2010年01月25日

「ノーフォールト」

現役医師が書いた医療サスペンスということですが、医療の現場で起きている問題を扱ったリアリティあふれる小説でした。

正直なところ、小説としての出来はさすがに△かな?とも思うのですが、それでもページをめくる手が止まりませんでした。登場人物やストーリーそのものよりも、著者が訴えようとしている、日本の医療の現状が生々しく迫ってきて、息苦しいほどなのです。
医療用語もたくさん出てきますが、わかりやすくてテンポも良いので、そういう面では非常によく書かれていると思いました。

医師が不足したり、必要な病院が閉鎖になってしまう現状は、これは国の政策の責任だろうと思うし、そんな中で過酷な労働条件を強いられている医療関係者はほんとに気の毒だと思います。

同時に、医療過誤のニュースなど見ると、ほんとのところはどうなんだろう?という疑問も湧く。
本書のタイトル「ノーフォールト」、何のことやらわからずにいましたが、ミスではないのだ、力を尽くしたがだめだったのだ、ということなのですね。
患者としては、たまたま下手な医者にかかってしまった、なんてことになったら、泣くに泣けない。しかし優秀な医師であったとしても、"どこからが過失なのか"の判断は、非常に難しいと思われる。
著者が書かれているように、「無過失補償制度」は何としても必要だと感じました。
そういう現状を知ることができた、という意味でも、本書を読む価値は120%ありました。

ノーフォールトノーフォールト

早川書房 2007-04-18
売り上げランキング : 31722
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:岡井崇

2009年12月11日

「それでも警官は微笑う」

ロングセラーで、何冊も続篇が出ていると言うので、つい読んでしまいました。面白くなかったとまでは言えないんだけど、心に残る作品ではありませんでした。

どちらかと言うと、テレビドラマのような感じに思えたかな。
小説特有の濃さや背景、心理などを楽しみたい方にはあまりおすすめしませんが、軽くパパッと楽しむには悪くないのかも知れません。

無骨な刑事とお坊ちゃん刑事、元は学者を目指していた麻薬取締官、などなど登場人物は凝っています。
無骨な刑事の無骨さ、お坊ちゃん刑事のお坊ちゃんさ加減も、それぞれに面白くないとは言わないけれど、どうも薄い。コメディタッチの良さもあるけれど、笑いが効いてくるほどには過去の悲しみが生かされていないような印象でした。
個人的には、無骨な刑事が、無骨なだけで有能に思えなかった。

それでも、警官は微笑う (講談社文庫)それでも、警官は微笑う (講談社文庫)

講談社 2006-07-12
売り上げランキング : 158557
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:日明恩

「罪深き海辺」

さすがはベテラン!という面白さでした。
ヒーローも舞台設定も、いつもとちょっと違うな、という感じ。
最初の数章では、謎や小競り合いは出てくるものの、事件らしい事件は起こりません。どちらかと言うと長閑な雰囲気ですすむのです。

それでも、引っかかることも飽きることも、面白いのかな?と不安になることもなく、どんどん読ませられてしまう。
なんでもない場面でも面白く読めるのですから、さすがは大沢在昌なのだと実感でした。

主人公も、肩に力が入っていないタイプで良い感じです。
この人をメインにした話、これからも続くのかな?とちょっと期待してしまう。
話も面白いですが、読後感も爽やかです。

罪深き海辺罪深き海辺

毎日新聞社 2009-07-23
売り上げランキング : 43947
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:大沢在昌

2009年08月14日

「シャドウ」

久々のミステリ、初めて読む作家でした。
"本格"と呼ばれるもので、日本のものは、好みでないことが多いのですが、これはけっこう面白かったです。

うまく騙してくれます。騙されていたと気付いた時には、思わずページを戻って、どう書かれていたのか確認してしまいました。
気持ちよく騙される快感、久し振りでした。

裏表紙に書かれている内容紹介を読んでも、どんな話なのかさっぱりわからないし、ミステリっぽくないし、子供が主人公みたいだし、と買うときにはちょっとためらわれました。
けれど読後には、これは内容を紹介しようにも難しいだろうな、と。

子供が活躍して、読みやすいけれども、変な軽さや子供っぽさはありません。
たぶん、文章が整理されているからなのかな?
著者の他の作品も読んでみたくなりました。

シャドウ (創元推理文庫)シャドウ (創元推理文庫)

東京創元社 2009-08-20
売り上げランキング : 1946

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2009年02月22日

「天国の扉」

「償いの椅子」もそうだったけど、けっこう込み入った話で、けれども先へと進ませる牽引力のある、ある種の魅力があるんです。
この感じが好きな人にはクセになる作家なんだと思います。
けれども、もう一歩!って感じがあって、個人的には非常に惜しい、というところです。

武術の旧家に育った青年が主人公です。
この設定はとっても新鮮で、「斬る」という言葉を現代劇で発することができる人たちが登場します。立ち回りもあるし、武術の心得的なことも出てきて、そのあたりのウズウズ感も満足させてくれます。

その主人公と彼の家族、親族、主人公のガールフレンドだった女性の家との因縁、死刑廃止運動などが絡み、守るべきもの、愛するものとの絆や葛藤が描かれています。

ただ、刀が出てくるのだから当然と言えば当然なのでしょうが、血生ぐさい展開になるし、話自体、けっこう悲惨です。
ミステリとしては、早めに黒幕がわかってしまうので、読みどころは主人公の生き様ということになります。
その生き様は、潔いのかも知れないけれど、剣の達人ならばそうなのかも知れないけれど、警察へ行った方が良かったんでは・・・?と思ってしまいました。
もちろん、それじゃ話にならない訳だけど。
要するに私は、主人公が刀を振り回して、相手が死んでも仕方ない、という状態になるのが、ちょっと残念だったのでした。

天国の扉 ノッキング・オン・ヘヴンズ・ドア天国の扉 ノッキング・オン・ヘヴンズ・ドア
沢木 冬吾

角川書店 2005-12-01
売り上げランキング : 416984
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

償いの椅子 (角川文庫)償いの椅子 (角川文庫)
沢木 冬吾

角川書店 2006-10
売り上げランキング : 228863
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:沢木冬吾

2008年12月27日

「龍は眠る」

初めての宮部みゆき体験が本書でした。なんだか強烈に読みたくなって再読。
やっぱり面白かった。本書を読んで、だだだーっと宮部みゆきを読み漁ったのを思い出します。
ミステリ中毒も、このあたりから始まったんだった。

本書は超能力少年が描かれていますが、その能力と向き合う少年の戸惑いや葛藤をメインに据えて、絵空事ではない現実的な世界が展開されています。
超能力と聞いたら、私などはどうしてもワクワクしてしまう。でもそんな部分もちゃんと満たされる。超能力の扱い方にとても好感が持てます。

本書で気に入っているのは、言葉を発することができない女性と、人の心を読むことができる少年とを係わらせているところ。
意識ははっきりとあるのに、瞬きすらできない人たちのことを思うと、人の心が読めてしまうという能力の、明るい側面が見えてくるような気がしました。もちろん、実際にそういうことができたとしても、困難も多いでしょうが。
そういうことを考えさせられてしまうのです、この本を読むと。

龍は眠る (新潮文庫)龍は眠る (新潮文庫)
宮部 みゆき

新潮社 1995-01
売り上げランキング : 5432
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2008年09月16日

「果断」 隠蔽捜査2

売れてるようだと、ついつい気になる・・・。
というわけで、「果断」と「隠蔽捜査」、読んでみました。
なかなか面白かったです。

勝因は、なんといっても主人公竜崎の造形だと思います。
警察官僚の、"たてまえ"が、そのまんま"本音"でもある男。
こんなまっすぐさを、エリートに持たせ、正義や信念で行動させる。

その姿は最初かなり奇妙に映るけれども、読んでいるうちに、だんだん彼のことを好きになっていくんですよね。
そして、彼の正義の通し方に胸のすく思いがする。

事件や警察組織の持つ重苦しさを、そういう方法ですっとばしてくれて、痛快でした。
普通は権力の前に正論はぶち破られて、悔しい思いをして、なにくそ、となるんだと思います。
けれど、権力を持つ人が奇異なまでに正論を吐くという面白さ。
こういうの思いついてくれたおかげで、楽しむことができました。

協力して事件にあたるそれぞれの登場人物も、うまく描かれていて薄さは感じませんでした。事件の謎云々よりも、人を描く作家なのだと思いました。

果断―隠蔽捜査2
果断―隠蔽捜査2今野 敏

おすすめ平均
starsまだ終わってくれるな・・・
starsいい本だ…
starsすばらしくよくできた警察小説
stars一気読みする面白さ
starsこのシリーズ、続いて欲しい!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

隠蔽捜査 (新潮文庫 こ 42-3)
隠蔽捜査 (新潮文庫 こ 42-3)今野 敏

おすすめ平均
stars隠蔽捜査2から読み直し
stars題名に偽りあり、だけどね
stars読む手が止まらなかった
stars面白いけど、安易なテレビドラマレベル
stars読後感さわやか

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2008年01月20日

「チーム・バチスタの栄光」

このミス大賞で、黄色い表紙・・・というのが、どうもハズしそうで、長いこと食わず嫌いしていました。
けれどすごい人気なので、やっぱり気になって読んでみたら、なるほど〜!

こういう話だったんですね。今までに読んだどのミステリとも違う新しい感じで、最期まで先が読めませんでした。
「手術室で起きた殺人」を説得力を持って展開できるのは、現役医師ならではなんでしょう。その上、登場人物は面白いし、語り口はうまいし、こういうの出てきたら、大賞に選ばざるを得ないんじゃない?と。

病院の内部事情が現実的で、そこにはけっこう深刻な問題をはらんでいると思うのですが、この小説は明るいです。この軽さのようなものが、万人受けする理由のひとつでしょうか。"まとも"で重い問題を含みつつも軽く明るい、というような。

それにしても、白鳥のような変った人、どうやったら想定できるんでしょう??
この人の登場で一気に話が展開していくのですが、それにしてもこの強烈なキャラクターが、最期にはなんとなく好きになってくるんだもんね。映画では阿部ちゃんがやるようですけど、文章だと顔が見えるわけじゃないですから、好きになるのに時間がかかります(笑)。

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)
チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)海堂 尊

おすすめ平均
stars恐るべし大学病院の裏事情
stars「受身型」ワトソンと「攻撃型」ホームズによる推理小説
stars白鳥さん
starsデビュー作とは思えない圧倒的な筆力
stars文庫本はなぜ上下?

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2008年01月06日

「悪人」

読みすすみつつ、特に、"止められない"と感じてもいなかったのに、気がついたら最期まで読みきっていて、徹夜になっていました。
殺人事件の謎、というよりは、人の謎に引き込まれた感じです。

テレビや雑誌が扇情的に取り上げる、いくつもの凄惨な事件の関係者の、扇情的でない素顔が書かれているといった感じでしょうか。
と言っても、生い立ちや生活を深く追求して掘り下げているのではなく、あくまで淡々と、必要な情報のみが書かれているのです。それでも、そこから人間が立ち現れてきて、ついその人やその背景を探ってしまうような感覚でした。

どこからどうみても小説なのですが、なんだかとてもリアルで、事件ノンフィクションを読んだ後の読後感に似ています。

舞台は福岡市内と、そこから峠を越え、佐賀、長崎。
武田鉄也が使うような、メジャーで明るい"博多弁"とは微妙に違う土地の言葉、全体に漂う田舎独特のうら寂しさが、とても印象的でした。
どこと言って特徴のない中途半端な田舎の、閉塞感が特によく出ていて、日本の小説だなぁと感じました。
吉田修一、もう少し読んでみたくなりました。

悪人
悪人吉田 修一

おすすめ平均
stars良かった
stars悪人はそばにいる。
starsそんなつもりではなかった。とです。
starsすごすぎました
stars評判通りの1冊でした

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:吉田修一

2007年04月05日

「死亡推定時刻」

現役の法律家が、冤罪事件をノンフィクションばりに書いた小説、ということで読んでみました。

思えば、現場や死体の検分の様子は、ミステリにはよく出てくるシーンとは言え、日本の小説で、ここまで詳細に書かれたものは読んだことがなかった。

いちばんびっくりしたのは、死体検分を、警察本部の車庫の床にビニールシートを敷いて行う、という部分でした。
私はまた、病院のようなそれなりの施設があって、そこで死体検分から、必要なら解剖も行うのかと思っていたのですが、そういうものではないのですね・・・。

容疑者となった男が連行される様子やその家族にふりかかる"被害"、事務的に仕事を処理するだけで、まるで弁護はしない弁護士、組織に忠実であるが故に事実を曲げてしまう捜査員、などなど、背筋が寒くなるような実態が描かれていてます。もしこれが現実だとしたら、と思うと、寒いどころではありませんでした。

著者はあとがきで、「作者としては、ドキュメンタリーあるいはリポートと呼びたい気持ちがある」と述べています。これは小説だが、細部は現実だと。
これは全くのフィクションです。と言って欲しかったよ〜。
けれど、日本の警察や法律家の現実を垣間見れたのだったら、読んだ甲斐がありました。

死亡推定時刻
死亡推定時刻朔立木

おすすめ平均
starsウワサに違わぬ面白さ
stars冤罪の作り方。
stars冤罪づくしの内容。
stars途中で止められなくなりました
starsまるでノンフィクションのような話

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:朔立木

2006年10月21日

「後巷説百物語」

京極夏彦の直木賞受賞作です。
実は京極堂ものより、わたしはこのシリーズの方が好きです。
何と言っても、一作目の始まり方が圧倒的だった。

今回の作品は、前作のような圧倒的なものは感じられなかったけれど、老いた百介の悲しみが胸にささりました。
怪異を演出する、又一たち"向こう側"の人間と、それを"こっち側"から眺める百介。
又一は、百介が一線を越えないよう、自分たちの側へと踏み込まないよう、まるで親のような心配りをしてきたのですよね。
その部分はあまり語られないので、もどかしくもあるのですが、言わないことこそが、又一らしくもあり、作品に妙な臭さもない理由だと思います。

この何者なのかよくわからない又一たちの存在こそ、一番の謎です。
彼らが存在できた江戸という時代に、一種の大らかさを感じました。

明治になって、「怪」などバカにされる科学の時代がやってきて、人々は物事の決着を科学に頼るようになる。
それは当然の変化だし、科学の進歩はすごいことだけれど、あいまいな部分がなくなりすぎるのは、人の心には辛いところもあるのかも知れない。
なんてことを考えた読書になりました。
このシリーズ、外伝みたいなもので書き接いで欲しいなぁ。

後巷説百物語
後巷説百物語京極 夏彦

おすすめ平均
starsいまひとつ・・・

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年05月27日

「ワイルド・ソウル」

ドミニカの移民裁判が先ごろニュースになりましたよね。
悲しいけど、日本ってろくな国じゃないなぁと思ってしまいます。

この「ワイルド・ソウル」は、ブラジル移民二世を主人公にした、日本国政府に復讐する話です。
と書くと、重たい感じがしますが、明るさと面白さで最後までノンストップで読める娯楽作品です。
けれど、しっかりとその動機の部分が書き込まれている。
ブラジルへ、どういういきさつで、どんな人たちが渡り、どんな苦労をしたのか、フィクションとは言え、とても実感のあるものでした。

著者の作品を読んだのは二つ目ですが、この明るさはこの人の持ち味なのかなと。
人間に対するまっとうな視線と、特に底辺で生活する人々に対する深い情のようなものを感じるのですが、それでもちっとも暗くないんですよね。
なんて、二作品しか読んでないのにエラソーですが・・・^^;。
エラソーついでにもうひとつ。
こんなにいっぱい賞を取ってるなんて、ちょっと意外でした。

ワイルド・ソウル〈上〉
ワイルド・ソウル〈上〉垣根 涼介


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年04月02日

「剣と薔薇の夏」

日本は幕末、アメリカは南北戦争前夜。
はるばる咸臨丸でやってきたサムライたちが、ニューヨークで大歓迎を受ける傍ら、現地では不可解な連続殺人事件が起こります。

ミステリで時代物で、と言うので、どちらも大好きな私にはどうしても読んでみたかった作品です。
ちょうど、徳川慶喜の話や幕末の短編を続けて読んだところだったので、同じ時代をアメリカ側から見るような面白さもありました。

と言っても、日本に関することは、使節団のみです。
それも、事件に直接絡んだりはしないのです。けれど、日本から来たサムライたちが、異邦人として、その所作や姿が描かれているのがとても興味深かった。

ただ、現代の展開の速いミステリとは一味もふた味も違うので、ややじらされました。
先を焦らずにゆっくり構えて、まだ摩天楼などのないニューヨークを楽しむ気持ちで読むのが面白いと思います。
じっくり書かれている分、ニューヨークの風景や人々が、脇役まで含めてしっかりと印象に残っているのです。それが交じり合って、読後感は充実したものがありました。

不思議だったのは、翻訳ものを読んでいるつもりになっていたことです。途中、ああ、日本人が母国語で書いたんだったな、と何度思ったことか。
アマゾンのレヴューなどを見ても、同じようなことが書いてあるので、みんなそう感じるようです。

剣と薔薇の夏 上
剣と薔薇の夏 上戸松 淳矩


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:戸松淳矩

2006年03月21日

「MOMENT」

以前、「MISSING」を読んでけっこう面白かったので、文庫になるのを待ってました。
好みから行けば、MISSINGの方が好きだったかな。

とは言え、これも印象的だった。
ミステリ仕立てではあるけれど、謎とは違うところに面白さがあるんですよね。読み終わった後にも、いつの間にかずっと考えているような、そんな世界があるのです。

この本の中で一番好きだったのは、「森野」という登場人物。
両親を事故で亡くし、高校卒業後は家業を継いで葬儀屋をやっています。この人の、不器用でぶっきらぼうで寂しそうなところに、とても魅力を感じました。

それと、丁寧に書かれた文章もいいです。
特に好きな作家だとも思ってないけど、新しいのが出たらきっと気になる。
何かすごいものが出てくるんじゃないかと、知らず知らず期待してるらしいんですよね。

MOMENT
MOMENT本多 孝好

おすすめ平均
stars引き込まれる
stars独特の世界観
starsシリーズ作品として読み続けたくなる作品
starsあなたの最後の願いは何ですか?
stars読みやすい

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ミッシング
ミッシング本多 孝好

おすすめ平均
starsう〜〜ん
starsやっぱりキレイです
stars感慨深い作品
starsスタイリッシュな短編集
stars好きといえば好きだが…

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:本多孝好

2006年03月17日

「容疑者Xの献身」

単行本で350ページほどの長編なのに、不思議なことに短編を読んだような気がしてます。
読後感が、よくできた短編を読んだときのような感じなのです。

どーっと考え込んだり、その世界にのめり込んだりと言うのではなく、印象に残る人生の一端を除き見たような、よく知らないんだけど、どうも気になる人にちらりと出会ったような。

わざとなのでしょうけど、人物描写はあっさりしていて、どっぷり感情移入できるほどの濃密なものは流れていません。
天才数学者の冷静な頭脳と行動を反映してか、全編を通じて切実な感じはないのです。でも、終盤に謎が明かされる部分は、けっこうせつない。

天才数学者である石神は、家庭の事情から学者として生きることをあきらめ、高校の数学教師をしています。
そしてアパートの隣に住む女性に恋をし、彼女がはずみで起こしてしまった殺人の隠蔽工作を買って出る。

この石神と言う人はなかなか魅力的で、こんな風になってしまうのがほんとにもったいない!と思ってしまいました。
どうせなら、彼がこういう行動をとらなければならなかった背景をもっと知りたかった。
純粋に、「恋」と言ってしまっても確かに納得できなくはないけど、彼にとって、どれだけ特別だったのかがもうひとつピンと来ない。
それが恋だといわれれば、まったくそのとおりだとも思うんですが・・・。

容疑者Xの献身
容疑者Xの献身東野 圭吾

おすすめ平均
stars素晴らしい。一気読み&電車乗り過ごし
starsすごいよ東野!
stars内面にある行動の価値基準
starsとにかく面白い
stars純愛推理小説

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年02月26日

「けものみち」

米倉涼子主演のドラマがけっこう面白いので、原作を読んでみました。
上下巻ですが、ほとんどドラマどおりに話が進み・・・、と思っていると、あれよあれよという間に衝撃のラスト。
うそ・・・。

じゃあ、ドラマはどうなるの??
現代風にアレンジしてあるとは言え、こうなるとけっこう違ってくるぞ。
と思って検索してみると、公式HPがありました。
ええっ、小滝って・・・。

原作では、昭和30年代、戦前からの因縁を背負ったものたちが、戦後の混乱期を経て黒い力を蓄えている様が異様です。
黒いものは黒いままに、変に正義など出てこない描かれ方なのです。
久垣は、唯一、真相を確かめようとする刑事ですが、彼もまた悪人として描かれている。
意外だったのは主人公の民子でした。
小説では民子は、度胸も据わっていて美人ではあるけれど、流されるだけの平凡な女として描かれています。

ドラマの方も、配役もいいし良くできてますよね。
ラストまで目が離せなくなりました。
しかし、佐藤浩一、かっこい〜^^
冷静で不気味な感じ、よく演じられるなぁと毎度感心してます。

原作の一番はじめに、

≪けものみち≫
カモシカやイノシシなどの通行で山中につけられた小径のことをいう。山を歩く者が道と錯覚することがある。

とあります。
錯覚しないようにしたいですね・・・。

けものみち (上)
けものみち (上)松本 清張


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:松本清張

2005年12月11日

「クライマーズ・ハイ」

NHKドラマのネタが続いてしまいましたが、何冊か読んだ著者の本の中では、この「クライマーズ・ハイ」が一番好きです。

小さい頃から、うちには5〜6紙の新聞が常にありました。
普段はろくに読まないのですが、たまに同じ事件についての記事をあれこれ読んでみると、その違いように子供ながらに驚いたのを覚えています。

ほとんどの場合、事実を追った"新聞記事"らしい書き方で、どの新聞も同じ内容を伝えている。これは"○○発表"といったものを書いたからなのか、などと思うようになったのは大人になってからです。
けれど中には、同じ事件なのに、いったい何がほんとなんだ?と思わせるような違いがあって、子供の頭には不信感となって記憶されました。
同じような時期に、「主観の相違」というようなことも学んだような気がします。

事実はひとつかも知れないけれど、どこから光を当てるかで形は変わって見える。何を現し、何を現さないかでも違って見える。
そこへ、受け手側が、出てきたものをどう捉えるかという問題も加わる。

などと考えていると、自分がいつも知りたいと思う「ほんとのところ」と言うのは、自分が望む形で出されたものだから信用しているだけじゃないのか、と自分自身への不信感が芽生えてきたり・・・。

「クライマーズ・ハイ」の読みどころはやはり、未曾有の大事故、日航ジャンボ機墜落を伝えようとする新聞社の、現場の雰囲気だと思います。この臨場感は、体験者でないと書けないのかも知れない。清濁併せ呑む、などという言葉が浮かぶような、リアリティを感じました。

また、色んな局面での、「決断」、「選択」が描かれていて、それが人生そのものと結びつく重石のような、人生を歩む上での布石のような役割となっています。
そしてやっぱり、最期まで一気に読めてしまう。
力作だと思います。

クライマーズ・ハイ
4163220909横山 秀夫

おすすめ平均
starsこれぞ男の生きる道!
stars目をそらさないで
stars人生には超えねばならない山がある
stars残念…
starsこの本は一気に読むべきだ。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:横山秀夫

2005年10月16日

「ルパンの消息」

古本屋にあったもんで、つい買っちゃいました。
著者のデビュー作/処女作だそうです。

処女作って言うと、もしかしてあんまり面白くないかも、と二の足を踏むことも多いけど、この人の場合は、それなりの年齢でのデビューなので大丈夫かな、と。
で、なかなか面白かったですよ。
期待していた以上だった。

ストーリーも面白いけど、これ、良い話だと思います。
なんかちょっと、うるっと来ます。
細かいことを言えば言えなくはないけど、面白い小説って、そういうことを無視できるものですよね。
重すぎず、軽すぎず、どんでん返しありで、楽しめます。

ルパンの消息
4334076106横山 秀夫

おすすめ平均
stars鮮烈かつ読みごたえ十分の処女作改稿版
stars初期の作品だから良いんじゃない?
stars新人らしく、初々しい作品
stars勢いがある
starsマグニチュード・ゼロ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:横山秀夫

2005年10月10日

「天使のナイフ」

江戸川乱歩賞受賞作です。
少年法と犯罪被害者、加害者の贖罪などを題材に、真摯な態度で書かれた読み応えのある作品でした。

何より、きっちりミステリになっているので、意外な感じがしましたが、だからこその乱歩賞なんですかね。
扱い難い、デリケートなものを題材にしているし、前半は落ち着いた感じで話が進むので、ミステリといっても、謎や話の展開で読ませる話じゃないのかな、などと思っていたんです。
そうしたら、後半は唸ってしまった。

これでも充分面白かったけど、後半の最後の方、加害者の、生い立ちや事件に至るまでの精神的な側面など、もうちょっと読みたかったような気がします。

天使のナイフ
4062130556薬丸 岳

おすすめ平均
starsタイトルの意味
starsじっくり読ませる佳作!
starsもったいない!
stars被害者の辛さが・・・
starsまたドラマ化されるんだろうなあ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2005年08月20日

「孤宿の人」

このところ、少し古い海外ミステリを続けて読んでいたので、殺人が起きてその真犯人を追及する、というパターンに飽きていたところでした。犯人がわかったら、もうそれ以上面白みの感じられない話のなんと多いことか。

"弧宿"は、江戸時代の、四国の小藩にあります。
市井の人々のつつましい暮らしを脅かす自然の力、藩の大事をなんとか凌ごうとする武家の思惑。そこへ、"頭の鈍い"幼い少女が一枚噛んでゆく。

相変わらずうまいです。
自然の力を用いながら、怪しい雰囲気をかもしながら、それでもきっちりと論理的につくられていて、すっきりします。
謎に引きづられて読みながらも、人の心に棲む鬼や、立場の違いから来る考え方の相違、身分制度にまつわる不条理などなど、人々の暮らしが生々しく、けれど愛を持って描かれています。

宮部みゆきは、まっとうな生活や人の姿を書かせると筆が冴えると思いますが、きれいごとでない世界も見せてくれるところに好感が持てます。

孤宿の人 上
4404032579宮部 みゆき

おすすめ平均
stars孤宿の人(上.下)
stars優しさに触れたい方にお勧め
stars構成が素晴らしい
stars正義だけでは生きていけない・・・
stars泣けた!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:宮部みゆき
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。