2010年01月25日

「古今東西 − 陶磁器の修理うけおいます」

金継ぎの本を選んでいて、ふと手に取った本書、拾い物でした。
実際に骨董が趣味で、どうしても金継ぎを習いたいと切磋琢磨し、とうとう生業にしてしまった著者の、骨董との出会いから開業までが、軽妙な語り口で綴られています。

骨董や金継ぎに興味がなくても面白く読めると思います。
私のような、全くこの世界のことは無知だけれども、少し事情を知りたい、という者の入り口としては、なかなかバッチリな本でした。
面白おかしく語られるエピソードを読み進むうち、金継ぎの世界がどんな風なのか、すんなりと入ってくるのです。
また、西洋と日本との、陶磁器に対する感覚の違い、そこから来る修理方法の違い、ちょっとした豆知識など、雑学的興味も満たされます。
パワフルな著者の、金継ぎへの熱い思いを感じつつ、楽しく有意義な読書となりました。

古今東西―陶磁器の修理うけおいます古今東西―陶磁器の修理うけおいます
金子 しずか

中央公論新社 2002-04
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タグ:甲斐美都里
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2008年11月06日

「肥前の諸街道」 − 街道をゆく 11

久々の司馬遼太郎でした。
今更ですけど、この人は文章がうまいなぁと。

歴史というのは、俯瞰してみると、ただでさえややこしいと思うのですが、それをさらっと、背景の事情やちょっとしたエピソードを交えつつ、あっさり読者にわからせてしまう。
本人はよく「鳥瞰」という言葉を使われていますが、あっちの事情、こっちの事情、その裏にある体質、体質の元はどんなところにあるのか、などなど、こんな短い文章でわかりやすく書かれているなんて、考えてみたら凄すぎます。

もちろん、そこには著者の主観も入るわけですが、その主観や憶測が面白い。もともと、歴史上の出来事や人はわからないことだらけなわけなので、そこを著者の感じる"時代の気分"で補ってもらって、読んでいる私はなんてラッキーなんだろう、などと思うのでした。要するに私は、司馬遼太郎が好きだということなんですが。

「肥前の諸街道」は、福岡県の西端から唐津、平戸、長崎と、海に面し、古来から海外とのかかわりの深い地域の旅です。
福岡から唐津へ向かう202号は、海沿いを走る景観の素晴らしい道路ですが、蒙古の船が何千も並んでいたなんてとても思い描けません。

そこから平戸、佐世保、長崎と辿って、ポルトガルがやってきた当時の面影を探します。ポルトガルが最初にやってきたことはわかっていても、現代のポルトガルのイメージと、当時の強かったポルトガルとはどうしても一致しない。残念ながら、当時のポルトガルの痕跡は、関が原の20年後にはすっかり取り壊され、長崎からは消滅してしまったそうです。
本書は、そのあたりまでの歴史の痕跡を探しつつ巡ったもので、後年の出島に閉じ込められたオランダや海援隊などには触れられていません。

いつもの須田画伯とのやりとりは、やっぱり微笑ましい。
この人の可愛らしさは尋常ではないです。その愛くるしい須田画伯の描写が好きで、いつも楽しみです。
この器用ではない二人の旅人が、時に地元の人に困惑したりしているさまがまた面白い。興味のない地域のものでも、須田画伯がどうしているか知りたくて、読みたくなります。

街道をゆく (11) (朝日文庫)街道をゆく (11) (朝日文庫)
司馬 遼太郎

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2008年10月01日

「アメリカよ、美しく年をとれ」

タイトルが良いなぁ、と手に取りました。
著者は、半世紀以上にもわたって、アメリカを見つめ続けてきたアメリカ史研究の第一人者。本書は、著者が自らの若き日々を振り返りつつ、アメリカの変貌と本質を探ったエッセイです。

日本人は基本的に、ずっとアメリカが好きで、アメリカを通して世界を見て来たようなところがあるけれど、もはや「アメリカが好き!」なんて大声で言える雰囲気はなくなっていますよね。日本に限らず、世界中の人が、自由で豊かなアメリカに憧れたのに、今では嫌われ者になっている。
アメリカの変り行く姿を、著者は自分の実感と、報道や文献などを引用して辿り、そして愛を持って、「老醜をさらすな」と警告しています。

個人的には、アメリカは怖い国だという印象があります。富と権力のためには、自国の国民ですら犠牲にするような怖さです。そういう傲慢さを、国民は感じていない様だという怖さでもあります。
11月には大統領選挙がありますけれど、この先アメリカはどう変っていくんだろう?
そして日本はアメリカと、どう付き合っていくんだろう?

アメリカよ、美しく年をとれ (岩波新書)アメリカよ、美しく年をとれ (岩波新書)
猿谷 要

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2007年03月06日

「吉本隆明 「食」を語る」

吉本隆明なんて、あまりにも難しそうで、対談ぐらいしか読んだことがありません。
だけど、「吉本ばななのお父さんだし」、というのがあって、ちょっと触れてみたい気持ちがあるんですよね。正しくない興味の持ち方だとは思うけど(^^;)。

これも、対談だし「食」がテーマですから、ばななのお父さんはいったいどんな風に「食」を語っているのだろう?と読んでみました。

結果、この"巨人"と呼ばれる人が非常に身近に思えた。
なんというか、かわいい人でもあるんですね〜。
「キッチン考」という章もあって、"吉本隆明おかま説"が出てきて笑えました。
父によると、ばななさんは特にお料理が好きだとか、得意だというような子どもではなかったそうです。これはちょっと意外でした。

ご本人の生い立ちも、その時々の「食」を通してかなり詳しく出てきて、巨人はこんな風に育ったのか〜、と。
学生時代の生活などは大らかで、戦争を挟んだ昭和の生活が垣間見える気がしました。
漱石や鴎外など、文豪たちの食についても気ままに語られていて面白いです。ご本人は糖尿病だそうですが、そこから「あれも絶対糖尿のけがありますね」などと斬られています(笑)。

言葉そのものは覚えてないけど、「ずっと座って考えることで生きてきた人に、生活を変えて運動しろと言われても」、みたいなことが出てきて、生活と思考は深く関わってるんだろうなと、改めて感じました。
考えが生活に出るのはわかる気がするけど、生活それ自体が、思考に影響を及ぼしてるかも知れないと思うと、なんだか毎日背筋が伸びるような…。

堅苦しくなくて、楽しく読めました。
身近に感じられた分、いつまでもお元気でいて欲しいと、せつに思います。

吉本隆明「食」を語る
吉本隆明「食」を語る吉本 隆明 宇田川 悟

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2006年09月12日

「あなたが子どもだったころ」

河合隼雄さんが、各界を代表する10人に子ども時代を語ってもらった対談集です。

河合さんの本だから、きっと売れてるでしょうけど、親子関係で悩んでる人にはぜひ読んで欲しいなと思った一冊でした。
親の方にも、子どもの方にも。

だって、多くの人が、かなりキツい子ども時代を送っている。
日本を代表する人たちが、学校教育の中ではみ出して、親にも理解してもらえずに追い詰められて、真剣に自殺を考えたりしていた。それを知るだけでも何かが違って見えるかも知れないと。

当然だけど、子ども時代を語るには、その人が育った時代、そしてその親が育った時代が色濃く反映されるんですよね。
明治やそれ以前の日本人の感覚、太平洋戦争で白黒反転してしまった経験、現在では考えられないような日常がかいま見えました。

声を出して笑ってしまったのは、井上ひさしさんのお話です。
語りがうまいのなんの。
中学生のころ、親に嘘をついて、友達と東京へ出てくる話があるのですが、これ誰か映画化してくれないかな?

各自、毎日少しずつ自宅のお米を盗んでためておく。
で、それを身体に巻いて列車に乗って東京へ行って、売ったお金で買い物したり野球をみたりするんです。その計画も行動力もすごいけど、語り口もユーモアたっぷりでさすがです。
これは本筋とは関係ないんだけど、戦時中はコンドームも配給だったんですね!でね、名前が「鉄兜」だって。
このあたりで、わたしはノックアウトされました。

今の時代、子どもは生きにくいだろうなぁと、よく思います。
大人だって、実は生きにくいんだと思う。
この本を読んで、なぜだか少し楽になったような気がしました。
現在の問題が解決したわけではなくて、過去のかなり強烈な親子関係や学校教育にさらされてきた人の話を、読んだだけなんですけどね。

あなたが子どもだったころ―こころの原風景
あなたが子どもだったころ―こころの原風景河合 隼雄

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stars読むと元気が出ます!
stars過去から見る心の処方箋

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2006年08月17日

「歴史と小説」

司馬遼太郎です。
この人の本ばっかり並んでしまうので、敢えて載せないようにしてるんですが、やっぱり面白いので書いちゃいました。

この本、何度読んでもにんまりしてしまう箇所があるんですよ。
「先祖ばなし」の項の出雲の話、目が点なのです。
大国主命にしろ、天孫降臨にしろ、自分にひきつけて考えてみたことなど、たいていの人はないと思います。
だって、神話の世界ですよ。

けれど、出雲では違うらしいのです。
著者の先輩にあたる出雲の名族出身者が「私は大国主命の子孫です」と語り、今でも大国主命の悲憤を思うと恨めしい、という。
著者自身、この人は"気が狂っているのではなく"、などと書いていて、何度読んでも笑ってしまいます。
詳細は、ぜひぜひ読んでみてください。

他にも、対談あり、旅ありで、司馬遼太郎が考えたことが堪能できます。
新撰組や坂本竜馬のこと、明治維新の捉え方などなど、じっくり楽しめました。

歴史と小説
歴史と小説司馬 遼太郎

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stars司馬遼太郎初期のエッセイ集

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2005年07月29日

「島原・天草の諸道」 − 街道をゆく 17

島原、天草といえば、やっぱり、"島原の乱"、"隠れ切支丹"、"天草四郎"など、真っ先に思い出してしまいます。

この本は冒頭から、「日本史のなかで、松倉重政という人物ほど忌むべき存在はすくない」、という激烈な言葉で始まります。松倉重政とは、島原半島一円の領主で、島原の乱を引き起こした人物です。

島原の乱は、切支丹を弾圧したから起こったのではなく、お上に良い顔をしたかった領主に、これでもかと搾り取られた結果の、農民一揆だったんですね・・・。
たまたまやってきた領主がそういう馬鹿者だったために、ただでさえお米のあまりとれない土地に生きている人々が、ジワジワ死ぬか、一揆でいっぺんに死ぬかの選択を迫られた。

その搾取がいかに異常だったかが、徳川の体制と藩の石高にまつわる話でよくわかります。
また、この松倉と言う人が、どこのどういう流れの人で、「治める」ということに対してどういう考えを持っていたか、またその背景なども、時代を遡って説明されています。

島原のすぐ隣の、諫早と言う土地では、領主が二万五千石を捨てて、一万石の他藩の家老になるという荒業で、節税のようなことをしているのです。おかげで、領民は余裕が出来、「おこし」などという、お米で作ったお菓子が名産になっていると言います。
この違いはすごい。ほんの数十キロ離れた所に生まれていれば・・・。

当時の諸大名の思惑や、徳川の体制がすごーくよく出来ていることなど、またキリスト教が入ってきた当初の状況など、読み応えがありました。
豊臣、徳川の時代は、テレビなどでもお馴染みなので、どうも物語的な感じを持ってしまいます。
隠れ切支丹やら天草四郎となると特に。

けれど、凄惨な拷問なども含めて、ほんとに起こったことなんですよね。
これらのことについて、島原の人は語りたがらない、という記述があって、何とも言えない気持ちになりました。

街道をゆく〈17〉島原・天草の諸道
4022601876司馬 遼太郎


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2005年07月10日

「男たちへ」

塩野七海は、好きな作家のひとりです。
日本で育った、この年代の女性が、こんな価値観を持てると言うこと自体に、すごさを感じます。

これは、まさに「男たち」必読。
塩野さんのような、バリバリ社会で働く男性に人気の女性作家は少ないと思うけど、そんな人が書いているだけに、意義も影響力も大ありですよね!

どこかで、日本人の男の、"イタリア人化計画"というのを読んだことがあるけど、案外いい案かも!
ちなみに、イタリア人を生徒に持つ日本語教師(女性)によると、イタリア人は十人十色ではなく、十人一色だそうです。

例えば、「引き出しの中に本があります」と言う例文があって、それをアレンジして自分で文を作る、という問題がある。
他の国の生徒は、冷蔵庫の中にジュースがあります、とか、かごの中にみかんがあります、とか、それぞれに文を作ります。

イタリア人の場合は、みんな「あなたの瞳の中に、私がいます」・・・。
まぁ、世の中こんな男ばっかりになったら、ちょっと面倒かも知れないけど。

男たちへ―フツウの男をフツウでない男にするための54章
4167337037塩野 七生

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starsフラーズ・ダルム
stars塩野、外へでろ!
stars魅力的な男とは
starsこれぞ塩野さんワールド!?
starsこれは一般的女性の意見ではないような・・・。

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2005年06月19日

「歴史を紀行する」

海外と比べなくとも、日本の中にも文化や気質の違いは、けっこう色濃く存在するんですよね。
例えば、田舎から東京へ出て来た人は、ある意味ラッキー?などと、私は感じてしまいます。
比較できる文化を、背骨のように自分の中に持っているからです。

この本では、高知や会津、佐賀、滋賀など各地を、実際に著者が訪れて、肌で感じながら、その気質や思考が、どう歴史にかかわったのかを綴ってあります。

けっこう目からウロコです。
なぜ土佐の人が議論好きなのか、なぜ佐賀には汚職が絶無なのか、なぜ立身出世がなった会津の人は故郷を憎むのか。
「風土」という面から見た、日本人と歴史。
面白いです。

あとがきによると本書は、「風土性に一様性が濃く、傾斜がつよく、その傾斜が日本歴史につきささり、なんらかの影響を歴史の背骨にあたえたところの」土地を選んだそうです。

そして、「風土性が希薄で、日本歴史のなかでたとえそういう県または地域が存在しなくても日本歴史は今のごとくに存在しえたという、いわば歴史の中では昼寝をしているような物臭な土地」への思いが強くなることがあった、と書かれています。
そっちもすごく読んでみたかった。
残念。

4167105225歴史を紀行する
司馬 遼太郎

酔って候<新装版> 歴史と視点―私の雑記帖 王城の護衛者 馬上少年過ぐ 最後の将軍―徳川慶喜

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