2007年09月21日

「病める狐」

久々にミネット・ウォルターズを読みました。
すると未読の作品が気になって、3作品続けて読んでしまいました。
ミネット・ウォルターズ、くせになるなぁ。
ミステリ中毒症としては、欠かせない作家です。

病める狐 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 9-7)
病める狐 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 9-7)成川 裕子

おすすめ平均
stars女性がメインではないような。
stars安定した読み応えなれど

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冒頭、狐狩りをめぐる論争が出てきます。
賛成派、反対派それぞれに言い分はあるけれど、それを記事にするのは"アン・カトレル"。第一作で登場したあの人ですよね。ちょっとにやり、としてしまいました。

好みから言えば、フォックスの歴史をもう少し書いて欲しかったかな。英国の田舎の旧家とその過去が謎の核心なんですが、そのまわりにうごめく村人や流れ者が絡んで、ぐいぐい引き込まれました。

昏(くら)い部屋 (創元推理文庫)
昏(くら)い部屋 (創元推理文庫)成川 裕子

おすすめ平均
stars実験的で、きわめて現代的な傑作
stars真実は・・・どこに?

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目覚めたら病室にいて、事故にあったと知らされる。そして、事故前後の記憶がない・・・。
と、こんなこんなありがちに思える設定にしておきながら、こんなに面白いなんて。昏睡から目覚めたヒロインが感じる恐怖が、なんとも緊張感をたかめます。
頭の良い、嘘もつける、しかし心を開くのが苦手な彼女が何を思い出すのか、ほんとに忘れているのか、この辺の筆さばきはさすがだと思います。

鉄の枷 (創元推理文庫)
鉄の枷 (創元推理文庫)Minette Walters 成川 裕子

おすすめ平均
stars新古典とでもいうべきウォルターズ・ワールド
starsミステリーの枠を超えた素晴らしさ
stars結局マチルダはどこにもいない
stars特異な舞台設定
stars英国風の重厚と軽妙に彩られた家庭小説の傑作

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CWAゴールドダガー賞受賞作。
これは非常に印象深い作品でした。
イギリスらしい抑圧の時代の影とシェイクスピア。重厚さはあるものの重苦しさはなく、ページをめくる手を止められないミステリでした。
被害者の老婦人から遺産をたくされるセアラと、その夫である画家のジャックとの関係も読ませます。人は人の中の何を見ているのか、事件とも絡み合ってとても効果的に書かれています。

著者は女性の生き方を描く人ですが、そのうちミステリじゃないものも出てくるんだろうか?と思わずにいられません。

2007年03月05日

「目くらましの道」

ヘニング・マンケルの、ヴァランダー警部シリーズ第5作目です。
ゴールドダガー賞受賞作。

以前、「白い雌ライオン」を読んで、すっかりヴァランダー警部のファンになってしまいました。主人公のヴァランダー警部の、冴えない感じ(刑事としては冴えてるんですが)が実にいいんです。なんというか、憂いがあるんですよ。

これはスウェーデンの警察小説なので、人名も地名もかなり新鮮です。"なんとかベリ"とか、"なんとかソン"とか。スウェーデンといえば、ストックホルムぐらいしか知らなかったけど、舞台は南部です。巻頭には地図も載っていて、主要都市の場所が確認できるようになっているのが嬉しい。
そしてアメリカものと違う感覚が面白い。登場する刑事たちも、スウェーデンでもアメリカのような犯罪が起こるようになった、と嘆くのです。

本書は連続殺人事件を扱っていますが、よくある小説とは一味違っていて楽しめました。話もプロットも充実していて、登場人物もしっかり書かれています。うわついてなくて、超人的な人も出てこない。けれど、しっかり引きずり込まれる。

あとがきによると、ヘニング・マンケルはミステリ以外でも評価が高いんだそうです。こんな風に、"憂い"を表現できること自体、作家の力量なのかな。

目くらましの道 上
目くらましの道 上ヘニング・マンケル 柳沢 由実子

おすすめ平均
stars人生最高のミステリー

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2006年10月07日

「天使が震える夜明け」

久々に楽しめました。
カバーと日本語タイトルの印象から、恋愛メインのサスペンスかと思って、しばらく買うのを躊躇っていたのです。でも、読んでよかった。
よく練られたプロット、冴えた人物造形、展開の早さ、色んな要素が詰め込まれているのに、あっという間に読めてしまい、読み終わるのがもったいない感じでした。
恋愛という面から言えば、マイクル・コナリーのボッシュシリーズ程度の味付けです。

ウィスコンシンの田舎、ある教会で老夫婦が射殺される。一方、ミネソタではコンピュータゲームを真似た連続殺人事件が起こる。この二つの捜査が同時に進みます。
当然、登場人物も多いのですが、この人誰だったっけ?ということにはならないのです。人物の描き方がうまい上、エピソードも良くて、それぞれの登場人物に愛着が湧いてきます。ほんの少し登場するだけの脇役の人でさえ、良い味を出しているんです。

欲を言えば、犯人の過去や、モンキーレンチ面々の大学時代の事件について、もう少し詳細に知りたかった。もしかして、そのあたりはスピード感やページ数のために、敢えて書かれなかったか、削られたかなのだろうか?と、読後にひとり憶測中です。

天使が震える夜明け (ヴィレッジブックス)天使が震える夜明け (ヴィレッジブックス)
P.J. Tracy 戸田 早紀

ヴィレッジブックス 2006-09
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おすすめ平均

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2006年08月20日

「水の戒律」

フェイ・ケラーマン、はじめて読みました。
今まで馴染みのなかった、敬虔なユダヤ教徒の生活が詳しく出てきて、とても興味深かった。

ユダヤの戒律、ユダヤ教徒と一般世界との間の軋轢、日本人である私にはピンと来ないけど、当たり前のようにユダヤ人を嫌う風潮。
これだけで、ミステリなどなくても面白い。

謎が大したことなくても、小説として面白く読めるというのは、力がある証拠だという気がします。
暇があったら、次回作も読んでみたいと思わせる作品でした。

水の戒律
水の戒律フェイ ケラーマン Faye Kellerman 高橋 恭美子

おすすめ平均
starsサスペンスではなく恋愛ものとして最上
starsユダヤ教の入門書としても、、、
starsユダヤ人社会で起こった事件。サスペンスとしては今一つ。

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2006年04月30日

「身代りの樹」

ルース・レンデルの、英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞を受賞した作品です。
この人も好きな作家のひとりです。
ウェクスフォードものも好きですが、やはり著者の本領が発揮されるのは、ノンシリーズものですよね。

精神を病む母に、幼い頃から悩まされてきた主人公は、愛児を急病で亡くしたことをきっかけに、どんどん追い込まれていきます。
たまたま病院通いのために訪れていた、一見正常に見える母が、悲しみに沈む娘のためにと、なんと他人の子供を誘拐してしまうのです。

子供を誘拐された側の奇妙な生活、そこに関わる小悪党なども絡んで、先の読めない、レンデルらしい話が展開されます。
正気と狂気の境目、とでも言うのか、そのへんの表現がほんとにうまい。

レンデルと言えば、あまり体調の良くないときには辛いタイプの作家ではあるけれど、この「身代りの樹」は、レンデルらしさを楽しめるわりに読後感は案外さっぱりしていました。
主人公の選んだ道をどう受け止めるかは、読者それぞれ違うでしょうが、なんだか私には納得のいく結末でした。

身代りの樹
身代りの樹ルース レンデル Ruth Rendell 秋津 知子


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↓は、レンデルの「引き攣る肉」が原作です。
これはぜひ見てみたい!

ライブ・フレッシュ
ライブ・フレッシュルース・レンデル アフォンソ・ベアト ホセ・サンチョ

おすすめ平均
stars在庫切れとは…!
starsやっと出た!

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2006年02月21日

「カリフォルニア・ガール」

サイレント・ジョーがわりと面白かったので、読んでみました。

この空気感はアメリカ人にはたまらないんじゃないか、と思いました。
1960年あたりから現在までの、カリフォルニアが舞台です。
澄みわたる空、オレンジの香り、ビーチ・ボーイズやビートルズ、虐待、激化するベトナム戦争、それらの連鎖が織りなす不安定な社会。

そういった背景の中、子ども時代を良く知る女性が被害者となる猟奇殺人が起こる。
ミステリですが、家族の話でもあり、感慨深い仕上がりになっています。

カリフォルニア・ガール
カリフォルニア・ガールT・ジェファーソン・パーカー 七搦 理美子


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2006年01月15日

「ボトムズ」

2000年に発表され、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した作品です。
著者の作品ははじめて読みましたが、これはかなり好みでした!

ミステリだけど、それよりも、アメリカ南部の生活が子どもの目を通して描かれているところが良かった。面白い時代小説としても読めます。

事件そのものは、現代は当たり前のようになってしまった、猟奇的な殺人事件です。が、その時代背景が、良い感じで事件を包み隠していているのです。

科学捜査もプロファイリングもない1930年代。
舞台はテキサス東部。
当時11歳の少年だった主人公は、9歳の妹と犬を連れていつものように森へ入り、惨殺死体を発見してしまう。

人種差別が日常的だった当時、それがどんな風だったのか、日常として描かれています。
警察機構のようなものも、ちゃんと存在しているとは言えないラフな時代、人種差別に違和感を抱いていたとしても、社会全体の大きな流れの中ではどうしようもないと、ほとんどの人が思っている、そんな時代です。

本書は老人の回想として語られるのですが、その老人がベッドの上で少年時代を思い起こし、目が覚めたらあの頃に戻っていたいとまどろむラストシーンは、胸に迫るものがありました。

ボトムズ
ボトムズジョー・R・ランズデール 北野 寿美枝

おすすめ平均
starsちょっと長い。
stars玄人受けの作家 ランズデール

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2006年01月14日

「獲物のQ」

著者は、スー・グラフトン。
本書の主人公でもある、キンジー・ミルホーンのシリーズで既に19作発表されていますが、私は今回初めて読みました。

なかなか面白かったです。
読み始めは違和感があったけど、読み進むにつれ、登場人物に親近感を覚えていきました。主人公の生い立ちにも興味深々。シリーズ前半のものも読んでみたくなりました。
これは人物がよく描かれているからですよね。
そういう面がないと、やはり入り込めない。

事件は、18年前に起き、迷宮入りになっていた少女惨殺事件。
実際の事件がモチーフになっており、司法複願されたものの写真が巻末に載っています。
その写真と、アメリカの小さな街でそこら中の人が知り合い同士という環境、開発が中止になった廃墟のまわりには、コヨーテが徘徊しているというような、うすら淋しい土地の描写。

これらが渾然となって、自分がその中に入り込んだような"近い"感じがするのです。派手さはないけれど、ジミな感じがかえってよい味になっていると思いました。

獲物のQ ハヤカワノヴェルズ (Hayakawa novels)
獲物のQ ハヤカワノヴェルズ (Hayakawa novels)嵯峨 静江

おすすめ平均
stars現実のジェーン・ドゥ、18年目の解決なるか

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2005年12月24日

「神の手」

コーンウェル、「検屍官」シリーズの最新作です。
前作を読んでからかなり時間が経っているので、超期待!
まぁ、最初の頃に比べるとやや落ちますが、それなりに楽しめました。
これはシリーズものの強みですね。
やはり、コーンウェルも絶賛、だとか書かれた他のミステリとは比べ物にならないクオリティはあると思います。

本を読むとき、私はいつも「配役」を考えてしまうのですが、このシリーズで悩ましいのは、脇役のマリーノです。
すごく味のある登場人物なので、良い役者じゃないとと思うんだけど、思い浮かばない。強面でガサツな大男、でも付き合うと憎めない可愛さがあって、頭は切れる・・・。

日本の俳優だけでなく、アメリカも、味のある役をこなせる、ほんとにすごい役者って、みんな年とっちゃったなぁと感じるのですが、若手を私が知らないだけなのかな〜。

神の手 (上) (講談社文庫)
神の手 (上) (講談社文庫)相原 真理子

おすすめ平均
starsシリーズ14作目
stars乞う新作!
stars原点に戻って
starsもはやミステリーにあらず!?
starsこれってあり? な犯人の正体・・・

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2005年11月20日

サーペント・ゴッド

めったに読まない、"ホラー"を読んでみました。
スティーブン・キングに絶大な影響を与えたと言う、ジョン・ファリスです。

私はホラーや、スプラッター的なものはあまり好きではないのですが、これはけっこう楽しめました。ジャンルって言うのは二の次なんだなぁと改めて実感。

第二次大戦下のアメリカ、南部の富豪でもある将校が、弟の結婚式のため故郷へ戻ります。
しかしその式の最中、鳴らすのを禁止されているはずの教会の鐘が鳴り響き、突然狂気にに陥った弟は、腰に帯びていたサーベルで花嫁や父親を惨殺、あげく、自らその剣を呑んで壮絶な死をとげる・・・。
この惨劇に始まる謎は、アフリカ奥地にまで遡ります。

現代のミステリにはあまり感じることのない、ある種の"雰囲気"とでも言うか、漂う空気のようなものがなかなか魅力的でした。
アメリカ南部の暑さやけだるさ、上品な登場人物、貞淑さと妖艶さをあわせ持つ女性・・・。

現実として、街や人、漂う雰囲気にも、時代とともにミステリアスな部分はどんどん殺ぎ落とされて来ているんだろうなぁ、などと言うことを思った小説でした。


サーペント・ゴッド
4150404712工藤 政司 ジョン・ファリス

早川書房 1987-11
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2005年10月23日

「凍れる森」

以前書いた、「沈黙の森」の、シリーズ第二弾です。
「沈黙の森」は映画にして欲しいなぁなんて思ってたけど、ブルース・ウィリスが映画の権利を獲得したのだそうですね。
うーん、そうか。ハリウッドっぽい映画になりそうな話だもんな。
個人的には、自然の美しさを全面に出した、渋めで人間が描かれている、だけど冒険ミステリ、みたいな、よく知らないけどこの人いいじゃん、的な俳優を使ったものが良いなと思ったんだけど・・・。

それはともかく、大自然を背景にした猟区管理官が、またしても難問に立ち向かうお話です。
いわゆる深みのあるタイプの小説ではありませんが、家族への愛情や自然を見つめる目などに正当な見識のようなものがあり、そういう面では安心して楽しめます。

今回も、子供が良いです。前作のように、直接事件には絡んできませんが、少し大きくなった長女の責任感や思いやりがとてもかわいい。
それに、FBIを含めた、"お役所"のいやらしさ、汚さがめいっぱい味わえます。
TVのドキュメンタリー番組などを観ていると、この汚さは、あながち絵空事ではないと思えて、それを普通にミステリだの映画だのにしているアメリカと、日本の違いを感じたりして・・・。

その他、脇役で登場する、鷹匠のネイトという人物がなかなか凄みがあって素敵でした。
著者の作品、こういったシリーズも良いけど、動物と人の係わりをじっくり描いたものが読んでみたい気がします。

凍れる森
4062752190C.J. ボックス C.J. Box 野口 百合子


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「サイレント・ジョー」

幼い頃に実父に硫酸をかけられ、顔に酷い火傷痕を持つ保安官が、恩のある養父を眼の前で殺され、その真相を追うミステリです。
ストーリーも面白いけど、主人公はじめ、登場人物が浮ついてなくて、いい感じでした。

そしてその主人公が実に良いんですよ。
彼の、"強さ"みたいなものが、全編を引き締めている感じで、心地よい緊張感がありました。

驚くのは、ひどい傷を持つ主人公の、一人称で書かれていることです。
じっと見るだけで相手を恐がらせる、そんな風貌の青年の心が、淡々と、率直に書かれていて、すっかり引き込まれてしまいました。
多分、控え目な感じが、ほんとっぽいのかも知れない。
子供時代の施設のシーンなど、特に印象的でした。

好きになった女性と会うシーンなど、その心理の描写はなかなか面白かった。しかし、その場面で水に飛び込むシーンは、どうなんだろう?
アメリカ流のサービスなんでしょうか。
それでもいいんだけど、ありがちな感じで、ちょっと引きました。

サイレント・ジョー (ハヤカワ文庫 HM)
サイレント・ジョー (ハヤカワ文庫 HM)七搦 理美子

おすすめ平均
stars醜い異形の者を主人公にしたにしては中途半端
starsストイックな主人公、重厚なストーリー
starsエドガー賞に輝く、ハードボイルドな、“若者の成長物語”
stars新タイプのヒーロー誕生。

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2005年09月25日

「リプレイ」

若くして成功している人や、しっかりした人生を歩んでいる人を見ると、「この人、人生二度目に違いない」などと私は思ってしまいます。
きっと、人生二度目の人だけにわかるテレパシーみたいのがあって、その人たちだけでコミュニケーションとれるに違いない。

これは、「人生のやり直し」がもし現実になったら、嬉しいかもしれないけどけっこうキツいよな、と言うところからの発想なのです。
だって、今現在の知識や考え方を持ったまま、もし中学生とか高校生に戻っても、友達づきあい、しんどいだろう?と感じるわけです。
時代も遡るから、金銭的な成功や、自己実現などはできるかも知れないけど、きっと孤独だろうなぁと。

でも、人生何度目かの人が何人もいて、その人たち同士でコミュニケーションとれたら、それはそれで楽しい人生が歩めるのかも・・・。

こんなことを考えるようになったのは、この本の影響です。
43歳から18歳に戻って、何度も人生を繰り返した男の話を、味わってみて欲しい。
かなり印象的です。

リプレイ
4102325018杉山 高之 ケン・グリムウッド

おすすめ平均
stars人生は一度だからすばらしい
stars私の生涯でベスト3には入るSF小説
stars葛藤と悲哀、そして・・・
stars43歳になったら再読しようと決意!そして今年43歳・・・
starsまずは手にとって読んで見て下さい

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2005年08月08日

「報復」

「P.コーンウェルも裸足で逃げ出す」とか、「全国の書店員から熱い賛辞」だとか、たぶん、多くの人がそうだと思うのですが、私も帯に書かれていた文句が気になって読んだクチです。
どうも宣伝に乗せられやすい・・・。

率直に言って、コーンウェルほどの出来じゃないと思いました。
面白いことは面白いのです。ページを捲らされてしまうし、前半はとにかく恐い!
犯罪被害者が抱える、どんなに時間が経っても癒えることのない傷について、主人公を通してこれでもかと書かれているあたりは、とても共感を覚えました。

どうせなら、被害者と加害者の人権や、冤罪にまつわる正義に焦点をあててそれに重点をおいた方が、読み応えのある話になったんじゃないかと思いました。

著者はこの小説の主人公さながらの経歴の持ち主だそうですが、その割には、法廷シーンはちょっと迫力不足だったような・・・。
それに、バランスの悪さが目立ったような気がします。
前半、あれだけページをさいてレイプの経緯を書いているのに、犯人と目される男が捕まった後は、捜査や証拠についての詳細が少なくて、もっとウラを取らなくて良いのか?などと、余計なお世話なんだけど、気を揉んでしまいました。

そういう意味では惜しいかも。
主人公をはじめ、まわりの女性達、仲間の捜査員達など、人物がとてもよく書かれていて愛着がわきます。まぁちょっと、相手役の捜査員はよく書かれすぎていて、著者はロマンス系を目指しているのか?と。
これが初めての小説だそうなので、次回作に期待、というところです。

報復
4789724166ジリアン・ホフマン

おすすめ平均
starsノンストップサスペンス!
stars大袈裟な宣伝文
starsなかなか良かった
starsキャッチコピーにだまされた
starsラストに向けて一気読み

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「沈黙の森」

「新ヒーロー誕生」とアメリカで絶賛され、新人賞を独占したというミステリです。
アメリカほど日本で盛り上がるかと考えると、「?」だけど、なかなか面白かった。

きっとアメリカ人には、ワイオミングの自然と動物、そこでの生活に対する郷愁のようなものを、誰もが持っているのかもしれない。
アメリカのミステリは、やはり都会を舞台にしたものが多いと思いますが、アメリカは広い。
たいていのアメリカ人は田舎に住んでいるわけですものね。
それは別にしても、雄大な自然や動物、それに係わる普通のお父さん、そしてミステリというこの方向性は当たりだったのですね。

この物語は、ライフルの音から始まります。
生き物に当ったときの音や、はずれたときの残響など、聞いたことがなくても聞こえるような気がして、1ページ目から話に引き込まれました。
猟区管理官である主人公の生活も、昔から猟をすることが日常だった土地に住む人々も、そこで巻き起こる陰謀も新鮮でした。

これは、映画にして欲しいな〜。
自然をたっぷり、そこの生活をたっぷり見せてもらいたい。
その上でミステリであれば、すごく面白い映画になるんじゃないかな〜、などと一人思っております。

沈黙の森 (講談社文庫)
沈黙の森 (講談社文庫)C.J. Box 野口 百合子

おすすめ平均
stars愛する家族のために敢然と立ち上がるジョー
stars苦手なタイプの主役
starsハリウッド映画(特に西部劇)が好きなら楽しめる
stars「家族」を考えさせられる小説
starsノスタルジックな勧善懲悪モノ

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2005年08月06日

「クリスマスに少女は還る」

うーん。
印象的ではありましたが、面白いとは思えなかった。

この長さ(長めのどっしりした小説が好みなので)と、泣けるような衝撃と感動のラストらしいこと、巧緻を極めたプロットらしいこと、などと、解説での絶賛ぶり、おまけに出だしの文章が、なかなかいい感じだったので、これは間違いないだろうと思ったのですが。

登場人物の誰にも感情移入できなかったし、ワケありそうな人の、そのワケがもうひとつ詳しく語られておらず、消化不良のような感じが残りました。
どの人物も、受ける印象が後に変ってしまうのです。
その変化が面白みに繋がるよりは、都合よく変えられた風で、人としての一貫性が感じられず、イライラした読書となってしまいました。

クリスマスに少女は還る
4488195059キャロル オコンネル Carol O’Connell 務台 夏子

おすすめ平均
stars傷の深さゆえ快復が美しい
stars余韻を残すミステリー
starsラストよりもエピローグに愕然
stars消えた少女たちの生還劇
stars残ります・・・

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2005年07月22日

「荊の城」

サラ・ウォーターズ、「半身」と「荊の城」のまだ2作しか出てないけど、けっこう気に入っています。
舞台設定と恋愛が絡む部分で、好き嫌いはあるかも知れませんが、出来は良いと思います。

舞台は19世紀のロンドン。
「半身」では、この時代の暗さや抑圧、堅苦しさがいい味となっていて、神秘的な美しい女囚に惹かれる主人公の心理と、見事にマッチしてました。

「荊の城」の方は、それほどの暗さはありません。
そのかわり、下町での猥雑で不潔な暮らし、精神病院など、下層階級の人々の生活がしっかり書き込まれています。
ストーリーだけでも、ぐいぐい引っ張っていかれるのに、登場人物の生活や経験する世界の雰囲気にすっかり呑まれる感じです。

どちらの小説も、映画で観たわけでもないのに、なぜか映像で記憶しています。
時代がかもし出す美しい情景は、好きな人にはきっとクセになると思います。

荊[いばら]の城 上
4488254039サラ・ウォーターズ 中村 有希

おすすめ平均
starsこのミス1位だから万人にとって面白いとは限らない
starsミステリー+変形ゴシックロマン
stars期待には違わない。
starsミステリではないような
starsえっ、エッ、うーーーーーんっ

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半身
4488254020サラ ウォーターズ Sarah Waters 中村 有希

おすすめ平均
starsしどいよしどいよ
stars面白かったんだけど
stars文学作品として読んでみて。
stars19世紀英国の独身女性の孤独が胸を突く
starsすごく損した気分

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2005年07月14日

「神の名のもとに」

処女作の「凍りつく骨」でアガサ賞、第二作の「処刑前夜」でMWA最優秀長編小説賞を受賞した、メアリー・ウィリス・ウォーカーです。

第三作である本書では、ハメット賞、アンソニー賞、マカヴィティ賞のトリプル受賞だそうです。
すごいですねー。

カルト教団の話だというのと、大げさなタイトルに引き気味だったのですが、帯に、宮部みゆきの、「涙を抑えることができなかった」という感想が書いてあったので、思わず手にとってしまいました。

カルト教団にスクールバスを襲撃され、世界が滅びる日の生贄として、子供たちと運転手が連れ去られるところから、物語は始まります。
地下に閉じ込められ、いずれ殺されるという絶望の中で、子供たちの恐怖を紛らわせるために、唯一の大人である運転手は、毎日少しずつ、「お話」をします。
最初は、ふーんと思って読んでいたけれど、だんだんその「お話」に引き込まれていく。そして、そのお話が、彼の過去と深く係わっていることがわかってくる。

来るべき日=生贄にされる日に備えて、運転手の指示の元に子供たちがとる行動と、そこに生まれる絆は、けっこう熱いものがあります。これだけの話だったとしても面白く読める。
人間は、こういう話に泣けるように出来ているんですよね。
わかっていても、ティッシュを手放せませんでした。

終盤、救出側の作戦で、その道のプロとして出てくる女性がまたかっこいい。
脇役で出てくる、百戦錬磨の犬も良いです!

神の名のもとに
4062630060メアリ・W. ウォーカー Mary Willis Walker 矢沢 聖子

おすすめ平均
stars人の強さ弱さ
stars最初のレビュー

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2005年05月31日

「最後の審判」

この人の本を読んでいつも思うのは、「なぜこんなに"女性"が書けるのか」、と言うことです。
最初に読んだときは、あれ、書いたの女性だったっけ?と表紙の著者名を何度も確認してしまいました。

うまいなぁ、というのが正直な感想です。
話の筋でぐいぐい持っていかれますが、人物もうまく書かれていて、飽きることなく、安心して読める。
ミステリ中毒症が出たら、しばらくは頼ることになりそうです。

↓下段の「子供の眼」はかなり面白かった。
まだ著者を読んでないという方は、ぜひ子供の眼を読んでみてください。

最後の審判 (上)
4102160175リチャード・ノース・パタースン


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子供の眼〈上〉
4102160132リチャード・ノース パタースン Richard North Patterson 東江 一紀

新潮社 2004-01
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おすすめ平均 star
star恋って楽しいけど,愛ってツライ…
starネクスト・ジョン・グリシャム
star母と娘、父と息子。

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2005年05月26日

「ダヴィンチ・コード」

こんなに騒がれたら、もう読まずにいられません。
まず結論から書きましょう。
噂どおり、面白かった!

しいて言えば、自分のキリスト教に関する知識のなさが残念。
でも、知識がなくても面白く読めます。
これだけ薀蓄たっぷりなのに、くどさもなくて、ワクワクハラハラさせてくれます。
逆に言えば、読みやすいミステリーなのに、薀蓄が面白い。
その薀蓄が、ストレートに謎に絡むので、興味津々のまま読み進むことが出来るのです。

関連本がたくさん出てますが、それもわかる!
だって、もっと知りたくなりますもん。
欧米の小説を読むとき、宗教的な背景が重要な役割を果たしているのに、そこが日本人である自分には、感覚としてピンと来ない、と感じることが、ままあります。

この本の場合は、精神面を掘り下げる話ではないので、その辺はあまり気にはなりません。
けれど、世界中でベストセラーになったのも、キリスト教の歴史を謎として取り上げたと言う、大胆さのなせる業なのだなと感じました。

トム・ハンクスで映画化されるそうです。
ちょっと違う気もするけど、トム・ハンクスなら許せるかな。

4047914746ダ・ヴィンチ・コード (上)
ダン・ブラウン 越前 敏弥

Angels & Demons ダ・ヴィンチ・コードの謎を解く 世界的ベストセラーの知的冒険ガイド ダンテ・クラブ デセプション・ポイント 上 デセプション・ポイント 下

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