2010年03月23日

「獣の奏者」− (3)探求編・(4)完結編

続巻が出ていたとは知りませんでした。
この世界を知ってしまったからには、これは読まずにおれません。

確かに、その後エリンたちはどうしているんだろう?と気になっていたけれど、話としては2巻までで見事に完結していたのですよね。
そういう意味では、この後発の(3)と(4)は微妙な感じがあります。
まぁ、好みから行けば、断然前半2冊の方が好きだったかな。
それでもこの世界の住人としては、充分に楽しませていただきました。

母になったエリンと家族の愛、兵器として用いられる野生動物と、軍事的抑止力の在り方、また国の在り方など、テーマは深いところに突き刺さっています。
テーマの深さを思うと、続篇2巻で終わらせるより、もっと少しずつの発表でいいから、じっくり書き込んで欲しかった。

大人でも楽しめる内容だけど、これは括りで言えば児童文学なのですよね。だとすれば、子供たちが読んで考えるには、非常に有意義だろうなぁなどと思いました。
「国」と言うものは、なんだか捉えにくいように思うし、その国と国とが争う理由や争い方などを、客観的に視て考えるという経験ができるのは、非常に良いことではないかと。
自分自身を振り返ると、なんだかボーっと過ごしてたなぁと思わざるを得ませんが・・・。

獣の奏者 (3)探求編獣の奏者 (3)探求編

講談社 2009-08-11
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獣の奏者 (4)完結編獣の奏者 (4)完結編

講談社 2009-08-11
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タグ:上橋菜穂子

2009年02月10日

「ウルフ・サーガ」

狼たちの物語ですが、描かれているのは人と自然との関わり方でした。
この話には人間は出てきませんが、人間の営みが自然界へ与えた影響を、違う視点から見ているようで、背筋が寒くなりました。

自然界のバランスを、"掟"として登場させ、その"掟"にしたがって生きる狼たちと、"掟"を捨てて新しい世界を作ろうと、強大な力で他の狼たちを支配する、黒く巨大な1匹の狼。
多くの狼は力の前に平伏し、自然界の法則を無視した新しい世界へ否応なく引きずり込まれます。
けれど、力に屈服しながらも、もしかしたら、新しい世界は良い世界かも知れないという期待も、少し持っている。権力に媚を売るものもいる。流れに呑まれるものもいる。

均衡の崩れた世界で、狼たちが行き詰る姿は目を覆いたくなる情景です。
けれど、このお話は希望を持って終わります。
人がこれからどう自然と関わっていくのか、否応なしに考えさせられます。

純粋に動物を描いているわけではないのに、狼たちがとても魅力的でした。
安易に擬人化されているのではなく、狼らしく描かれていて、映像が浮かぶようでした。
一緒にじゃれあったり、眠ったりしたいと何度思ったことか。
著者はきっと、すごく狼が好きなのだと思います。
そうでなければ、単なる人間世界の投影として登場するに過ぎない、記号のような存在になってしまったのではないでしょうか。
この狼たちの魅力が、本書の大きな特徴であり力だと感じました。

ウルフ・サーガ〈上〉ウルフ・サーガ〈上〉
K¨athe Recheis 松沢 あさか

福音館書店 1997-12
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2009年02月08日

「ドラゴンライダー」

『ドラゴンライダー』です。「エラゴン」と「エルデスト」を読んで、完結してないと知った!
うーん、早く続きが読みたい。
続く「ブリジンガー」は、邦訳も英語版のペーパーバックもまだ出てないみたいですね。
ハードカバー買うのはためらわれるな〜。いえ、面白いんですが、重いし高いし・・・。

この本、著者が17歳とまだ若い上に処女作、というので、実は二の足を踏んでいました。
文芸賞っぽい作品なら、若者の感性が強みになるかも知れないけど、エンターテインメントで、ファンタジーで、となると、浅いんじゃないかとやや不安だったのです。

いやいや失礼しました。楽しく読書できました。
深い作品とはいえないかも知れませんが、逆に言えば、大人が子供向けに書いたものによくある、お説教臭さがない。そして、この長さなのに、だれることなくぐいぐい読ませる筆力は立派だと思います。そのあたりは、ハリー・ポッターを凌駕しているように感じました。

エルフやドワーフ、魔法使いなどお馴染みの種族が登場しますが、この世界の住人たちの解釈も、なかなか面白かった。
エルフは論理的で、ドワーフは信仰に重きをおく。このあたりは、科学と宗教の対立を思い出しますが、主人公のエラゴンはその中間に位置していて、自然の摂理の中で自分たちが生かされていることを感じ取っています。
魔法を使うことを通して、自然界に存在する動物や植物のエネルギーに接し、命を実感していく過程は、とてもうまく書かれていると思いました。

エラゴン―遺志を継ぐ者 (ドラゴンライダー 1)エラゴン―遺志を継ぐ者 (ドラゴンライダー 1)
大嶌 双恵

ヴィレッジブックス 2004-04
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エルデスト宿命の赤き翼 上 (1) (ドラゴンライダー 2)エルデスト宿命の赤き翼 上 (1) (ドラゴンライダー 2)
大嶌 双恵

ヴィレッジブックス 2005-11
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2009年01月30日

「ゲド戦記」

ファンタジー、なかなか面白い、とやっとこの年になって開眼です。
そこで、ル・グインの「ゲド戦記」、外伝も含めて、まとめて全巻読んでみました。

日本語タイトルの"戦記"に惑わされて、戦いが主に描かれているのかと思っていたら、そうではないのですね。
アースシー世界という場所を通して、人の成長や生と死、自然と文明、フェミニズム、人種差別などなど、大きな問題が語られているのですね〜。

こんな風に、物語の中にうまく取り込まれていたら、自分の内面から、世界の情勢、自然の原理まで、思わず知らず目を向けることになる。子ども時代に読んで、もしピンと来なかったり、暗いな〜と思ったとしても、きっと意識のどこかに残って、後々の思索の素になっていくのでしょうね。
「影との戦い」から、それぞれに語られている内容は、現実の世界への示唆に富んでいて、どきりとさせられる箇所がいくつもありました。

登場人物は、ヒーローではあっても、ヒーロー的な大活劇を演じるのではなく、弱さや慢心に翻弄されつつ旅をして、世界の原理や生きる姿勢を学んでゆく。戦って殺して、というありがちな展開を排除して、でも面白い物語が語られていて、すっかりアースシーの住人になってしまいました。

話そのものは、移り変わっていく感じですが、著者の思想が反映された結果なのだと思うと、それはそれで面白く感じました。
印象的だったのは、自然の捉え方や死生観に、東洋的なものが無理なく出てくるところです。
ゲドや竜たちのことも気になるけれど、著者がどんな人なのか、気になってきました。

影との戦い―ゲド戦記 1影との戦い―ゲド戦記 1
ルース・ロビンス Ursula K. Le Guin 清水 真砂子

岩波書店 2000
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2008年12月31日

「バッテリー」

玄人の評価が高いので、前から気になっていた「バッテリー」、読んでみました。
これは読んで良かった。
話が面白い云々というより、経験として、読んでよかったなと思えました。

少年たちの心理描写の濃さはすごい。
子供の頃に感じたいろんなこと、大人や社会の決まりごとに対しての反感、思っていることと、口から飛び出す言葉のギャップ、思わず知らず物事を突き詰めて考えてしまう、あの年齢独特の余裕の無さ、それに、ばかばかしいギャグで戯れる時間などなど、なんだか懐かしくもあった。

12歳から16歳ぐらいまでは、一種、特別な時間なんじゃないかと思います。
めちゃくちゃ楽しい反面、めちゃくちゃ苦しい。
これは二度と経験できない楽しさと苦しさで、どっちもきちんと経験しておかないと、後で困るよ、というような気がする。

本書の設定は、多少強引な感じがなくもないけど、それを差し引いても、おつりがくるかな。
著者は、今時流行りの、家族だの絆だのに対するウソっぽさに反応しているんだろうか?とも思いました。
家族も友だちも、もちろん大切だけど、何が何でも仲良くするために、自分を偽ってまで回りにあわせないといけないのか?
そこらへんの他者との距離感覚は、成長するとともに自分なりに身につけていくもので、それがまだうまくできない年齢では、苦しいことが多くて当たり前だと思います。

自己チュー天才少年を軸にして、野球という、スポーツの中でも日本では特にスポ根的なものを持ってきて、いじめや暴力、羨望、妬みもあって、でも野球が好きだという、純粋な感情もあって。
これだけ描けるって、やっぱりすごいんじゃないかと思いました。

バッテリー (角川文庫)バッテリー (角川文庫)
あさの あつこ

角川書店 2003-12
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2008年11月15日

「天と地の守り人」

はぁ、とうとう終わってしまった。
上橋菜穂子の守り人シリーズ、全巻読み終わりました。
もう続きがないのかと思うと、すごく淋しい。

全編、ほんとに面白かった。
この物語自体もすごく好きですが、他の作品でも感じたように、著者の感性のようなものが非常に好きなのだと思います。

チャグムの祖国である新ヨゴ皇国は、神の血筋である帝を奉るところから、やはり過日の日本を想像してしまうけれど、その奇妙さも神聖さも余すことなく描かれているように思いました。
強国タルシュはローマを彷彿とさせるし、各国入り乱れての戦は、戦国時代の小説を読んでいるような面白さ。それぞれに、大義や欲や思惑があり、そしてそのひとつひとつに人の営みがあり、そこへナユグという異界も絡んでくる、壮大な物語でした。
これが、最初はシリーズものになる予定で書かれたものではなかったなんて、ほんとにびっくりです。

表現方法には、音楽や絵など色々あるけれど、チャグムやバルサに著者が背負わせたものが、その心から滲み出すところを読むと、言葉で表現できることの強さを感じました。バルサの強さの秘密もまた、細かな配慮で描かれています。
映画やアニメになってもすごく面白いだろうし、こういった部分をセリフにするという手もあるけれど、でも限度があると思う。子供たちにはぜひ、彼らの心の声を直に読んで感じて欲しい、人の営みとその先にあるものを考えて欲しい、などと思わずにいられませんでした。

「天と地は、こうして、ただありつづけ、うごきつづける。きっと、天ノ神のご意思とは、そういうものなのだろう。」
終章に近いあたりで、チャグムがつぶやく言葉です。
この小説の、この大きさが良いです。

天と地の守り人〈第1部〉 (偕成社ワンダーランド)天と地の守り人〈第1部〉 (偕成社ワンダーランド)
上橋 菜穂子

偕成社 2006-11
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タグ:上橋菜穂子

2008年09月29日

「空色勾玉」

ファンタジー初心者なので、評判の良い本をと思い、手に取りました。
そうか、こういう物語だったのか。
こんなに恋愛の要素が強い話だとは思っていなかったので、ちょっとびっくりしました。児童文学と言うよりはロマンス小説のような感じで、思春期の子供、特に女の子が対象なのでは、と感じました。
もともと神話は、人間臭い神々の話という印象があるし、よいマッチングなのかも知れません。

印象的だったのは、キャラクター作りのうまさです。
お転婆で元気で無垢な主人公、美しい光の一族、人間味あふれる闇の一族。文章でかかれていても、まるで漫画を読んでいるようでした。そういった要素が、日本の神話を下敷きに、和歌など挿入されつつ書かれているわけですから、コアなファンができるのもわかる気がします。

神の子である光の一族は、不死であるがために、命を命とも思わない無邪気な残酷さをもって、死など不浄を象徴する闇の一族は、暖かく人情味をもって描かれています。逆転のようなこの描かれ方は、なかなか面白かった。
そしてこの光と闇が覇権を争う中、少年と少女は、使命や運命を背負いながらも、何よりも自分の大切な人にひと目会いたいと思い、行動するのですね。
まぁ、それは真理だよなぁと、なんだか妙に納得したのでした。

空色勾玉空色勾玉
荻原 規子

徳間書店 1996-07
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2008年09月27日

「月の森に、カミよ眠れ」

1991年に出された、上橋菜穂子の2作目です。
古代の日本がベースになっているようなので、読んでみたかった。

守り人シリーズや、獣の奏者などのように、物語がぐわわーと流れていく感じではないのですが、仕方ないからこそ寂寥感の残る、現実的な結末など、著者らしい感じがしました。
何より、古代の日本の暮らしが、中央集権国家に飲み込まれて、変らざるを得なくなっていく、そこらあたりの感じがとても面白かった。

大化の改新後、まだ稲作もやっていない、世間から取り残されたような山深い小さなムラへ、とうとう中央の力が及んでくる、という設定です。
自然と共存してきたけれども、既に山のカミは恐ろしいものと思われている、獣や木々と交わって豊かに暮らしていた日々からは遠く、一部の特殊な人にしか、カミの心を感じることはできない、そういうムラが舞台なのです。

自然や万物との"絆"である、巫女、月の森のカミ、そしてそのカミを封じようと中央から派遣されてきた、もう一人の"絆"の、オニ。
この3人の若者を軸に、話は展開します。
若者たちは、その成長とともに、自らの定めを意識していくけれども、人の社会から孤立する寂しさも味わう。人は群れていないと生きていけない運命だと仄めかされていると思うのですが、そうだからこそ、自然との共存はどんどん難しくなってゆくのですよね。

本書から5年後に、「精霊の守り人」が書かれていますけれど、この2冊は、話が違うからという意味ではなく、小説としてけっこうテイストが違うように思いました。
守り人の"ぐわわー"のノリで、日本の古代を舞台に書いたものが読んでみたい、とわがままな読者は思っております。

月の森に、カミよ眠れ (偕成社文庫)月の森に、カミよ眠れ (偕成社文庫)
上橋 菜穂子

偕成社 2000-10
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2008年09月17日

「狐笛のかなた」

「守り人」シリーズで人気の上橋菜穂子、初めて読んだのがこの本でした。
いや〜、面白かった!

人の心が聞こえてしまう少女と、呪者によって命を縛られ、穢れた仕事に使われるしか生きる術のない"霊孤"が、お互いのために命を懸ける、その悲しくて美しいさまには心を揺さぶられました。
戦国の世を思わせる背景に霊力が絡み、今の時代ではどうやってもピンと来ない「宿命」のようなものが主人公たちに重くのしかかります。
けなげな"野火"の描かれ方には脱帽です。細かい描写に、孤独で淋しい野火の痛ましさがよく出ていて、涙なしには読めませんでした。

著者の作品には、色々な立場の人が、その立場ゆえの選択や戦いに身を投じる様子がよく出てきますが、そこに悪意や憎しみはあまりなく、置かれた立場を全うすべく生きているだけなのだとわかるように描かれているのですよね。そこらあたりが、とても好きなのです。

実はファンタジーや子供向けの本は食わず嫌いしてました。
考えてみれば、子供向けの本は、相手が子供なだけに虚飾がなくて気持ち良い。質が高いと、ほんとに「良書」と呼べるものが並ぶわけですね。それに気付けてよかった。

狐笛のかなた (新潮文庫)
狐笛のかなた (新潮文庫)上橋 菜穂子

おすすめ平均
stars読み始めたらとまらない。
stars夢中で読みました
starsこれぞファンタジー!!
stars切ないラスト
stars剣と魔法のファンタジーの王道

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2005年03月25日

「Harry Potter and the Philosopher's Stone」

ハリー・ポッター、2巻までは翻訳で読みました。
面白かったけど、そこまでとは感じなかった。
でもやっぱり続きが気になる・・・、それならば、勉強もかねて原書を読んでみるかと。

そうすると、何故かすっかりハマってしまったんですよ。
3巻以降を英語にしたのですが、結局1巻目から読み直しました。
翻訳が違ったら、日本語でももっと面白かったんだろうか?
という疑問はさておき、ストーリーの面白い話を英語で読むのは、楽しい上に、英語に慣れるにはもってこいですね。
細部までちゃんとわかっているかどうかは置いといて、これは良い方法を見つけた(遅い!)と嬉しい限りです。

脳の活性化には、簡単な計算を繰り返すのが良いといいますが、語学にも似た部分があるんだと思います。
お気に入りは音読です。(←人前では恥ずかしくてできません)
HagridやFleurのセリフは、わざわざ苦労してなまった風に読んで面白がっています^^;。
しかし、"Expect patronum"は、映画の影響で耳に残っていますから、叫ばずにいるのに大変・・・。

Harry Potter and the Philosopher's Stone (UK) (Paper) (1)
Harry Potter and the Philosopher's Stone (UK) (Paper) (1)J. K. Rowling

おすすめ平均
starsUK版とUS版の違いなど。
stars感動
stars噂にたがわぬ痛快爽快なおとぎ話
starsさっと読み通せます。
stars意外と読めますよ

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