB)入江 真佐子

おすすめ平均
stars愛しい
starsトリイの自己治療の物語として
stars「シーラという子」を読んでから読んでほしい
stars強い女性

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
この記事へのコメント
この方の本、ノンフィクションのものはほぼ読んでます。

現実の厳しさ、悲惨さに、読むたび心が重くなるのですが、
それだけではないものを感じて、
ついつい著作を読んでしまいます。

大人に傷つけられ、様々な自己防衛の殻の内で
助けて欲しいと願っている子供達の姿。。。

現実から自分を守ろうとして、子供達が作り上げる壁を
熱意と豊富な経験から打ち破ろうとする作者の姿。。。

今も傷ついている子供達がたくさん居て、
助けを待っているかと思うと心が苦しいです。
そしてその子供達のどれだけが救われることが出来るんだろう??
日本も早く児童虐待、DV等々の苦しんでいる人たちの救済、
その場限りでない救済がされるようにと
切に願います。
Posted by わんた at 2007年04月30日 08:46
>わんたさん、
ほんと同感です。
救われる子はほんの一握りしかいないと思うと苦しくなってしまいますよね。
この本を読んで、アメリカでもこんなに制度などの障害があるんだと痛感しました。(もちろん書かれたのはずいぶん前だから、変った部分もあると思うけど)
日本はまだその制度さえ整備されていない状態でしょうから、その間に犠牲になる子がたくさんいるかと思うと…。
それと、輪廻のように、虐待が連鎖していくという部分も非常に心が痛い。本文に出てくるけど、著者はシーラの父親に、だれからも愛されず助けてもらえなかった少年の姿を見るのですよね。そのへんが非常に痛いです。

少し前ですけど、天童荒太の書いた「永遠の子」がドラマ化されたとき、あまりにもシリアスな内容に、こんな暗いものは見たくないという投書が相次いだ、という話を聞いたことがあります。原作はミステリー仕立ての小説ですが、非常によく書かれていると思ったし、ドラマも目をそらさずによく作られていると思っていました。それだけに反対する内容の投書が多かったという事実に非常にびっくりしたのを覚えています。
こういった子供たちの救済が、政治や経済的な事情でなされないことがあるなら、それはほんとに間違っていると思います。
Posted by 八朔 at 2007年04月30日 09:36
良い読後感だったようでほんとによかったです。なんていうのだろう、引き込まれてしまうんですよね、この方には。天性の才能でしょうか。これだけうちこめる世界を仕事に持つことができるという点だけでもうらやましく尊敬します。
そしてこの種の問題を考えるとき、映画だと「モンスター」を思出だします。人間がしなければいけない、もっとも大事なことは愛して抱きしめることですね。わたしも食わず嫌いで読んだことがなかった重松清の「疾走」を友人の勧めで読みましたが、人間ってつながっていないと生きられないんですね。(この作品はちょっとえぐすぎてだめでしたが)

それで・・・横レス、すみません。

わんたさん、はじめまして。ウィリーと申します。わたしもこの方の著作はほぼ全部読んでいます、ノンフィクションもの、ですが(笑)。おなじテイストをお持ちの方がいらっしゃると思うとうれしくなりました。
Posted by ウィリー at 2007年04月30日 19:23
永遠の仔は、ドラマは生々しくて観られませんでした。
でも小説で読了。
こっちも相当辛かったですが。

政治や経済的な事情でなされないことがあるなら>
本当にそうです。
なによりもまず、被害の当事者の救済が一番先決なはず。
目を向けるべきは、救済すべき対象が存在するということだけで、
他のいかなる理由も救済を阻む言い訳にはならないと思います。

ウィリーさん。
はじめまして。
銀さんとこでいつもコメント読んでるので、
はじめましてな気がしないですが。笑
トリイ・ヘイデンさん、あの重い内容でも、
あれだけ読ませるのはすごいなあと思います。
横レスがちょっとうれしかったわんたです。
Posted by わんた at 2007年05月01日 08:00
>ウィリーさん、わんたさん、
ふたりのテイストが合って私も嬉しい♪
きっと草花に興味があったりするところも合うと思いますよ♪

>ウィリーさん、
これは紹介してもらって良かったです。どうもありがとう!
当事者が書いたものというだけでも価値があると思うのに、ヘイデンさんは文章もうまいし、率直さが良いですね。
「疾走」、私も読みました。この人の作品はけっこう若い人たちに人気があるようですよね。大人になってこういうものをあらわせるのってすごいなぁと素直に感心しました。

>わんたさん、
ほんと重さを感じさせないあたり、当事者ならではなのかな、と逆に思ったりしました。
現実が目の前にあると、暗いだの重いだの言ってられないんでしょうね〜。
Posted by 八朔 at 2007年05月01日 10:33
この本は友達に薦められて読みました。
障害児教育に携わっていた私には、どうも冷静に読めない本でした…。もっと悲惨だった子供たちのことを思い出すのと、ふがいない自分への情けなさと…。障害の重い子供たちは、自分が置かれている状況も理解できません。つらかったです。ただただ必死に毎日を送っていただけの私でした。私事ですみませんでした。
Posted by ラライス at 2007年05月04日 15:09
>ラライスさん、
私はラライスさんのことを思い出しながら読みましたよ〜。
この本を読んで思ったんだけど、障害のある子供たちと長年にわたってかかわり続けるには、ある程度、距離の置ける人、というか、自分のこととして全部を取り込んでしまわない冷静さというか、仕事として割り切れる冷たさのようなものがないと、無理なんじゃないかと思いました。
なんだか日本人には情緒的に難しいような気がしたんですよね。
傍から見てるだけなので、偉そうなことはいえませんが・・・。
Posted by 銀 at 2007年05月05日 04:28
わたしもシーラという子から入って続けて他のも読みました。
実際そういう現場に携わっている方はどういうふうに読むのかなあと思っていたんだけど、ラライスさんのコメ読んで、なるほどなーと思いました。
いろいろと難しい。それくらいしかとても言えません。
Posted by へたえん at 2007年05月11日 22:31
>へたえんさん、
へたえんさんもお読みになってたんですね。
現実に圧倒されますよね。
私の友人に、障害者の息子を持つ母親がいますが、その子のこともまた思い出しつつ読んでしまいました。彼は愛されて育っているので情緒面ではなんとか安定していますが、小学校の低学年時代はいじめもひどく、親もまいっていたのを思い出しました。
その母親曰く「普通の子がこわい」。
けれど、その普通の子の怖さは、親や先生あってのものなのです。幼い子供はまっさらですから、もともと偏見などはもっていない。親や先生の、障害者に対する接し方を見て学ぶんです。
せめて、そういう「普通の人」ではいたくないと思います。
Posted by 銀 at 2007年05月12日 03:51
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

■買えば買うほど、虐待された子を救える本
Excerpt: ●『日本一醜い親への手紙 厳選版100通』の刊行について  『日本一醜い親への手紙』は、親から虐待されて育った人々から公募した手紙を100...
Weblog: ■Social Good News 君は弱者と同じ世界に生きている
Tracked: 2009-11-03 23:32
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。