2009年08月14日

「山本五十六」

海外事情に明るく、米国との開戦にすごーく反対だった人、けれども、それでも戦わなければいけないのならと、真珠湾奇襲を企てて成功させた人、というのが、私の山本五十六に関して知っていることの全部でした。

本書には、そういう山本五十六が、人間として"どんな"人だったのかが描かれています。
軍神と奉られているけれども敵も多かった、博打が好きでまた上手かった、女性関係はこれこれこう、などなど、意外性も含めて、人間的な姿がとても興味深く面白かった。
巻末に記載されている、参考文献の量も大変なもので、著者はできるだけ、傾斜のないフラットな視点から山本五十六を描こうとしているように感じられました。

なぜそういう行動をとったのかという分析的な方向では無いからか、あれほど戦争に反対だった人の、開戦後の行動や思考については、心理的に掘り下げて書かれているわけではありません。
少し残念ではあるけれど、読む限り、もしかしたら、山本五十六は実はもう投げやりになっていて、死ぬことしか考えてなかったのかな、などと思いつつ読了しました。
それはそれとして、評伝としては、とても良く描かれていると思いました。海軍の、スノッブさ、軍人は政治に口出ししないなどの考え方、良くも悪くも伝統的に紳士的な部分、など非常に興味深かった。

直接山本五十六とは関係ありませんが、「手相・骨相」がこんなにも当たるのか?というのにはびっくりでした。
海軍の航空隊の訓練で、あまりにも事故が多く、兵士や高価な飛行機がどんどん犠牲になっていく。兵士がパイロットに適しているかどうかを見極めようと四苦八苦しているが、なんともうまく行かない。そんなところへ、手相・骨相を見る人を紹介されるのです。
そして8割以上の確率で、その人は兵士の成績を当ててしまう。のみならず、終戦がいつ頃だとか、南方戦線は今後どうなるかとか、ことごとく当ててしまう。この人が特別だったのかも知れないけれど、手相・骨相というものになんだか興味が湧いてきました。

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2007年09月22日

「たった一人の30年戦争」

終戦を信じず、30年もルバング島にひそんで生還した、小野田元少尉の自伝です。

最初にガツンと来たのは、「緊張感」でした。
本書のはじめの方で、小野田さんを"発見"した鈴木青年との遭遇シーンが語られています。
あっさりと書かれている事実のひとつひとつに、底知れない緊張感が感じられて、気付いたら涙が出ていました。
何かひとつ、服装であれ態度であれ、違っていたら、鈴木さんは殺されていた。
鈴木さんがソックスにサンダル履きだったことを神に祈りたいような気持ちです。

浮かび上がってくるのは、戦後30年を経た日本人と、"まだ戦争中である"小野田さんとの感覚の落差です。
終戦直後の虚脱状態や、昨日まで白だと言われたていたことが今日から黒に変るような、精神的な混乱、軍国主義アレルギーを内包しつつ、経済的な復興へ突っ走った日本があって、そんな国から来た青年と遭遇し、小野田さんは「正体を計りかねる」。

30年は長い。
切羽詰って前線は混乱し、玉砕を繰り返していた太平洋戦争当時の感覚、それが小野田さんが真実として知っている現実だったのだろうと思います。

そこをもとに、山中に潜んでいても感じられる時代の変化、時折手に入る少しの情報、などを分析し組み立てられた、米国の傀儡政権に牛耳られていると思われる祖国の状況。
何度も本書の中で語られる、敗戦を信じなかった理由は非常に興味深かった。

もうひとつ非常に面白かったのは、ジャングル生活の中で小野田さんが"発見"した"人間学"。
食べたものと体の調子の連関から、自分と3人の仲間を、草食系、肉食系に分類したり、牛肉をお腹一杯食べると、歩くと息がつまり頭がボーっとして木にも登れない、など興味がつきません。

小野田さんには、幸せな時間をなるべく多く過ごしていただきたいと、こころから思います。
そして、祖国のために命を懸け、散っていった人々が現代の日本を見たら、どう思うのだろうなと、ベタだけと考えずにおれません。

たった一人の30年戦争
たった一人の30年戦争小野田 寛郎

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stars与えられた仕事に命を
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stars自分に子供ができたら、、、
stars真の日本人小野田さん。

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2007年03月04日

「J.K.ローリング その魔法と真実」

ハリー・ポッターの生みの親、J.K.ローリングの評伝です。

ハリー・ポッターを読んだきっかけは、「子どもを持つ若い母親が書いた処女作が、世界中でベストセラー」というので、どんな本なんだ?、どんな女性なんだ?、と思い切り興味をかきたてられたからです。
だから本書には、ローリングその人と創作にかかわる面を期待したのですが・・・。

正直なところ、評伝としてはそう面白いとは思えなかった。
けれど、ローリングがどんな人で、どういう経緯で「ハリー・ポッター」が書かれたのかはよくわかりました。
興味深かったのは、第一作が出来てからのいきさつです。
綱渡り的な成り行きで、新人作家が本を書き上げてから出版に至るまでの道の険しさがわかります。

ハリポタ、一巻が発売されても、そんなに宣伝はされていなかったのですね。
けれど、米国での出版権をめぐるオークションで、とんでもない高値がつく・・・。
すると、処女作で大金を手にしたのはどんな女だ?、とマスコミが殺到する。
オークションで高値で買った側は、リスクを背負うことになるので必死で宣伝する・・・。
物事が転がり始めるときというのは、こういう風なんだろうなぁと、ため息がでる思いでした。

もともとJ.K.ローリングは、小説家になる夢を持っていて、子どもの頃からお話を作るのが得意だったと、本書を読んでわかりました。
ハリー・ポッターじゃなかったとしても、そこそこベストセラーを書いていたのではないかと思われました。

J.K.ローリングその魔法と真実―ハリー・ポッター誕生の光と影
J.K.ローリングその魔法と真実―ハリー・ポッター誕生の光と影ショーン スミス Sean Smith 鈴木 彩織

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stars便乗商売なのかな?
stars作者にスポットをあてた本

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2005年08月25日

「野中広務 差別と権力」

正直なことを言うと、政治なんてさっぱりです。
自分の国のことなのに関心がもてない自分を情けなく思いつつ、でも、この野中広務という人だけは、気になってしょうがなかった。

限りなく恐いけど、戦争反対を唱えている姿をみると、限りない優しさに溢れていて、いったいこの人はどんな人なんだろうと。

この本を書店で見つけたとき、帯にある、「権謀術数を駆使して政敵を叩き潰す恐ろしさと、弱者への限りなく優しい眼差し。本当の姿はどちらなのか?」という言葉を読んで、あ、みんなその謎が気になってたんだ、と初めてわかりました。

政治に興味がなくても、大正十四年生まれの、被差別部落出身者である野中さんの半生を知るだけでも、かなり興味深い内容です。
政治に対する姿勢そのものには、反対な人も多いだろうけれど、野中さんのように、底辺で辛酸をなめた経験のある、しかも辣腕な人が政治の世界にいて欲しいと、強く感じました。

政治家と言うと、「俺は政治家だから二枚舌も使う」と言い放った、ある映画の登場人物を思い出すのですが、きっとそれは本当のことだろうと思うのです。
しかし、二枚舌の裏には、正義や信念、誇りを隠していて欲しい。
と、切に思います。

野中広務 差別と権力
4062123444魚住 昭

おすすめ平均
stars一級品の取材力
stars特異な政治家の原点と現在
starsノンフィクション 久々の大作
stars人物名索引があればなおよし
stars一読の価値あり

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2005年07月22日

「マイケル・ジョーダン物語」

マイケル・ジョーダンって、彼を眺める世界中の一般人にとっては、もはや人じゃないのかも知れない。
スーパースターのおかれた境遇なんて、今まであまり思いを馳せたことはありませんでした。顔が売れてるから不便だろうなぁぐらいは思ったけど。

あまりにも有名すぎて、神格化さえされているスーパースターの、生の姿や声がこの本には詰まっていました。
もともとスポーツ記者ではなく、選挙や幼児虐待などを新聞のコラムに書いている著者は、ある種、ドラマティックな出会いからジョーダンと知り合い、その天才的なプレイと人柄にどうしようもなく惹かれていきます。
そして、ジョーダンと個人的に言葉を交わすようになります。
本書は、ブルズが初優勝をしたシーズンと翌シーズンを、ジョーダンとの会話、ジョーダンの行動とともにレポートしたものです。

ジョーダン人となりや、心の動きが書かれた本書は、よくあるスター物語とは一風違う味わいです。
どうして人々はこんなにもジョーダンを好きなのか、その理由の一端がわかるような気がしました。

マイケル・ジョーダン物語
4087602907ボブ グリーン Bob Greene 菊谷 匡祐

おすすめ平均
starsジョーダンとの交流
starsマイケル・ジョーダンさん

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タグ:スポーツ
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2005年06月19日

「毛沢東の私生活」

ダライ・ラマの自伝をUPしたら、この本を思い出しました。
これも、かなり衝撃的な内容です。
毛沢東の主治医を20年以上勤めた医師が書いた本ですが、よく書いたなぁと。
こんなの書いたら暗殺されるんじゃないの、と読みながらすごく心配でした。

著者は、本書発売の後、自宅の浴室で遺体で発見されていますが、そのことに関する詳しい情報はわかりません。
うがった見方をしてしまうのは、私だけじゃないと思うけど、暗殺という話もなさそうです。

毛沢東の生活そのものも、その下で働く人々の恐怖に震える日々も、農村でわけのわからない指示を受ける人々も、どれをとっても異常な世界でした。
めちゃくちゃだと思ったことのひとつに、「裏庭溶鉱炉」というのがあります。
溶鉱炉って、鉄を溶かすアレですよ。しかも裏庭って・・・。

中国を強くするために、鉄を生産しよう!とかいうスローガンに従って、農民が、各自の家の裏庭に溶鉱炉を作るのです。
そして、家にある鉄製品(ナベ・カマ)をほうり入れて溶かす。
鉄を溶かすには、火力が必要だけど、やってるうちに、燃やすものがなくなってくる。そこで、家の戸板を外して使ったりするのです。

そんなアホな・・・。
これは、何も生産してないどころか、やればやるほど貧窮する。
世の中がこんな状態なんて、もう誰も、本気で考えているのは「保身」しかないと言うことですよね。

そんなに昔のことじゃないだけに、恐ろしい。
この本、興味本位で読んでもかなり面白いです。
当時の、恐怖に裏打ちされた緊迫した日常、雰囲気を感じることができます。

毛沢東の私生活〈上〉
416730970X李 志綏 新庄 哲夫

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starsもうひとつの「現代中国史」の資料としてこんなに面白い本はない
stars単に毛沢東の私生活暴露というだけではなく、中国理解に有用。
stars面白いが、すべて事実か?
stars毛沢東の私生活
stars「族長の秋」もびっくりなノンフィクション

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タグ:中国
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2005年06月18日

「ダライ・ラマ自伝」

私は、ぼんやりと「チベットは中国の一部」と思っている程度で、何も知らなかった。
たまたま、そんな話を友達としたら、「だから、それが違うんだ!」と、この本を薦められました。

チベットは、中国の一部ではないどころか、その属国にすらなったことのない、独立した国家だったとわかりました。
そして、侵略された。
訳者のあとがきには、中国侵略者のチベット仏教・文化の破壊は、タリバン勢力による、バーミヤン仏蹟破壊の比ではない、と書かれています。

以下、あとがきから抜粋すると:
「チベット全土にあった、六千有余の仏教寺院は、ことごとく破壊され、辛うじて形の残っているものは、七、八寺に過ぎない。何百年もの間大切に守られてきた、仏像を始めとする寺院の貴金属類は、すべて中国本土に運び去られ、溶解された」

「六十万人いた尼僧、高僧、仏教実践者のうち拷問死者十一万人、還俗を強制された二十五万人以上」

また、チベットの首都ラサは、昔の面影を全く失っており、経済面から生活にいたるまで、完全に中国人の支配下におかれているのが現状だと言います。
学校での授業、テレビなどすべて中国語で、中国語が喋れなければ、ろくに仕事にもつけない。
子供達すら、お寺にお詣りしたり、昔から首にかけていたお守りも禁止され、麻薬、アルコール類は驚く程安く、どこでも手に入れることが出来る・・・。

どんな理由があれ、ひとつ民族の国家や文化が、こうまで破壊されて良いとは思えない。知らないことが、「罪」だと思える一冊でした。
チベットの歴史や現在の状況、ダライ・ラマ法王の講演のお知らせなどは、下記ホームページで詳しく紹介されています。

ダライ・ラマ法王日本代表部事務所

一度、聞きに行ってみたいと思っています。
どっかで逢ったことがあるおっちゃんみたい、とダライ・ラマ14世を見ると思ってしまうのですが、背負っているものの重さを考えると、あの明るい風貌は驚異的な気がします。

ダライ・ラマ自伝
4167651092ダライラマ The Dalai Lama of Tibet 山際 素男

おすすめ平均
stars中国による虐殺の真実
starsああっ猊下!!
stars宗教の本ではなく、ドキュメンタリーである
stars降りかかる問題をどう処理するか?そのヒントがココに!
starsぜひ知ってもらいたいと思います

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