2009年02月08日

「ドラゴンライダー」

『ドラゴンライダー』です。「エラゴン」と「エルデスト」を読んで、完結してないと知った!
うーん、早く続きが読みたい。
続く「ブリジンガー」は、邦訳も英語版のペーパーバックもまだ出てないみたいですね。
ハードカバー買うのはためらわれるな〜。いえ、面白いんですが、重いし高いし・・・。

この本、著者が17歳とまだ若い上に処女作、というので、実は二の足を踏んでいました。
文芸賞っぽい作品なら、若者の感性が強みになるかも知れないけど、エンターテインメントで、ファンタジーで、となると、浅いんじゃないかとやや不安だったのです。

いやいや失礼しました。楽しく読書できました。
深い作品とはいえないかも知れませんが、逆に言えば、大人が子供向けに書いたものによくある、お説教臭さがない。そして、この長さなのに、だれることなくぐいぐい読ませる筆力は立派だと思います。そのあたりは、ハリー・ポッターを凌駕しているように感じました。

エルフやドワーフ、魔法使いなどお馴染みの種族が登場しますが、この世界の住人たちの解釈も、なかなか面白かった。
エルフは論理的で、ドワーフは信仰に重きをおく。このあたりは、科学と宗教の対立を思い出しますが、主人公のエラゴンはその中間に位置していて、自然の摂理の中で自分たちが生かされていることを感じ取っています。
魔法を使うことを通して、自然界に存在する動物や植物のエネルギーに接し、命を実感していく過程は、とてもうまく書かれていると思いました。

エラゴン―遺志を継ぐ者 (ドラゴンライダー 1)エラゴン―遺志を継ぐ者 (ドラゴンライダー 1)
大嶌 双恵

ヴィレッジブックス 2004-04
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エルデスト宿命の赤き翼 上 (1) (ドラゴンライダー 2)エルデスト宿命の赤き翼 上 (1) (ドラゴンライダー 2)
大嶌 双恵

ヴィレッジブックス 2005-11
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2009年01月30日

「ゲド戦記」

ファンタジー、なかなか面白い、とやっとこの年になって開眼です。
そこで、ル・グインの「ゲド戦記」、外伝も含めて、まとめて全巻読んでみました。

日本語タイトルの"戦記"に惑わされて、戦いが主に描かれているのかと思っていたら、そうではないのですね。
アースシー世界という場所を通して、人の成長や生と死、自然と文明、フェミニズム、人種差別などなど、大きな問題が語られているのですね〜。

こんな風に、物語の中にうまく取り込まれていたら、自分の内面から、世界の情勢、自然の原理まで、思わず知らず目を向けることになる。子ども時代に読んで、もしピンと来なかったり、暗いな〜と思ったとしても、きっと意識のどこかに残って、後々の思索の素になっていくのでしょうね。
「影との戦い」から、それぞれに語られている内容は、現実の世界への示唆に富んでいて、どきりとさせられる箇所がいくつもありました。

登場人物は、ヒーローではあっても、ヒーロー的な大活劇を演じるのではなく、弱さや慢心に翻弄されつつ旅をして、世界の原理や生きる姿勢を学んでゆく。戦って殺して、というありがちな展開を排除して、でも面白い物語が語られていて、すっかりアースシーの住人になってしまいました。

話そのものは、移り変わっていく感じですが、著者の思想が反映された結果なのだと思うと、それはそれで面白く感じました。
印象的だったのは、自然の捉え方や死生観に、東洋的なものが無理なく出てくるところです。
ゲドや竜たちのことも気になるけれど、著者がどんな人なのか、気になってきました。

影との戦い―ゲド戦記 1影との戦い―ゲド戦記 1
ルース・ロビンス Ursula K. Le Guin 清水 真砂子

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2009年01月19日

「空へ」&「デス・ゾーン8848M」

1996年のエヴェレスト遭難を扱った本を、2冊続けて読みました。
自身も当事者であったノンフィクションライター、ジョン・クラカワー著の「空へ」と、クワカワーの著作の中で批判を浴びることになったロシア人ガイド、アナトリ・ブクレーエフの視点で綴られた「デス・ゾーン8848M」です。

最近では、誰でも登れるの?などと思ってしまいそうなエヴェレストですが、人の生きていける環境ではない高所が、どんなところなのかを初めて知りました。
人体への影響の過酷さにはびっくりです。そんなところでも、ガイドやシェルパに連れられれば、経験の浅い人でも登れるという商業登山にも、改めてびっくりです。

そして、そういう商業登山隊が遭難事故を起こしたのですね。
登山家であることと、登山のためのガイドであることは違うだろうし、商業登山を成功させるビジネスマンであることもまた、違う資質が必要だろうと思います。

育った国や育ち方が違えば、ものの考え方も違う。
登山ビジネスを成功させたいと願うなら、また違った視点も出てくる。
小さな食い違い、判断の違い、個人の思惑などなど、それらが渾然一体となって、悲惨な事故に繋がったのでしょうけれど、何ともやりきれない。

「空へ」の方は、この遭難事故の全貌を、なるべく詳らかにしようという著者の気持ちが伝わってきました。
登山を知っているライターが、たまたまこのような遭難の当事者になるというのも、恐ろしい偶然だと思いますが、プロであるだけに、情報の扱い方に対する真摯さや筆力を感じました。おかげで、登山そのものだけでなく、シェルパや商業登山の背景なども知ることができました。

一方、ブクレーエフとライターの共著である「デス・ゾーン」は、ブクレーエフの手記に近い印象です。とは言え、クラカワーの著作ではわからないことも出てくるし、一人の登山家の哲学や人となりが滲み出ていると感じました。
事故の翌年、インドネシア隊を連れてエヴェレストへ戻り、前年の犠牲者の遺品を回収したり、ささやかに埋葬するくだりは涙が出ました。

空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか (文春文庫)空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか (文春文庫)
Jon Krakauer 海津 正彦

文藝春秋 2000-12
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デス・ゾーン8848M―エヴェレスト大量遭難の真実デス・ゾーン8848M―エヴェレスト大量遭難の真実
Anatoli Boukreev G.Weston DeWalt 鈴木 主税

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2008年12月31日

「バッテリー」

玄人の評価が高いので、前から気になっていた「バッテリー」、読んでみました。
これは読んで良かった。
話が面白い云々というより、経験として、読んでよかったなと思えました。

少年たちの心理描写の濃さはすごい。
子供の頃に感じたいろんなこと、大人や社会の決まりごとに対しての反感、思っていることと、口から飛び出す言葉のギャップ、思わず知らず物事を突き詰めて考えてしまう、あの年齢独特の余裕の無さ、それに、ばかばかしいギャグで戯れる時間などなど、なんだか懐かしくもあった。

12歳から16歳ぐらいまでは、一種、特別な時間なんじゃないかと思います。
めちゃくちゃ楽しい反面、めちゃくちゃ苦しい。
これは二度と経験できない楽しさと苦しさで、どっちもきちんと経験しておかないと、後で困るよ、というような気がする。

本書の設定は、多少強引な感じがなくもないけど、それを差し引いても、おつりがくるかな。
著者は、今時流行りの、家族だの絆だのに対するウソっぽさに反応しているんだろうか?とも思いました。
家族も友だちも、もちろん大切だけど、何が何でも仲良くするために、自分を偽ってまで回りにあわせないといけないのか?
そこらへんの他者との距離感覚は、成長するとともに自分なりに身につけていくもので、それがまだうまくできない年齢では、苦しいことが多くて当たり前だと思います。

自己チュー天才少年を軸にして、野球という、スポーツの中でも日本では特にスポ根的なものを持ってきて、いじめや暴力、羨望、妬みもあって、でも野球が好きだという、純粋な感情もあって。
これだけ描けるって、やっぱりすごいんじゃないかと思いました。

バッテリー (角川文庫)バッテリー (角川文庫)
あさの あつこ

角川書店 2003-12
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2008年12月27日

「龍は眠る」

初めての宮部みゆき体験が本書でした。なんだか強烈に読みたくなって再読。
やっぱり面白かった。本書を読んで、だだだーっと宮部みゆきを読み漁ったのを思い出します。
ミステリ中毒も、このあたりから始まったんだった。

本書は超能力少年が描かれていますが、その能力と向き合う少年の戸惑いや葛藤をメインに据えて、絵空事ではない現実的な世界が展開されています。
超能力と聞いたら、私などはどうしてもワクワクしてしまう。でもそんな部分もちゃんと満たされる。超能力の扱い方にとても好感が持てます。

本書で気に入っているのは、言葉を発することができない女性と、人の心を読むことができる少年とを係わらせているところ。
意識ははっきりとあるのに、瞬きすらできない人たちのことを思うと、人の心が読めてしまうという能力の、明るい側面が見えてくるような気がしました。もちろん、実際にそういうことができたとしても、困難も多いでしょうが。
そういうことを考えさせられてしまうのです、この本を読むと。

龍は眠る (新潮文庫)龍は眠る (新潮文庫)
宮部 みゆき

新潮社 1995-01
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「乱れ華」− 知らぬが半兵衛手控帖

一度読んでみたかったのです。で、図書館で予約しようとすると、どの著作も予約待ち。唯一すぐ読めたのが本書でした。
著者は、テレビの人気時代劇の脚本をたくさん書いておられて、そのラインナップを見ると、へー!と声をあげてしまうほど。小説の方も固定ファンが多いのですね。

読んでみると、なるほど〜。
小説を読んでいるというより、まさにテレビの時代劇を見ているようでした。
テレビのドラマ枠の時間内で、落ち着ける濃さ、とでも言うのか。人物の設定や配置、書き込む量などに、著者の技術を感じてしまいました。
そういう意味では、"小説"が好きな人には物足りないかも。

けれど、人情物なのに、ベタついたところがないのは、さすがのさじ加減なのかなと。主人公の半兵衛も肩の力が抜けた雰囲気でかっこ良いです。
この世界が好きな人は、クセになるんだと思います。
個人的には、ハマるほどではなかったかな。とは言え、別シリーズの"秋山久蔵もちょっとだけ体験してみたいような気もしています。

乱れ華―知らぬが半兵衛手控帖 (双葉文庫)乱れ華―知らぬが半兵衛手控帖 (双葉文庫)
藤井 邦夫

双葉社 2007-05
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2008年12月23日

「チャイルド44」

あまりにも評判が良いので、手に取らずにおれませんでした(^^;)。
ソ連の連続殺人犯である、チカチーロの事件を下敷きにしてありますが、今までのミステリにはない感じです。

何より、レーニン体制下のソ連、という設定が勝因だと思います。ソ連の警察機構のあり方や、そこで働く人々の感覚、そんな閉塞した社会で身を潜めて生きている一般の人々。
恐ろしいです。殺人事件の怖さや謎よりも、この体制の怖さが滲み出ていて、読む手が止まりませんでした。

主人公は国家保安省のエリート。
"理想の国家であるソビエト連邦には、殺人事件など存在しない"という、卒倒しそうな信条のもと、良い官僚として生きている。
そんな、ある意味純粋培養だった彼が、現実を直視せざるを得なくなり、封印していた過去を思い出し、また美しい彼の妻が、彼と結婚した本当の理由を知り・・・、という風に、プロットも練りこまれていてよくできていると思いました。

そして、こんなに閉塞した世界を描いておきながら、意外なことに読後感が悪くないのです。最後には再生と希望がちらりと見えるからなのですが、個人的には、そこへ至る主人公の変化を書ききってあるあたりに、著者の力を感じました。
ミステリでなくても良かったんじゃないか、という気がします。

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)チャイルド44 上巻 (新潮文庫)
Tom Rob Smith 田口 俊樹

新潮社 2008-08-28
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「花と龍」

小説ではあるけれど、登場人物は実名で、著者の両親が主人公。著者も実名で登場し、実際に起こった出来事が書かれています。
北九州の炭鉱町を舞台にした、歴史小説と言った方が良いのかも知れません。

面白かったです!
とにかく、このご両親が非常に魅力的。
この二人に触れることができただけでも、読んだ価値があったと思えますが、各エピソードも活劇のような面白さで、あっという間に上下巻が終わってしまいました。

小さな村に生まれ、若松という荒くれた炭鉱町に流れ着き、知恵と度胸で見事に生き抜いた男と女の物語。なのですが、古い時代の日本の、ひとつの風景としても、とっても興味深いものがありました。
明治の頃、日本の小さな村はこんな風だったのか、とか、荒くれた炭鉱町はこんなだったのか、など、時代の空気のようなものが感じられて、それがまたとても面白かった。
ヤクザの成り立ちは、私にはよくわからないけれど、任侠の世界や、義侠心というものが、こんな風に生活の中にあったのかと。

歴史小説として、全体を眺めつつ時代を切り取ったり、前後の流れから読み取ったりするのも面白いけれど、本書の場合は、著者が主人公の息子であるためか、視線が地面に近いというか、肌で感じられるのです。
こんな人たちが両親だなんて、すごいなぁ。
こういう親に育てられたら・・・、芥川賞作家になるのか(笑)。

花と龍〈上〉 (岩波現代文庫)花と龍〈上〉 (岩波現代文庫)
火野 葦平

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2008年12月07日

「デルス・ウザーラ」

昨日NHK-BSでやってましたね。
黒澤監督が撮ったソ連映画で、アカデミー外国語映画賞を受賞。
1975年の作品ですが、これは今の時代にこそ観て面白い映画だと思います。

シベリア奥地を調査していた探検隊が、デルス・ウザーラという猟師と出会います。山や森を知り尽くし、まるで火や動物と話せるかのような彼に感じ入った隊長は、道案内を頼みます。
デルスの、厳しい自然の中で生きていく知恵や技術、そして、人や動物、自然そのものに対する温かさが非常に印象的でした。映像も美しく、幻想的なシーンもあって、描かれている自然の美しさも厳しさもいっそう引き立っています。

純粋にシンプルに生きて老いを迎えているデルスと、外国人による無意味な動物の殺戮や、せちがらい商人、徐々に開発が進む山。
現代から見ると、デルスのような人も一種の絶滅危惧種のような存在だったのだと、哀しい気持ちになりました。

舞台になっているのは、ウラジオストックから日本海沿いにハバロフスクあたりまでに広がる地域です。この作品の時代である1907年頃は、外国人が流入し、乱獲や開発が始まった頃のようです。
今では森林が分断され、アムールヒョウなどは20頭ぐらいしか残っていないんですよねぇ。

デルス・ウザーラ モスフィルム・アルティメット・エディション [DVD]デルス・ウザーラ モスフィルム・アルティメット・エディション [DVD]
ユーリー・サローミン, マキシム・ムンズク, シュメイクル・チョクモロフ, 黒澤明

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「人はなぜ治るのか?」

アンドルー・ワイル博士の名著です。
「癒す心 治る力」などは昔読んでいたのですが、本書は未読でした。
なんでもっと早く読まなかったんだ!
内容とは直接関係ないですが、わかりやすく、一気読みできるほどの文章力もすごい。著者が、健康や治癒について、長年深く深く考えてこられた、その重みも感じました。

現代の医療と、あらゆる代替療法 − ホメオパシーやカイロプラクティック、東洋医学、呪術や信仰etc、そしてプラシーボまで、それがどんなもので、どういう経緯で現在に至っているのか、治るメカニズムを考えることを通して、細かく書かれています。

本書を読むと、健康や病気に対する認識が変ります。生き物は、生きている限り治ろうとするのだと改めて感じました。心の働きの大きさにも驚きです。
なんで治ったのかわからない、という経験は、小さなことなら身近に転がっているものでしょうけれど、私も体験したことがあります。オリーブオイルで作った手づくり石けんをあげたら、イボが取れたり、湿疹が消えた人がいました。へぇ!なんて面白がっていたけれど、本書を読んで、それが起こりうることだったのだとわかりました。

代替療法は常に気になる方法だけれど、一般の人にとって問題なのは、どの療法を、またどの療法士を選べば良いのかわからない、ということじゃないかと思います。
カイロプラクティックひとつとっても、上手いのか下手なのか、もっと言えば本物かどうか、自分の抱えている問題に強いのか弱いのか、信頼できる情報が欲しい。
最近はインターネットがあるのでだいぶ良いけど、商用サイトや口コミでは、実際のところはわかりません。そういうの、今後変ってくることを期待したいです。

人はなぜ治るのか―現代医学と代替医学にみる治癒と健康のメカニズム人はなぜ治るのか―現代医学と代替医学にみる治癒と健康のメカニズム
アンドルー・ワイル

日本教文社 1993-11
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