2008年10月12日

「合葬」

杉浦日向子、やっぱりすごいなぁ、と久々に読み返してため息です。

彰義隊の隊員3名に視点を据えて描かれた、滅び行く江戸。
切ないんだけど、清々しくもある。
で、なんだかすごく"近い"感じがするのです。

昔に比べて、今の若者は幼いとよく言われるし、実際そう感じもする。
けれど、若者の本質は、時代や風俗が変わっても、同じなんだなぁと、当たり前かもしれないけれど、思いました。
そんな普遍性が、この漫画の到達点を高くしているのかなと。

始まりの、旗本の家へ従者が駆け込むシーンから、とても印象的です。
形式や体面を重んじる武家の感受性がある一方、散切り頭が流行り、ちょんまげを二分で売ってしまう学生もいるわけですよね。

後の時代の我々が傍観している中で、事態は切迫し、にっちもさっちも行かなくなっていく。そして、明るく生きている若者たちは、家や主君、未来、自分の夢をかかえつつ、あっさりと散ってしまう。
ある意味、時代に絡めとられていて、そのあたりが妙に若者らしい。そして悲しい。

著者は20代半ばで、これを描いてますけど、若いからこその着眼点なのかな。
いや、でも他の作品からも似た香りは立ち昇っているので、そういう目を持った人だったのですよね。タイムトラベラーなどと呼ばれる所以かな。

合葬 (ちくま文庫)合葬 (ちくま文庫)
杉浦 日向子

筑摩書房 1987-12
売り上げランキング : 15002
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タグ:杉浦日向子
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2007年02月07日

「とりぱん」

漫画自体はそう好みじゃなくても、気になる野鳥のことが少しわかるんなら・・・、ぐらいの気持ちでした。
が!
いや〜、気に入りました!

そして当然のことながら、野鳥に対する興味も倍増しました。
さっそくスーパーで牛脂を手に入れて、ぶらさげております。←おわかりにならない方は、ぜひ本書をお読みください!

その野鳥もとっても良いのですが、それ以上に作者の世界観のようなものに惹かれました。
"生活"って、自分自身のものなのに、ふと気が付くと、人と比べることばかりに一生懸命になってたり、情報に踊らされてたり、どうも何か見失ってるような気がしたり・・・、誰でも少しぐらいは感じる、そんなところ、そこをね、ツツかれますよ!

上滑りすることのない、地に足の着いた自然とのかかわり方が、とても心地よいです。

とりぱん 1 (1)
とりぱん 1 (1)とりの なん子

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stars3Dの視点から
stars癒される
starsルナール『博物誌』のマンガ版なのかも
starsとりといっしょの日常
stars期待込めて

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2006年11月12日

「DEATH NOTE」

「正義を語る人は傲慢」という言葉が、たしか"マーフィーの法則"にあったなぁ、などと思いながら読了しました。

けっこう面白く読めました。
「正義の裁き」という大きなものが控えているだけに、この手の物語は、どっちの方向へもって行っても、読者の反応は賛否両論なんだろうなぁとも感じつつ。

アクションものに慣れた男の子には、文字の多さに飽きが来るかも、とも思うけど、これを読んで正義だのを考える"きっかけ"になるなら、それもひとつのきっかけですよね。
少年漫画雑誌のセオリーなのかどうかは知りませんけど、主人公の無残な最期は、普通の大人としては好感は持てました。
作品の出来という意味では、少し物足りなかった感もなくはないです。

この漫画のウリは、発想と作画なのかな。
"デスノート"について、ちょっと耳に挟んだら、「何々?」と興味を書き立てられるようなものがありますよね。

そして絵の綺麗なこと。
もし絵が綺麗じゃなかったら、こんなに人気が出たかな?と思えたほどです。

DEATH NOTE (1)
DEATH NOTE (1)大場 つぐみ 小畑 健

おすすめ平均
starsお勧めです☆
stars漫画の枠を超えた
stars知的で危険な「死」のゲームにぞくぞくさせられる
starsようやく読みました
stars日常に退屈している者たちへ贈る

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2006年02月12日

「蟲師」

土曜日の夜中にアニメやってますよね。
友達の熱烈おすすめにあったので、録画して観てみました。
うん、なかなか面白かった。
で、本も借りて読んでみた。
本とアニメのギャップがなくてどっちも楽しめました。
特にアニメは雰囲気が良くて、ものによっては(短編連作なので)アニメの方が出来が良いかも、という気がしました。

「蟲」というものが、なかなか面白いです。
妖怪や魑魅魍魎というほど意思的な感じじゃなくて、植物に近い。けれど、人に絡むと困ったことが起こる。
それを、蟲師である"ギンコ"が駆除(?)するという話です。
時代も場所も特定されていない、どこかの鄙びた山里などが舞台で、余計な音がなく、静かに淡々と話がすすみます。
少しぞっとする話もなくはないけど、怖いというほどでもない。蟲自体は気持ち悪くなくはないのに、後味は悪くないです。

全編を通して感じられるのは、「蟲」に対するやさしさのようなもので、"ただ生きているだけ"なのに、という主人公の台詞も出てきます。
人間の驕りを拒否しているところが、人気の秘密のひとつなのかな、と思いました。

蟲師 (1) アフタヌーンKC (255)
蟲師 (1)  アフタヌーンKC (255)漆原 友紀

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stars
stars無数の生命原生体そのもののことを…。
stars物語が心に溶け込みます
starsこれは見るべし!
stars不思議な世界観、だけど現実味がある

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蟲師 其ノ壱
蟲師 其ノ壱漆原友紀 長濱博史 中野裕斗

おすすめ平均
stars世界観

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タグ:漆原友紀
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2005年11月28日

「秋日子かく語りき」

NHKで連続ドラマになっててびっくりしました!
ドラマか〜。大島弓子が・・・。

大島弓子は、大好きな作家のひとりです。
少女っぽいふわふわした絵と、心理描写が何ともいえない雰囲気を醸し出していて、その雰囲気に巻き込まれているうちに、最後はすごく遠くまで連れて行かれるような感じなのです。

エキセントリックな女の子の、とっぴな行動の真に迫った感じや、周りの普通の人々に誤解されていく課程など、こんな風なことを表現できる人がいるんだというだけでもびっくりしてしまう。
ちょっと変わった、けれども純粋な主人公と、その親友というような形で登場する、助演女優賞ものの才媛がまた良いんですよね。
この全く違うタイプの人間を、ひとりの人が書いてるんですよね〜。

この「秋日子かく語りき」は、交通事故で生き残った少女が、同じ事故で死んでしまったおばさんに、1週間だけ命を貸すという設定です。
おばさんは、少女の身体を借り、思い残したことをやってしまおうと奮闘する。

・・・と、こんな風に書いていて、いかにもドラマになりそうな話だと思えてきました。

原作は短編だし、ラストの濃さやモノローグから、もっと"読書的"な印象を持ってました。
どんな話だと聞かれて、ストーリー以外を説明するのはとても難しいけれど、哲学的だし、輪廻転生の話でもあります。
ドラマで興味を持った方、是非大島作品の、ドラマには(多分)ない、深くて柔らかな世界を経験して欲しいです。

秋日子かく語りき
4048537083大島 弓子

おすすめ平均
starsドラマの方が面白かった
stars某公共放送の作品は問題外!
starsテレビでドラマが始まったのを機に、コミックを購入しました。
starsなんで

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2005年10月13日

「陰陽師」 13

とうとう完結しましたね〜。
待つのが長かったこと・・・。
通常、完結して全巻出揃ってから一気読み、というのが私のパターンなのですが、陰陽師に限っては、10巻出たところで、勘違いして買っちゃったんですよね。
そしてハマった。

で、待ちに待った完結編。
でも、私にはなんだかよくわかりませんでした・・・。
何かが起こってるんです。とてつもないことが。それだけはすごーくわかるんです。でも、何?という・・・。

最初の方は、巻末にある解説のようなものも、食い入るように読んでたのが懐かしいです。
好みから言えば、原作に忠実と言われる前半の方が好きかな。
それでも11巻ぐらいまでは楽しんだんですけどね。
きっとまた、1巻から読み直すことになるんだろうなぁ。
でも読み直しても、わかるような気がしない・・・。

それでも、この独特の絵とギャグ、堪能しました。
この漫画読んで、清明に惚れる女の子が多いようですが、きっと書いてる本人も惚れてるなぁと思いつつ読みました。
もちろん、私も惚れてますが。

陰陽師 13 (13)
4592132335夢枕 獏 岡野 玲子


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2005年08月20日

「絶対安全剃刀」 − 高野文子作品集

私は、この人は天才じゃないかと思っています。

この「絶対安全剃刀」は著者の初の作品集です。
収録されているものは、どれも味わいが違っていて、それぞれにとても印象的です。

中でも、「田辺のつる」を読んだときの衝撃は忘れることができません。
年老いて、幼い少女のようになってしまった"つる"の重い人生が、意外な形で、認知症の老人特有の連想ゲームのような、僅かなセリフのみで、生々しくたち顕れてくるのです。

いやー、これはちょっと言葉では表せない。
実際に読んでみてください、としか言いようがないです。

独特の愛らしい絵も、ハマります。
これがまた、すごーく巧い。
"つる"に関して言えば、階段を下りる後ろ姿が、幼女の姿かたちで描かれているにも係わらず、老女以外のなにものでもないのです。

高野文子を思い出すと、なぜかセットのように「世界観」と言う言葉が浮かんできます。
たぶん、世界観と言うものを意識したのと、高野文子を知ったのが同じくらいの時期だったからかも知れません。

絶対安全剃刀―高野文子作品集
4592760166高野 文子

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stars高野文子は怖いひと
stars胸がどきどき
stars人生を犠牲にしないマンガ生活
stars絵と言葉の繊細さに漫画のさらなる可能性を感じる
stars遠くから会ってみたい人

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タグ:高野文子
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2005年08月14日

「凍鶴」

上村一夫を初めて読んだのが、この「凍鶴」でした。
濃い目の絵と、独特の雰囲気。
なんだか、読まなくては!と思わせるものが漂っているんですよね〜。

「凍鶴」は、昭和初期の、"仕込みっ子"と呼ばれる、貧しさ故に置屋に売られてきた少女の話です。
貧しさから自分の娘を売るのって、どの程度当たり前だったんだろう?
時代劇や歴史ものを読むと、ついそう思ってしまいます。
戦争中にも、「からゆきさん」などがあったし、そんなに大昔の話ではないんですよね。
それはともかく。
そうやって、30円(!)で売られてきた"つる"は、したたかに生きていきます。このしたたかさと、心理が見事に描かれています。
連作短編の形ですが、ひとつひとつの物語に余韻があります。

で、ちょっとハマって、「一葉裏日誌」を読みました。
「一葉裏日誌」のほか、「うたまる」、「帯の男」の3篇が収められていますが、どれも秀作でした。

「帯の男」は、どうしても高倉健さんに見えてしまって…。
それに、主人公の帯師とお涼さんの関係が、なかなかいい。
こんな関係、ちょっと憧れる…。
ま、健さんに見えてるからかも知れないけど。

凍鶴
4091921620上村 一夫

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stars職人の描く人間ドラマの傑作

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一葉裏日誌
4091921612上村 一夫

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stars情念と洞察力の世界

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2005年08月13日

「百日紅」

杉浦日向子を知ったのは、この漫画でした。
まず、本の装丁にやられた。
中身を読んだら、とりこになりました。

なんと言ったらいいんだろう?
肌ざわり、とでも言うのか、感覚的に刺激される。

たとえば、水を張った盥に足をつけている人がいる。盥には小さな金魚が泳いでいて、足の影が底に映っている。
もう、見入ってしまいます。冷たい水、夏の日差し、風鈴の音まで聞こえるような気がする。

そして、女たちの色気と妖気。この人の絵は、男よりも女が良いです。独断ですが。

葛飾北斎とその娘、まわりの人々、この世のものならぬものたちが棲む江戸が、乾いた筆で描かれていて、大好きな漫画です。

百日紅 (上)
4480032088杉浦 日向子

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stars北斎が活躍していた1814年の江戸の町に出かけてみませんか?
stars大げさではなく、冗談でもなく、
stars北斎を中心にしたお江戸人間模様
starsお江戸の空気
stars北斎を取り巻く風景

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2005年08月11日

「風と木の詩」

多分、食わず嫌いしてる人多いんじゃないかと思います。
私もそうでした。"少年が主人公の同性愛の少女漫画"、と聞くと、やっぱちょっと引いちゃって・・・。
でも、それで読まなかったらめちゃくちゃ損です!
これは名作だと思います。

これを書いた当時、竹宮恵子はまだ20代半ばかな?
どーしてそんな年でこんなのが描けるんだ?
しかも、当時の少女漫画の世界は、メロドラマ系がほとんどでしょう?
これを描きたいがために、いろいろ工夫をして、描きたいものを描かせろ的なところまで環境を整えた上で発表したそうです。
この時期の漫画家って、天才肌な人、多いですよね〜。

この話の主人公のひとりは、しつけも何もいっさいなしで歪んだ愛情のみを与えられ、勝手に大きくなった「育てられなかった」子供です。
そんな子供が、社会的にきちんと育てられた素直な少年と出逢う。

少年同士の愛の物語ですが、それだけでは捉えきれない大きさがあります。これ、もし文字で書かれていたら、なんとか文学賞とかとって超有名&高尚なものとして記憶されたのではないかと思います。

風と木の詩 (1) (中公文庫―コミック版)
風と木の詩 (1) (中公文庫―コミック版)竹宮 惠子

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stars続編があります
stars傑作!!
starsジルベールが女の子なら☆5
starsただただ、涙が流れてくるのです。
stars心にくる衝動がある

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2005年06月19日

「百物語」

百物語はいっぱい出てますが、これは杉浦日向子版の漫画です。
一遍一遍はすごく短くて、一見どうと言うこともないような話なのです。
が!
その民間伝承的な、そこはか〜とない恐さに、徐々にやられます。

けれど、恐いだけじゃない。
寂しくもあり、切なくもあり、不思議で不安。

きっと昔は、もっと暗かった。いや比喩ではなくて、本当に暗い闇があったはず。
そこに棲むものも、きっといっぱいいたのだと。

もし、そういうものたちを実際にリストアップすることが出来たら、絶滅危惧種ばかりで真っ赤なリストができるのかも・・・。

小泉八雲と同じくらい、好きな本です。
これから蒸し暑くなってくるし、読むには良い季節です。

百物語
4101149135杉浦 日向子

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stars美味しい漫画
stars日本情緒
stars凄い!
starsじわ〜っと怖くなります。
stars結局怪異とは自分の中にいるのだな

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