2010年03月14日

「ハチはなぜ大量死したのか」

ミツバチの、大量死(大量失踪)の謎を追うノンフィクションです。
が、謎解きにとどまらない面白さでした。
行き着く先が非常に興味深いのです。

まず、養蜂家がハチの大量失踪に気付くところで幕が上がります。
その後、日ごろ私たちが、どんなにミツバチにお世話になってるかを知り、ミツバチの生態を知り、人に利用されるようになったハチたちの様子、利用する商業養蜂の様子など、順を追って知ることになります。
そして、ありとあらゆる"犯人"が出てくるものの、決定的な証拠は挙がらない。

けれど、ミステリ小説ではありませんから、オチは要らないのです。謎を追うことから、人間の営みを振り返り、掘り起こして辿り着くのは、今の世の中のイビツさ。
バランスや多様性は、環境問題を考える上で大切な要素だと思いますが、私たちが便利に効率よく生きるために、今までなしてきたこと・・・、それを思うと、ちょっと背筋が寒くなる。そんな内容の本なのです。

ミツバチ、私は蜂蜜とかプロポリスとか、そういう生産物しか連想しなかったのですが、受粉という大きな仕事があったのですね。そして、勤勉なミツバチがいなければ立ち行かない農業のあり方が、現代農業の姿でもあるのですね。
正直なところ、受粉作業をハチに頼っている生産形態があること自体、私には驚きでした。人工授粉してるんだろうぐらいに思ってた。
ハチでなければならない理由があるからハチなのですが、自然の摂理に逆らった方法を、自然界で生きる物に頼っている。そこに生じたゆがみは、一見問題ないように見えていても、実は根が深いのだと、本書を読み進みつつ、じわじわと感じることになりました。

環境問題を経済という視点で見ると、対症療法的な解決策では片付かない、根深い問題が見えてきます。
大規模農業の問題については、丸元淑生さん著の「何を食べるべきか」にも出てきますが、ハチに限らず、世界全体で起こっていることは、経済効率を優先させるために無視してきた、または気付かなかったあれやこれやが、臨界点に達しているということなんでしょうか?

原題は「Fruitless Fall」。「実りなき秋」ですが、これはきっと、わざとカーソンの「沈黙の春」を意識してつけられたのでしょうね。

ハチはなぜ大量死したのかハチはなぜ大量死したのか
中里 京子

文藝春秋 2009-01-27
売り上げランキング : 6854
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2009年09月20日

「タヌキのひとり」

何度も読んでしまいました。
まず、飛び込んでくるたくさんの写真から目が離せなくなります。
甘える鹿、自慢げなタヌキ、風格漂うキツネ等々、常に動物と接しているからこそのショットがたくさんで、動物好きには写真だけでも大満足です。
ここに紹介されているのは、著者の活動のほんの一部で、また日常でもあるわけですが、日ごろ野生動物と接することのほとんどない私には、へー!や、は〜♪の連続でした。

そしてシンプルに綴られた日常の中から、野生動物と人間との共存の問題点、保護した動物を野生へ返すことの難しさなどが滲み出してきます。すごく可愛い、というのと、野生動物にまつわる苦しい状況を作り出した側に自分がいるというのとの、板ばさみのなんともいえない気分になりました。

著者は獣医で、野生動物の保護や治療に無償で取り組んでいる一方、「キタキツネ物語」の企画、動物監督をはじめ様々な動物番組の監督、著作をされているようです。
映画は観たことがありますが、企画者がどのような人なのか全然知りませんでした。
本書の文章もシンプルで良かったけれど、もっとしっかり書かれた著作もぜひ読んでみたい。この押し付けがましさの全く無い、淡々とした文章の奥にあるものを、もっと読みたい、と思うのです。

タヌキのひとり―森の獣医さんの診療所便り (とんぼの本)タヌキのひとり―森の獣医さんの診療所便り (とんぼの本)

新潮社 2007-03
売り上げランキング : 317300
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:動物

2008年11月24日

「森の野鳥を楽しむ101のヒント」

野鳥に関する雑学101項目、という本です。
1項目見開き2ページで読みやすく、野鳥初心者の私には、知らないことばかりで、とても勉強になりました。
鳥の研究者をはじめ、多くの関連の方が執筆されていて、色んな角度からの情報が詰まっているのです。

例えば、卵ばかりが印象にあるウズラは、野生ではまず見られない幻の鳥になっている、とか、タカ類の巣の近くで小鳥が繁殖しているなど、えっ!と思うことがたくさん。

ひとつひとつの項目は、2ページで終わるだけに深く追求したものではないのですが、それだけに素人にはわかりやすい。
特別「野鳥」に興味がなくても、面白く読めると思います。
最後の101項目目は、「さらに勉強したい方のために」というタイトルで、参考図書がたくさん載ってます。

この本、財団法人「日本林業技術協会」編、となっています。
裏表紙を見ると、100の不思議、101のヒント、というタイトルで色んな本が出ているのがわかりました。
林業技術協会ですから、森や虫、土、里山、きのこなどなど。
本書と同じノリなら、他も読んで見たいです。

森の野鳥を楽しむ一〇一のヒント森の野鳥を楽しむ一〇一のヒント
日本林業技術協会

東京書籍 2004-02
売り上げランキング : 409447
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:野鳥

2006年03月14日

「複合汚染」

かなり久しぶりで読み返してみましたが、面白かった〜。
こんな風に、ストーリーテラーと評される小説家が、わかりやすく面白く書いてくれたから、これだけの情報量がすんなり飲み込めるんですよね。

書かれている問題そのものは深刻だけど、何度も「ふふふ」と笑わせてくれるのですから、楽しく読めてしまいます。
そしてしっかり、何がどう危ないのか根本的なところが理解できるようになっている。
はっきり言って、何も食べたり飲んだりできないじゃないか、という気になります。そう神経質になってもしょうがないけど、日々口にする野菜のこと、使う洗剤や石鹸のこと、今読んでも充分役に立ちます。

本書が書かれたのは、約30年前の、今より環境に対する意識が低く、汚染も酷かった頃です。そう思うと、現在はまだしも、と言う気もする反面、30年も経っているのに、という部分も見えてくる。
現在を知る上でも、読む価値が高い本だと思います。

出てくるエピソードはどれも印象的で、ついつい誰かに言いたくなるようなことばかりですが、今回、なんだかしんみりと胸に残ったのは、農協のヨーロッパ旅行の話でした。

「ノーキョー」の団体旅行に参加している農家のおじさんと、著者はパリからの帰りの飛行機で一緒になります。
機内で日本の風習そのままにステテコ姿になっているおじさんに、著者はヨーロッパの農村の話をします。すると、フランスがヨーロッパ第一の農業国だと知らなかったおじさんは、「俺はそっちの方を回りたかったなぁ。街は見なくても良いから、言葉は通じなくてもかまわないから、土だけでも見たかった」と言うのです。おじさんの村では、どうも土が昔と変わってきているんだ、と。

農協の団体旅行は、そのお行儀の悪さで有名になったけれど、彼らは日本の生活を旅先でもやっただけであり、特に望んでパリの街で団体で買い物をしたわけでもないのですよね。なんだか、いびつな日本の農業のあり方が見えるようで、おじさんに同情してしまいました。

複合汚染
複合汚染有吉 佐和子

おすすめ平均
stars今でも変わっていない!
stars環境問題と有機農業
stars公平な視点を!
stars小説の域を超えている
stars現代にこそ、読み返されるべき

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年03月06日

「四億年の目撃者」シーラカンスを追って

すごーく恥ずかしいのですが、私はシーラカンスが60年以上も前に発見されて、今も生きているということを知りませんでした・・・。

この本は、1938年、南アフリカで一匹のシーラカンスが捕獲されたところからの、60年に及ぶ探索の物語です。
インターネットやメールで繋がっている現代と違って、連絡や輸送に気が遠くなるほどの時間がかかる時代、しかもクリスマス休暇という最悪の時期、モノは生もの。

これ、映画にならないかなぁ。
と思う反面、ただでさえ人気(と思われる)シーラカンスが宣伝される結果になると、今生き残っている彼らに悪影響が出るのではないかという不安も感じます。

本書に登場する、スミス教授が圧巻です。
人柄の奇矯な感じとその精力的な仕事、最期、そしてその妻マーガレットのその後は、まるで物語のようです。シーラカンスはさておいても、彼らは魅力的でした。

シーラカンスについてのWebページも解説に記載されていて、そこでは写真や最新情報を見ることができます。→ THE FISH OUT OF TIME

「四億年の目撃者」シーラカンスを追って
「四億年の目撃者」シーラカンスを追ってサマンサ・ワインバーグ

おすすめ平均
starsシーラカンスと学者たちの60年間のドラマ。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:水生動物

2005年07月09日

「地上から消えた動物」

よく名前を聞く動物の名前、ぜんぜん知らない動物の名前、ありとあらゆる絶滅した動物が出てきました。
お話の中の生きものだと思っていたら、ほんとにいて絶滅してたんだ、というようなものも。

たとえば、人懐っこいうえに美味しかったりすると、びっくりするほど繁殖していた種が、びっくりするほど短期間のうちに滅んでしまっている。
1800年代からこっち、人間がどう生きものに係わって来たか、どんな視点で見て来たかについて、数々の動物の絶滅への道程とともに知ることが出来ます。

環境保護だの動物保護だの以前に、人間って横暴だなぁと・・・。
動物保護は、ここ60年盛んになってきているのだそうです。
たった60年なんですね、まだ。

地上から消えた動物
4150500886ロバート・シルヴァーバーグ 佐藤 高子

おすすめ平均
stars文章も知識も大満足!!!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:動物

2005年05月29日

「猫たちの隠された生活」

「ソロモンの指環」をUPしたら、この2冊を思い出しました。
犬や猫の本は多いけど、「擬人化」がひどいものを見ると、頭にきます。
愛しているからそうなってるのかも知れないけど、違うだろ?と思う。
この本は、すべての「猫に興味のある人」に、読んで欲しい本です。

猫の習性にとどまらず、ライオンがどう人間とかかわって来たか、ピューマがなぜ街へ降りて人を襲うのか、など猫が属している種族について、広い視野での考察がとても興味深いのです。

猫たちの隠された生活
4794206828エリザベス・マーシャル トーマス Elizabeth Marshall Thomas 木村 博江

おすすめ平均
stars飼い主が呼んだとき、犬は飛んでくるが、猫は返事をする
stars猫ってどんな生き物なんだろう?
stars猫の話だけではないけれど…

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


同じ著者の、「犬」の本です。
ベストセラーになったので、ご存知の方も多いと思います。
これも面白かった。
飼い犬を、庭で野放しにしておいたら、どんな生活をおくるのか?
けっこうびっくりです。

犬は群れで生活する動物、と言うことは知っていても、それが実際どんなものなのか、なかなか想像がつかない。
厳しい掟や序列、権力争い。
群れ=社会と考えると、人間の生活にも考えが及んで興味深いし、思わぬ残酷さも垣間見えます。

犬たちの隠された生活
4794206364エリザベス・マーシャル トーマス Elizabeth Marshall Thomas 深町 真理子

おすすめ平均
stars不況下に生き残りをかける時こそ動物行動学系の本を読め!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:動物

2005年05月28日

「ソロモンの指環」 − 動物行動学入門

出逢えて良かった!
ふらりと立ち寄った書店で、ふと手に取ったのですが、よくぞこの本を選んだ!と、自分を褒めたい1冊です。
同時に、どうして今まで知らなかった!と激しく自分を責めたい・・・。

きっと、これは有名な本なんでしょうね。私が知らなかっただけで。
ノーベル賞とった人の本だもんね・・・。
この本はすっかり宝物です。
実際の話、中学生ぐらいでこの本を読んでいたら、人生が違っていたかも知れません。

ソロモンの指環―動物行動学入門
4150502226コンラート ローレンツ Konrad Lorenz 日高 敏隆

早川書房 1998-03
売り上げランキング : 4,651

おすすめ平均 star
starオススメ!
star人生を左右した1冊
star動物に興味の持てる本

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2005年05月26日

「フィンチの嘴」 − ガラパゴスで起きている種の変貌

これは興奮します!
進化って、長い長い時間を経て、少しずつ現れるものだと思ってました。
けれど、世代ごとにこんなに変わっているなんて・・・。
とにかく面白いので、一読をおすすめします。

ピュリッツァー賞受賞作で自然科学もの、というと固い文章を想像してしまうけれど、読みやすく、最後まで、わー♪と思いながら読めました。
本筋とは関係ありませんが、鳥を捕まえて計測していると、その仲間がやってきて手首にとまり、興味津々といった風情で覗き込んでいる、という場面があって、!!でした。

そう言えば、今の日本の高校生は、親の世代に比べると胴長なのだそうです。
「身長は最近10年ほぼ横ばいで、座高が伸びた分、身長に占める脚の長さの割合は、高1と高3男子で30年前を下回り“胴長”の傾向を示した」
(文部化学省の2004年度の学校保健統計調査(速報値)/ 産経新聞)

へー。脚長じゃない方へ進化したんですね。
原因は分からないそうですが、これも脚が長いことが不利に働く要素があった、ということなんですかね・・・?

フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌
4150502609ジョナサン ワイナー Jonathan Weiner 樋口 広芳 黒沢 令子

おすすめ平均
starsすなおに面白い
stars自然科学に興味のある人はぜひ一読を
starsすぐそばに進化を感じられる本です

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。