2007年09月22日

「たった一人の30年戦争」

終戦を信じず、30年もルバング島にひそんで生還した、小野田元少尉の自伝です。

最初にガツンと来たのは、「緊張感」でした。
本書のはじめの方で、小野田さんを"発見"した鈴木青年との遭遇シーンが語られています。
あっさりと書かれている事実のひとつひとつに、底知れない緊張感が感じられて、気付いたら涙が出ていました。
何かひとつ、服装であれ態度であれ、違っていたら、鈴木さんは殺されていた。
鈴木さんがソックスにサンダル履きだったことを神に祈りたいような気持ちです。

浮かび上がってくるのは、戦後30年を経た日本人と、"まだ戦争中である"小野田さんとの感覚の落差です。
終戦直後の虚脱状態や、昨日まで白だと言われたていたことが今日から黒に変るような、精神的な混乱、軍国主義アレルギーを内包しつつ、経済的な復興へ突っ走った日本があって、そんな国から来た青年と遭遇し、小野田さんは「正体を計りかねる」。

30年は長い。
切羽詰って前線は混乱し、玉砕を繰り返していた太平洋戦争当時の感覚、それが小野田さんが真実として知っている現実だったのだろうと思います。

そこをもとに、山中に潜んでいても感じられる時代の変化、時折手に入る少しの情報、などを分析し組み立てられた、米国の傀儡政権に牛耳られていると思われる祖国の状況。
何度も本書の中で語られる、敗戦を信じなかった理由は非常に興味深かった。

もうひとつ非常に面白かったのは、ジャングル生活の中で小野田さんが"発見"した"人間学"。
食べたものと体の調子の連関から、自分と3人の仲間を、草食系、肉食系に分類したり、牛肉をお腹一杯食べると、歩くと息がつまり頭がボーっとして木にも登れない、など興味がつきません。

小野田さんには、幸せな時間をなるべく多く過ごしていただきたいと、こころから思います。
そして、祖国のために命を懸け、散っていった人々が現代の日本を見たら、どう思うのだろうなと、ベタだけと考えずにおれません。

たった一人の30年戦争
たった一人の30年戦争小野田 寛郎

おすすめ平均
stars与えられた仕事に命を
stars壮絶!
stars不撓不屈の人
stars自分に子供ができたら、、、
stars真の日本人小野田さん。

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posted by 八朔 | Comment(0) | TrackBack(1) | 自伝・評伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 鈴木紀夫という人がいました。 彼には夢がありました。 「パンダ、雪男、そして小野田少尉に会いたい」 鈴木青年は24歳になり、小野田少...
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Tracked: 2009-08-15 14:38
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